終演の幕開け4
俺と佐々木は永田町に向かった。助手席からの窓からは爆発した建物の痕跡が痛々しく残り、無人の建物がつらなっていた。ところどころで中国の国旗が風にふかれ、夕陽が無人の建物の寂しさを際立たせ、俺の目に染みた。
総理公邸が車のフロントガラスに写った時は夜になっていた。公邸前の駐在所の明りがやけに目につき、入邸する車を誘導する。
「佐々木警部補ですね。お疲れ様です。こんなところで何かご用ですか。」
「ちょっと総理とお会いしたくてね。」
「隣の方は?」
佐々木は一呼吸置いてから答えた。
「村川さん。指名手配されてる村川ヒロシ。」
警察官はじっと俺の顔をみた。
佐々木は俺の方をみて安堵の表情を浮かべながら警官に話を続けた。
「とにかく総理に連絡してくれよ。もし駄目なら彼連れて出頭するから。」
警官は上司の申し出に、困惑してるようだった。
「ちょっと待ってください。」
警官は駐在所に戻り、どこかに電話をかけてるようだった。
俺は不安で心臓が破裂寸前の状態だった。佐々木はそれを察知し気を使ったように俺に耳元でいった。
「大丈夫ですよ。」
それから数分後、警官は電話を置き、こちらに歩いてきた。
「どうぞ。」
警官は車を誘導するように中に招き入れ、所定の駐車場に案内された。高官を接客するもてなしのように。
車を降りると同時に、見知らぬスーツ姿の男がたっていた。
「村川様に佐々木様ですね。こちらに。」
男は俺達を入口に案内し、建物の中に招き入れた。そして男は俺達を大きな部屋に通した。
広々とした部屋の中は空調もよく歴史ある寺のような静寂につつまれていた。存在感のある大きな机が正面にあり、その前には客用のソファーがテーブルを囲うように配置されていた。
その机には俺と佐々木を鋭い眼光でみる女性が座っていた。
それは紛れもなく以前会った事のある人物。
忘れもしない牧草総理だった。




