取引
牧草総理は険しい顔をしていた。
「久しぶりね。村川君。隣にいるのは佐々木さんね。はじめまして。あなた方が私に会いに来ると思ってました。」
牧草総理は言った。
「あなたがサクラの支配者なのですか?」
俺は言った。
「そうだとしたら。」
「目的は何ですか?」
「新しい国家の設立です。」
牧草総理は身動き一つせず淡々と話した。
「でもね。新しい国家をつくるには、あなた方が持っている鍵が必要なの。それと暗証番号。暗証番号は佐々木さんの息子さんが亡くなった村川くんのお父さんから聞いてたはず。知ってるでしょ?」
俺達は鍵は持ってるものの、暗証番号までは知るよしもなかった。
佐々木は俺のほうをちらりと見、話した。
「はい。私達は鍵も持ってますし暗証番号も知っています。この鍵をつかう場所もだいたい見当ついてます。それは、あなたとサクラという組織をつくった工藤ヒロシの武器製造工場がある孤島。その中の地下二階にある部屋の鍵 。中には多分、日本円で約1兆円と武器・弾薬の製造の工程の書類、そしてそれらを売買する人の名簿があると思うのですが。」
「そこまで知っていてあなた方は何が望みですか。」
「今望むことは、ここにいる村川さんの指名手配の解除と、この鍵を使うとき私達も立ち会わせてほしいということ。どうでしょう?」
「なにたくらんでるの?」
「私達は牧草さんにとって危険人物であるかのように、あなた方の組織は過激派組織としか思えません。その相反する物同士、腹の探りあいするのはバカバカしくありませんか?それにあなた方としては、どんなリスクがあっても工藤ヒロシの残した財産がほしいはず。」
「わかりました。いいでしょう。」
「村川さんの指名手配解除は誤認とすぐに、あらゆる媒体を使って報じてください。孤島に出向く日時は一ヶ月後。こちらは村川さんと私ともう一人でいきます。そちらも三人と限定してお願いします。あなた方の莫大な資金調達を考えればお安いご用かと思うのですが。」
牧草総理は険しい目で佐々木を睨んだ。
佐々木は怯えることなく一言付け加えた。
「新日本国設立の資金のために。」
牧草総理は鬼の表情から一変し不気味な笑みを浮かべ答えた。
「わかりました。のみましょう。」