潜入4
工藤とは孤島で会ったのが最後でそれ以来は会ってなかった。
「工藤がいるということは長男のアキラがいる可能性が高いわ。この建物結構複雑みたいだから警察任せましょう。あと一時間以内にここに警察が来るみたいだから。」
ともみは言った。
俺達は錆だらけの階段をのぼった。
ドアを開けると大きな部屋が広がり、病院の入院部屋のように何個もベットがおいてあった。
俺達はその部屋を横切り奥に進んだ。
その奥には建物の中庭に続くような階段があり、その階段を下り中庭にでた。足元がやわらかな土で、見たことのない植物が生い茂っていた。 あきらかに日々人が手を加えてるように、余計な雑草はなく、定期的に与えられた水が植物を潤し、土を湿らせる。
細長くノコギリのような葉は青々とし、大量の実をつけていた。
「アサよ。」
ともみは言った。
「アサって?」
「マリファナの原材料になる植物で違法なドラッグよ。サクラは違法なドラッグの売買までしてたのね。驚いたわ。」
確かに鼻につく香りは独特だった。
その時だった。生い茂る植物を手で分けるように、緑色に茂った植物の間から人が現れた。
いきなりの人の出現に俺とともみは素早く身を引きながら身を縮めた。
それは、あきらかにサクラの中心人物の工藤だった。工藤は水浸しになっていた。
「こんにちわ。みゆきにヒロシ君。」
どうやら工藤はともみの事をみゆきと思ってるらしい。でも実の父親が自分の娘を間違えるだろうか?俺は疑問に思いつつ工藤の話をきいた。
「ちょっと後片付けにきてね。君達は急いでここから逃げなさい。私の体にはガソリンがついている。建物全体に火が回るようにしてあるから。これから人生最後のタバコを味わおうかとね。だから早く逃げなさい。」
俺達に言葉を発するのを遮るように工藤はタバコに火をつけた。
タバコの舞い上がる煙とともに工藤の体に引火した。
工藤の火のついた体は俺達を巻きぞいにしないように植物の中に歩いていった。
火は一瞬で中庭全体をおおいつくした。
工藤は死んだ。