潜入2
俺は浅い眠りから覚めた。すでにともみは車の中には居なかった。車から降りた俺は空めがけて、おもいっきり背伸びをした。全身の骨が伸縮する感じがし、関節が音をたてた。
「あら。ヒロシ君おはよう。」
ともみだった。
「おはようございます。」
「このへん、散歩してたんだけど、あの建物以外なにもなかったわ。」
「ところで、ともみさん俺にこれ渡されたところで、使い方わかりませんよ。」
俺は拳銃をともみに差し出した。
「それもそうね。私がもってるわ。それじゃ早速だけど行きましょう。」
昨夜通った山道も、昼間に通ると違った道に感じた。
門までたどり着くと、昨晩とは様子がちがうことにきがついた。頑丈に閉ざされた鉄格子が無造作に開放し、人の気配が全くなかった。
俺とともみは顔を見合せ開放した扉の中に一歩踏み出した。
俺達は雷に打たれたように脳天から足元まで電流が走ったように一点を見ながら立ち止まった。
そこには昨晩話した門番の男が頭を撃ち抜かれ死んでいた。
目と耳から血が流れ、見るも無惨な姿になって倒れていた。
俺は自分の携帯から警察に電話しようとした。
ともみはそれをとめるように声を発した。
「待って。奥に進みましょう。」
死体をみたあとの周りの空間は重く歪んだ世界に感じた。俺は足の震えがとまることがなく、ともみは俺の手を握りしめ、引っ張った。
「しっかりして。」
ともみの声は俺を奮い立たせた。
倉庫のような建物は長年の月日を経たように色が変色し鉄筋が剥き出しになっているのがところどころにあり、お化け屋敷のような不気味さがあった。
建物の入口の様子を伺いながら、こみ上げる緊張を抑え建物内に入った。
入口からは真っ直ぐに一本の廊下が続き、その廊下にそって小部屋が四つあった。そして廊下の突き当たり正面に大きなドアがついていた。
人の気配が全くなく、俺達は、ゆっくり一つ目のドアを開けた。
ともみは中をのぞきこんだと同時に後退りした。
俺は恐る恐るのぞきこんだ。そこには銃でうたれた男の死体があった。
客室のようなテーブルの前の長いソファーの上に横たわるように倒れていた。
「サクラの幹部の中山よ。」
ともみは俺に小声でいった。
「昨晩ここで何が起こったのでしょうか?」
「わからないわ。」
中山の硬く固まった手の中に銀色に輝くものがみえた。
俺は恐る恐る中山の固まった手を力いっぱい拡げた。
それはどこかの部屋の鍵だった。
俺は鍵を胸ポケットにいれ、廊下にでた。




