壊滅
工藤の体は炎につつまれ、真っ黒の煙になり天高くのぼっていった。
ともみは俺の後ろに隠れながら立ち上る炎をみていた。
「私ね。私の父親は工藤なの。お母さんは直接は話してくれないけど、お母さんと工藤が双子の赤ちゃん抱いてる写真みたことあるの。一人は私で、もう一人は工藤みゆきだと思うわ。お父さんなの。」
ともみの目は赤く充血し、涙声で言った。
実の父の出会いが死に際とは、なんとも悲しい運命に感じた。
俺は振り返り、ともみを強く抱き締めた。
火はそういった俺達の気持ちを無視し、容赦無用にちかずいてくる。
「行こう。」
俺はともみの腕を強引に引っ張り来た道を走って引き返した。
二階建物内を横切り、外に出るドアを勢いよくあけた。外の風がいっきに流れ込み、炎は加速し建物をおおいつくそうとしていた。
その時だった。
俺の頭の横を空気をさくような鉄の塊が通りすぎた。
弾丸だった。
振り向くとそこには炎の中にアキラが俺達に拳銃をむけて立っていた。
「ヒロシ君。親父死んだみたいだね。リーダーがいなくなった今、サクラは壊滅状態だね。でもね。君達は釈迦の手の上の孫悟空のようなものだよ。サクラにはもう一人、組織内で神とよばれる人がいる。ここの人を殺したのはその人の命令だ。ね。ともみちゃん。ヒロシ君がよく知る人物だ。」
アキラは笑いながら拳銃を構え、俺達にちかずいてきた。
俺は撃たれると思い強く目を閉じた。
アキラは俺達の横を素通りし外にでていっただけだった。
俺は五体無事だった。
俺はともみと開けっぱなしのドアから見える青々しい空めがけて飛び出した。
俺とともみは階段を下り、建物の外にでた。
炎は一瞬にして建物を飲み込み黒煙をあげて暴れだしていた。
俺とともみは燃えあがる建物を茫然自失に眺めていた。