闘いの準備3
赤く染まった空は薄黒い煙に被われ息を吸うのも苦しく感じた。
福岡空港の一直線に伸びる滑走路は、黒いタイヤの跡が残ってり、戦闘機が凄いスピードで離陸する勇ましさが想像できた。
米軍達は防災班と対外の攻撃を迎え撃つ武装班とに別れて行動しているようだ。
サクラの二機の戦闘機は米軍の応戦もむなしく、四国に舞い戻ったとのことだ。
俺とモーセレ柿沼はサムモーセレに話を聞いていた。
「大変なことになりました。アメリカ本土は四国に向けて戦闘体制を敷き、いつミサイルが発射されるかわかりません。とにかくアメリカ本土の指示は一旦九州から撤退し沖縄の基地を拠点にするとの事。本格的な闘いがこれから始まりそうです。」
サムモーセレは言った。
煙に巻かれた視界はサムの表情がみえにくく、福岡空港に一機のヘリコプターが降り立った事など尚更知るよしもなかった。
俺と柿沼とサム、三人で滑走路の片隅で立ち話をする中、視界を遮る煙の中から一人の男が現れた。
俺達が男の顔をわかった瞬間、固まった。
アキラだった。
そこには、サクラの幹部の工藤アキラが立っていた。
柿沼はとっさに銃をアキラに向け構えた。
ネクタイをしめ普通のサラリーマンのような風貌のアキラは、銃を構えた柿沼をみながら手をあげながら話した。
「こんにちは。いや、はじめましてかな。ちょっとサムモーセレさんと話があってきたんですが。 あなたがアメリカでも強い影響力を持っているようなので、私の話に国自体で前向きに検討してくれると思いまして。」
アキラは言った。
俺達は三人とも、今にも飛びかかりそうな状態を我慢し、向かい合っていた。柿沼はアキラに向けた銃をおろそうとせず、引き金にかかっている指に体中の力を集中していた。
「我々にここまでしておいて、どんなご用件でしょうか?」
サムモーセレがいった。
「我々の要求は、ここ九州からのアメリカ軍撤退。そして、ここと四国をサクラ国の支配下におきます。日本再生を考えてほしくない。新しい国家をつくるのです。あなたがたは母国に帰って平和に暮らしてください。さもないと、また犠牲者が増えます。」
九州撤退は本土からの命令が出ていたものの、さっきの空襲で何人もの米軍が死んだことを思うとアキラの言うことに首を縦に触れなかった。
「我々は何人もの母国の人間が死んだ。そちらも、それ相当の犠牲を払ってもらわないと納得できない。日本に粘着しているテロリスト達と闘うことが我々の使命だ。」
サムはアキラを睨みながら言った。
アキラは微笑を浮かべ、そのサムの言葉を予想していたように話した。
「そうですよね。わかりました。黙ってはないでしょうね。こちらとしては前に進むだけです。私達の道を遮るものがあれば、潰すだけです。」
「宣戦布告ということですね。」
「そうとってもらって構いません。あっ。そうだ村川君。牧草総理が孤島で会う約束、一ヶ月後じゃなくて5日後に変更といってた。よろしくね。孤島の場所は、もうそちらさんでわかってるんでしょ。今日から5日後の24時間以内にカギを持ってきてね。来なかったら、アメリカの主要都市に無差別テロが起きる。今の日本のようになるよ。」
アキラは言うことは言ったとばかりに、銃を構えてる柿沼を無視するように俺達から背中を向け、霧のような煙の中に消えていった。