新国家サクラ2
福岡空港内に点在しながら張り巡らされた緑色のテントからは人の生命のように飯盒炊飯から立ち上る細い煙が天に向かってのびていた。
「ともみはいったい何処にいるのですが。」
「わからない。組織と行動をともにしてないのは確かだ。それより村川君、俺もその孤島に行くとき連れていってくれないか。君と佐々木の知らない暗証番号を俺は知ってる。」
豊島は言った。
「本当ですか。いったい誰から聞いたのですか。」
俺は問い返した。
「うん。これみて。」
豊島は何枚ものよれよれになった紙の束を差し出した。
それは、吉祥寺駅の爆破事件の計画の詳細。多分死んだ中村の部屋にあった封筒の中身のようだ。
「これをどこで?」
俺は険しい目で豊島に問いた。
「総理の机のカギのかかった引き出しにあったのを持ち出したんだ。これを読んだ時に、総理はサクラの黒幕だ。と確信を得たんだ。その紙に暗証番号の手掛かりとなるような文章が書いてあった。多分亡くなった村川さんから中村へと暗証番号を教えた伝達方法の記述が。それは死んだ中村君個人の携帯電話の方にメールにて送信されたみたいだ。俺はそれを佐々木さんに伝え、彼は警察の権力を使い、メールの内容を調べてくれた。」
俺は豊島の話に食いつくように。
「佐々木さんはなんと?」
「うん。佐々木さんから聞いたのは、『kse1001cs near here』と。」
やはり、それか。俺は事件発生の伝達方法の当て字のような解釈をしていたが、中村の最後のメッーセージがサクラ自体の根幹を左右する財源を意味しているのなら、尚更頷ける。
俺は豊島の目をみながら無口で頷いた。
「ところで村川君、佐々木さんは?」
「佐々木さんはサクラの構成員に撃たれ重体です。今、米軍の人達に治療してもらっていますが、助かるかどうかの生死をさ迷ってる状態です。助かってほしい。助かってほしい。戻ってきてほしい。」
俺は神に祈る思いで豊島にいった。
豊島は目を閉じ、下を向いた。
そして数秒後、佐々木に詫びるような黙祷から重く閉じたまぶたが開き、サクラとの戦闘準備が整ったとばかりの険しい目で俺にいった。
「よし。カギも、暗証番号もこちらにある。米軍という後ろ楯も。日本列島奪回といこうじゃないか。」
時はすでにアキラがきた時から4日がたっていた。サクラのリーダー牧草と孤島会う約束が明日と迫っていた。