終演の幕開け3
佐々木は自由への扉を両手でおもいっきり開き、仁王立ちしながらまわりを見回していた。
疲れはてたアメリカ人達は無音の中で響き渡るドアの開閉の音で一斉に扉のほうを振り返った。
状況の把握できてなかった人達は開けられたドアがどのような意味があるのかわからない人が多く振り向くだけで、立ち上がるものは誰一人おらず、ただただ重い空気が漂っているだけだった。
佐々木はその空気を打ち破るような大声で叫んだ。
「Get out 」
佐々木の声は部屋中響き渡り、何人かのアメリカ人は立ち上がった。
その声に便乗されるようにモーセレ柿沼が叫んだ。
「急いで。ここにいると殺される。早く逃げて。」
同胞の声は仲間を奮い立たせアメリカ人達は一斉に立ち上がり、小走りでドアの外になだれ込むように動いた。
それを誘導するように佐々木が先導し、モーセレ柿沼が仲間達に的確な指示をだした。
一斉に規則正しい配列になり、移動し始めた。
俺は人込みをかき分け佐々木に近寄った。
佐々木は俺を視界に入ったとばかりに大きく目を見開き手を挙げた。
「村川さん。無事ですか?」
俺は佐々木に近寄り答えた。
「はい。なんとか生きてます。佐々木さんにはなんと言っていいのかわからないほど感謝してます。」
「いいましたよね。私はあなたの味方です。そんなことより外の男達がいない隙にはやく。外に大型トラック二台とまってます。その荷台の中に早く。」
佐々木は建物の外に駐車している。トラックの荷台にアメリカ人達を誘導した。
「ありがとう。あなたと村川は真実を知っているようですね。是非とも私の上官にその真実を打ち明けてほしい。私も私の国も少なからず、あなた方の味方になれるかもしれません。」
佐々木の前にモーセレ柿沼が立ち止まり話した。
「とりかくあなた方を九州に戻します。また日本国の人が米国の人を監禁したと表沙汰になると国同士が緊迫した状況になってしまいます。ここは事実がはっきりするまで穏便にお願いしたいのですが?」
「わかりました。といいたいのですが、これほどの人が幽閉されたことは隠せおおせるものではありません。あなた方の知っている真実以上にこの原因の追及を、私と私の上官に後日、あなた方のトップとこれについての納得いく説明を私達に話す機会をつくっていただきたい。もし国事態の犯行ならその機会をつくってくれなくて結構です。あなた方の知ってる真実を教えてください。日本国の内情を。その時は叱るべき場所で私もこの事を話し叱るべき対応になる可能性が高くなるでしょう。それではあなた方の答えをおまちしております。」
モーセレ柿沼は佐々木と俺に話しトラックの荷台に飛び乗った。
佐々木は俺のほうをみながら、
「村川さん。やはりあなたはトラックの荷台ではなく、私の車にのり、牧草総理と豊島に会うべきです。彼等は敵か味方か正直わからない。危険もある。 しかし真実を知るにはそれが一番よいのではないかと。 もちろん私もあなたに付き添います。」
俺は親父にもらった時計の針をみていた。古い腕時計は弱々しく秒針が未来にむかい刻んでく。
俺も前に進むしかない。
顔をあげた俺は佐々木に答えた。
「はい。いきましょう。」