出口のない旅2
その日俺は泥のように眠った。
横にいた佐々木もまた寝ていたようだが、途中佐々木が誰かと電話で話す声が聞こえてきた。俺はそれにも気にせず眠りについていた。
時間は刻々とすぎ、昨日の夜から12時間以上寝ていた。
「村川さん。そろそろでかけましょう。」
佐々木の声で俺は寝床から起き上がった。寝ぼけた脳は鈍く、脱力感が体全体を覆っていた。
「国の交通機関は止まっているようなのですが、東京から福岡へ本数は少ないのですが夜行バスがあるようなので、それでいきましょう。」
俺は無言で用意を整え、脱力感の体を強引に奮い立たせ、佐々木に引っ張られるように家をでた。
夜行バスは、石油の蓄えが少なくなった日本にとっては数少ない交通機関の一つになっていた。
狭いバスは中国人とアメリカ人でいっぱいになり、福岡直行というよりも、途中下車する定期的なバスと兼用になっていた。
乗車し数時間後の車中は途中下車した人が多くガラガラになり、俺と佐々木は座り心地の悪い椅子にありつけた。立って目的地に着くのを待つ人もいなくなり、俺達以外は椅子に座った中国人が六人だけとなった。
道路に面して街灯が等間隔に並び、その点滅する明りが窓から差し込み同乗している中国人の顔をてらしだし。夜空に浮かぶ月は俺を落ち着かせ遠い記憶を甦らせてくれる。
『中村が知っていた暗証番号とは?中村が自分の部屋で生き絶えていたとき、机の封筒の中には何があったのだろう?それは青森の秘密基地で中山実の手の中にあった鍵とその関係書類ではないだろうか。中村の紙に書かれたメッセージは吉祥寺駅の爆発の計画を伝える組織内の伝達文ではなく、鍵のありかと暗証番号ではないだろうか?俺は推測に推測を重ね可能性のたかい事実を導く為に考えた。確かそのメッセージとは?そうだ。』
俺は頭の中で限りなく透明な糸をたどり、事の始まりを思い出した。
『kse1001cs near hereだ。』
はじめは、
k 吉祥寺
s ステーション(駅)
e explosion(爆発)
10 10時
01 1番線
c convenience
s store
といった爆発の計画の伝達文だと思っていた。頭のKがキーという意味なら鍵の隠し場所ともとれる。
k key
s 不明
e 不明
1001 暗証番号
と考えると中村だけが知っていた暗証番号は確信はないが1001という可能性もある。
俺は佐々木に推測上のことを言おうと、佐々木のほうを見た。佐々木の表情は固まり、目だけが俺の方をみ、後ろを見ろとアイコンタクトした。
そこには俺達に向かって銃をかまえる中国人の二人組が立っていた。
俺は咄嗟のことで頭を下げ、縮こまった。
「動かないで。村川と佐々木だね。」
中国人の二人組の男はなれない日本語でいった。
「あなた達殺すと私、お金貰えるんです。」
詰め将棋の王将を追い詰めたとばかりの不気味な笑みを浮かべ話した。
残りの中国人も仲間らしく、ドライバーとなにやら話してるようだった。
完全にバスはジャックされた。