新国家サクラ
そこには疲れはてた顔の豊島が壁によりかかり座り込み、手入れをしていない無造作に伸びた髪、何日も放置した無精髭が以前の総理秘書をしていた豊島とは思えないほどの風貌になっていた。
豊島は焦点が定まらない瞳で俺をみていた。
きっと彼はここにきて、何日もこの状態でいたのだろう。
「豊島さん。わかりますか。村川です。」
俺は言った。
豊島は小さく口を開き覇気のない声で返事をした。
「やあ。村川君ひさしぶりだね。やっと来たか。」
「僕がここにくる事をしっていたのですか?」
「ああ。知ってた。佐々木から電話もらってたからね。君と佐々木のこと待っていたよ。」
そういえば福岡に向かう前夜佐々木は誰かしらと電話ではなしてたのを覚えている。あれが豊島と話してたとは、あの時は思う余地もなかった。
「村川君。電話では悪かったね。ああ言えって言わされてたんだ。自分の言葉じゃない。」
「大丈夫です。佐々木さんが俺の側にいてくれたお陰で、僕はここにいます。豊島さんも佐々木さんも命の恩人です。ところで豊島さんが俺達をここで待っていた目的とは。何ですか。」
豊島はたんたんと話始めた。
「あれは、いつ頃だろう。1人の男が総理に会いに来た時からだ。君が始めて総理に会いに来た数日後くらいかな。その男をみるやいなや、総理は部屋に招き入れ部屋の中で長時間話していたよ。俺は扉越しに話を聞いてしまった。それは日本を中国に売り飛ばす計画だ。男はサクラのリーダーの工藤ヒロシと密接な関係をもち、日中間の太いパイプを持っているようだった。男の名前は工藤アキラ。幼い頃工藤ヒロシが養子にむかえ、ともみとみゆきの兄ということになっている。当時、工藤ヒロシと夫婦中になっていた牧草総理も本当の息子以上にかわいがっていたはず。離婚してからはともみとみゆきは母親にアキラだけが父親と一緒になったらしい。その工藤アキラの生い立ちなんだけど、北朝鮮の脱国者らしく、父親が国の上官だったみたいなんだけど、やっていた仕事が、これがまた厄介で。それが核兵器開発のリーダーらしい。アキラの家族が北朝鮮から逃げ出すように脱国し、その際にその核兵器の製造方法の資料を持ち出したらしいんだ。その資料は死んだ工藤ヒロシの所有している孤島の地下にあるとの事だ。君がもってるカギを使う場所に。サクラが核兵器を所有することになると世界中大変なこになってしまう。その資料をわたしてはいけない。」
俺は豊島の話を聞き、日本が中国の分国に成り下がり、その過程においてサクラが核兵器を使用すると理解した。
「サクラの表沙汰の思想は堕落した日本経済再生し、新国家をつくること。もはや警察自体が過激派組織サクラの中枢、国の治安維持など皆無に等しい。今や対米国に武装化状態。これからたくさんの日本人が死ぬよ。日本の壊滅も時間の問題。サクラのやってることは日本再生じゃなく破壊だから。」
俺は豊島の話を黙って聞いていた。
「あと、もう1つ。牧草ともみなんだけど、今姿を消している。」