秘密 2
その夜、私は父親の工藤ヒロシにこの事を電話で話した。工藤は静かに娘の話を聞いていた。
「わかった。私がなんとかするよ。まずその娘のことを私はなにも知らない。その娘の身の上のことを調べた上でその娘に適した対応をしよう。警察も、学校も、なにも心配いらないよ。私がすべて引き受けた。みゆきはこの事は黙っていなさい。その娘は深く傷ついていると思うがその娘にも、この事は黙ってるように話してくれないか。」
ともみは父親の話を素直に受けいれた。
「うん。わかった。」
「よし。いい娘だ。近日中に私の組織の者がみゆきの前に現れる。その娘の部屋に案内してくれ。大丈夫だから安心しなさい。」
次の日、柿沼はいつものようにマンションの入口で私のことを待っていた。
「お母さんの件だけど、安心して。なんとかするから。」
彼女は首を縦にふり、口を強く結びながら、自分の気持ちを押し潰しているようだった。
その日はたんたんと時間が流れ、私は教室の端に位置する彼女の席のほうをみていた。若さに溢れた教室の活気に反して彼女の席だけが何か違っていた。完成したパズルの絵の中でワンピースだけ抜け落ちてるような。
彼女は私と目が合うと必ずといっていいほど笑顔で微笑む。
私は退屈な日常の中で時間の流れがはやいのはこの子の影響だと。この子の笑顔が私に魔法をかけたに違いない。死んだ母親と一緒に暮らし、普通に学校に来、普通に私に笑顔をふりまく。姉のみゆきを殺した私も、普通に変わらない日常を送っている。同じ種族。私が探してるのは彼女なのかもしれない。
いや、違う。
彼女は母親の死を心から悲しんでいるが、私はみゆきの死を私が生きる上での自然の摂理であり、成長の段階の過程としか思っていない。彼女とは根底のものが違う。
私は彼女の笑顔で時間を忘れるくらい癒され、彼女の悲しむ顔で守ってあげたいという感情になった。
彼女の内面は私のような汚れた色ではなく、純粋な透き通るような色に感じた。
その日の帰宅時のことだ。父親の使いのものが私達のもとに現れたのは。
その人は校門のところに一人で立っていた。
「今晩は。みゆきちゃん?私、村川といいます。お父さんと昔からの友人でして。事情は聞きました。その事ですこしお話したいんですが?」
中年の男は私達をみていった。
男は柿沼のほうに目線を写し。
「柿沼さんですね。怪しいものじゃありません。私はあなた方の味方です。今あなたが抱えているものを少し私にわけていただきたいと思いまして。」
柿沼は私の顔をのぞきこみ、私の話すのを待っていた。
私は父親の名前がでた時点で信用なる人物と察知し、柿沼のほうをみて頷いた。
「柿沼さん。この人は私達の仲間。あなたの為に最善な方法を選んでくれると思うわ。ちょっとこの人の話きいてくれる?」
そうはいっても柿沼は初対面の中年の男を、よそよそしく振る舞い何も話そうとはしなかった。
私は彼女のほうをみて話した。
「舞子。大丈夫だから。私を信じて。」
私は彼女の手を引き、男とともに近くのファミレスに入った。