出口のない旅
俺は牧草総理のところからの帰りの車中で聞いた。
「佐々木さん暗証番号って? 俺は暗証番号のことは牧草さんの口から始めて聞きましたけど。知っているのですか?」
「それが私も全くわからないのですが。確か牧草総理は私の息子の中村があなたのお父さんから教えてもらってると言っていましたね。その件について、中村から聞いてますか?村川さん。」
「いいえ。なにも聞いてません。中村がサクラの人間だとわかったのも、中村が亡くなった後なもので。」
「そうですか。お恥ずかしい話なのですが、私も毎日仕事に追われ息子とはあまり深い話をしなかったもので。むしろ息子には憎まれていたように感じます。 でも私は息子を愛していました。私から息子を奪ったサクラはどうしても許せない。何がなんでもサクラを滅ぼしたい。息子のためにも。」
「佐々木さんの気持ちはわかります。俺もサクラに俺の人生をメチャクチャにされました。でもサクラを滅ぼすということは、今になっては日本を滅ぼすといっていいくらい過言ではありません。サクラという組織は巨大になり、日本の影の根本的な存在になってるような気がするのですが。俺達のような無力なものが太刀打ちできるのでしょうか?」
「そうです。そこで私達は明日、九州にいきましょう。事の真相を米国にぶちまけるのです。」
「でも佐々木さん。真相をぶちまけたところで信じてもらえますか?アメリカ人を監禁した事実だけで、それが国ぐるみで国家が加担しいるという証拠がないです。しょせん俺達は無力なんですよ。」
佐々木は俺に携帯電話をみせた。
「今の携帯電話は、日本中でところどころで爆発が起こってるせいであまり電波が弱く通話は弱いですが、録音昨日がついてるんですよ。村川さん。」
俺は携帯の録音機能など今俺達が抱えてる問題となんの因果関係があるのかとはらただしく思い無視した。
数秒口を閉ざした俺ははっと気づいた。
「もしや佐々木さん。さっきの牧草総理の会話をまさか録音していたのですか?」
「その通りです。」
佐々木は笑いながら、驚き口を半開きになった俺の顔をみていた。
「さあ。着きましたよ。明日は九州にいきますよ。しばらくここには帰れなくなると思いますので。私もじつをいうとね。今月いっぱいで警察を辞めることにしたんです。今月もあと二日でおわります。一緒にいくとこまでいきましょう。」
俺達は車から降り、暗闇の中にみえる秩父山々が出口のない樹海に感じた。そこにこれから些細な武器を片手に入り込み地図も手がかりもない未知の場所で同胞という宝を探す旅にでる錯覚になった。