謎の鍵4
雨が完全にあがり、流れる雲の隙間から月が表れる。地面の水溜まりの中の月は、先をいそぐ我々の一歩一歩で踏みにじられ形が歪む。
佐々木の根回しで俺達の横を何台ものパトカーが横切った。
家の周りには数人の警官が見回りをし、俺達に懐中電灯の光を向ける。
「何か変わったことあった?」
佐々木が二人組の警官にいった。
「特別変わったところはありません。」
警官は佐々木に答えた。
俺は家のチャイムを押した。数秒後母親が玄関先にでてきた。
「ヒロシ。こんな遅くどうしたの?ともみさんから何度も電話あったから、心配してたよ。何かあったのかい?」
「何にもないよ。それよりさあ、結婚前に持ってきた荷物どこ?」
「お前の部屋に置いてあるけど。」
母親は佐々木の顔をちらちらみていた。
「こちら友人の佐々木さん。」
佐々木は母親に軽く会釈をした。
俺は家に飛び込むように上がり込み、自分の部屋のドアをあけた。部屋の中は荷物部屋のようになっていた。その中でも真新しい箱をあけ、整理された荷物を一つ一つとりだしてみた。
『あった。これだ。』
俺は紙袋の中身を確認した。なんピースものパズルが混在しているなか、銀色に光輝くものがあった。
『鍵だ。』
俺は急いで鍵だけをとりだし、ポケットにいれた。
立ち上がった時、後ろに人の気配を感じた。
警官だった。
俺は警官に話した。
「ありがとうございました。用事は済みましたので。」
警官は俺の背中に銃を押し当てた。
「鍵をだして。」
警官は言った。
俺はとっさのことで驚き警官の顔をみた。
ともみだった。
それは警官を装ったともみだった。
「コスプレしてみたわ。どうかしら?鍵ちょうだい。素直にくれればここでは銃撃たないわ。あなたのお母様もいるしね。」
ともみは笑いながら言った。
俺はポケットから鍵をだし、ともみの差し出した手の上にのせた。
「ありがとう。また会いに来るわ。じゃあね。」
ともみの足音は玄関で消えた。
俺はひざまついた。
体中汗だくだった。しばらくの時間立ち上がれず、身を伏せていた。ポケットの鍵を握りしめながら。ともみに渡した鍵は豊島の部屋の鍵だった。俺は本当の鍵をポケットの中で握りしめながら、外で待つ佐々木のところに向かった。