秘密3
私達はファミリーレストランの窓際の席に座り、男の顔をみていた。
男は子供を扱うような笑顔で私達に向き合いながら話した。
「何か食べたいものある?」
「いいえ。大丈夫です。」
私より先に柿沼は口を開いた。
「私はともみちゃんのお父さんが学生の頃からの友人で、今も時々お父さんと会ってる。君のお父さんには若い頃から世話になってるから遠慮はしてほしくないなぁ。それとは違うかな。初対面の私という人間の警戒心からのが大きいかな。まぁ。そんなこといいから、コーヒーくらい飲んでよ。」
私と柿沼は黙っていた。
「柿沼舞子さん。私はね。お父さんに頼まれてここにいるのもあるんだよ。」
「お父さんに?」
黙っていた柿沼は父のことに触れられ反応した。
「君のお父さんはアメリカのロサンゼルスに住んでいて、アメリカを守る兵隊さんをしてる。君のお母さんと離婚してから君のことを毎日忘れたことはない。名前はもちろん知っていると思うけど。サム・モーセレ。お父さんがね。またどうしても舞子ちゃんと住みたいって言ってる。」
「本当ですか?」
「本当だよ。事情を説明したら、すぐ日本にくるっていってた。大丈夫。お母さんの亡骸は舞子ちゃんと私達で手厚く葬ろう。それで駄目かい?」
「でも。お母さんまだ家にいるし。お母さん目を覚ましたら一緒に海に行こうって言われたの。お母さんに。」
村川は大きな息をはきながら。
「お母さんはもう目が覚めない。死んでいるんだ。あのままだったらお母さんがかわいそうだ。一緒に海のみえる場所に埋めてあげるのがお母さんの願いなんじゃないかな。」
舞子は母親が死んでるのはわかっていた。それを受け入れようとしなかっただけで。彼女はそれを第三者の大人に言われ、現実的になったのかもしれない。
彼女は泣きわめいた。
「お母さんね。体も綺麗にして、海に囲まれた孤島で一緒に埋葬しよう。大丈夫。何も不安はないよ。」
舞子は泣きながら答えた。
「はい。」
「もう私の仲間がね。お母さん綺麗にして天国いける準備をしてる。明日舟で海で囲まれた孤島に埋葬してあげよう。舞子ちゃん。ともみちゃんもいってくれるね。」
ともみは首を縦にふった。
そして彼女の家についた頃は、すでに母親の死体はなく、テーブルの上には、折られた桜が花瓶にさしてあった。