流れる時間2
その頃の俺は、みゆきのことを思い出すことが多かった。工藤ヒロシが死んだあと、あの武器を製造している孤島はどうなったのか。そして父親を亡くしたみゆきは。
みゆきとは四年間会ってなく、今も以前住んでいたマンションにいるかどうかもわからなく、一緒に住んでいた一年間が俺の中で彼女を特別な存在になっていたことは確かだった。
なぜかわからないが、ともみと出会ってから、みゆきの存在が消え失せ記憶にとどめることをしなくなっていた。
「なに考えてるの?」
ベットに横になってる俺にともみが聞いてきた。
「いや、何も。」
「ふぅーん。」
俺は横になりながら窓の外を眺めていた。
雪は絶え間なく降り続き、俺の記憶を真っ白に上書きしてくれた。
ともみは数ヵ月後に控えた結婚式のパンフレットをパラパラと眺めながら言った。
「なんか結婚式まちどうしいね。」
「うん。そうだね。」
俺の過去は真っ白にリセットされ、俺の頭はこれからのともみとの幸せな家庭を夢みていた。
降りしきる雪は、俺の頭からサクラが散るようにもみえた。みゆきの存在も散るかのように。
そして俺はサクラ花さく4月にともみと結婚した。
25歳の春だった。