仮面2
遠くに見える山は緑があふれ、太陽の光をさえぎり、隠れ家としては最適な場所だった。
昨晩一睡もできなかった俺は豊島との待ち合わせ場所にいた。
佐々木は言っていた。
「私はあなたのことを守ります。申し訳ないのですがあなたを尾行させていただきます。同僚の阿久津のことも気になるので。これは罠です。」
今までの数回に及ぶ豊島の行動から俺は罠とは思えなかった。でももし佐々木が俺を陥れようとしているなら、俺の居場所を警察に知らせるか、丸腰の俺を隙をみて殺すだろうとするだろう。それをかくまり情報を流してくれる。敵とはどうしても思えない。混乱した。
俺は落ち着き今の自分の置かれている立場を考え佐々木に答えた。
「僕はサクラの全てを知ってるようで肝心なところを知らないような気がします。僕は真実をしりたい。日本の破滅が進む今、この山をでて光の下で破滅を阻止したい。」
「まわりは敵だらけですよ。見知らね人でもあなたのことを悪人と思い警察に連絡するでしょう。」
「それでもいいです。豊島さんが善か悪かわかりませんが、豊島さんにのっていきます。」
「わかりました。一つだけ信じてください。私はあなたの味方です。それだけ覚えておいてください。」
俺は豊島との約束通り迎えの車を待っていた。
待てば待つほど1分が非常に長く感じた。遠くに見える山のように時間が止まったようだった。遠くから一台の軽トラックが俺のほうにむかってきた。軽トラは鈍いエンジン音をだしながら俺の横を通りすぎ10メートル先で止まった。
荷台には複数の男達がのって降り、こちらを伺うように一挙一雄していた。男達は自衛隊のような服を着、片手には銃を持ち、戦場に行く兵士のようにみえた。
止まったと同時に運転席のドアが開いた。
背の高い長身の男が身を屈めながら軽トラックの運転席から降り立ち、俺に歩み寄ってきた。
「村川君?」
俺は首をたてにふり答えた。
「あなたが阿久津さんですか?」
俺が答えたと同時に荷台に乗っていた男達が一斉に車から飛び下り駆け足で俺を取り囲みながら一斉に銃を突きつけた。
『騙された。』
俺は突き立てられた銃の恐ろしさよりも豊島に裏切られたということのショックの大きさで体が動かず直立不動になっていた。男達は俺の腕を強引に後ろに持っていき手錠をかけられた。それでも俺にむけられた銃は下ろされず、その男達をどかすように、身動きがとれない俺の前に阿久津が立ちはばかった。
「村川ヒロシ。逮捕する。」
俺だけに聞こえるような小声でそっけなく言葉を発した。
阿久津は身動きがとれない俺を引きずるよう振り回し、軽トラックの荷台にほおりなげた。俺は荷台から飛び下り逃げようとしたが、何人もの男に取り押さえられ、固いなにかで後ろから殴られた。それが複数続いた。俺はこのまま殴り殺されるのかと感じた。意識が遠のき、目の前が暗闇に支配されていった。耳からはかすかに男達の声が聞こえてきた。
「ここまですれば逃げないだろう。」
「とにかく、連れていこう。」
誰と誰が話しているのか全くわからず、その声も遠のきつつ、俺の意識は暗闇に沈んでいった。