父親のメッセージ3
広々とした入口は外装以上に和風でシンプルな建物だった。俺は牧草総理に案内され、客室に通された。
「さあー。どうぞ。」
牧草総理は俺に、ソファーに座れと命じるようにいった。
高級そうなソファー、高級そうなテーブル、高級そうな扉、どこに目を向けても無駄がなく、目の前に目を向けると、そこには博学的な女性が座っている。胸元には、ネックレスが光輝き、薄い化粧は中年の女性の魅力をかもしだし、その魅力と彼女の俺以上に生きた経験が、どこにでもいる子供の母親のような温もりを感じた。ただ一国の首相ということをのぞけばだが。
「あなたのお父さんが亡くなったのは知ってるわ。大切な友人ですもの。知らないわけないわ。あなたも悲しいでしょうが、私も悲しいです。正直に言うと、あなたから電話貰ったとき本当嬉しかった。」
彼女はいった。
「写真のメッセージのMという人物と父の携帯のMという名前の人物が同一人物と思いまして、ぶしつけながらも電話で父の訃報を知らせなくてはと思ったからです。父にとって大切な人と感じまして。」
俺はいった。
「あの写真の落書きのことね。まだ持ってたのね。あの頃の写真。あれはあなたのお父さんじゃなくて私が書いたものよ。私達の大学のちかくにね、モンテールっていう喫茶店があったの。今はもうマンションが建ってしまってその喫茶店はないけど。そのときね、その写真を現像し、あなたのお父さんに手渡したときに書いておいたの。でもあの人は来なかったわ。その時話そうとしたことは工藤のことよ。その時は会えなかったけど、その後は待ち合わせなんかしなくても携帯電話って便利なものができたでしょ。あなたのお父さんとよく電話で話したわ。彼も、今のあなたのように迷ってた。あなたが今何が知りたいか大体検討がつくわ。それに、あなたが巻き込まれてる組織がしていることは日本の危機なの。」
確かに俺は迷っていた。
それ以上に組織サクラに恐怖を感じていた。
彼女に打ち明けることにより恐怖が和らぎ、打開策を見出だしてくれると信じていた。
「失礼します。」
秘書の豊島がコーヒーを持って部屋に入ってきた。
「豊島さん。今日は無理にお願いしてごめんなさいね。今日はもう大丈夫だからあがって。」
牧草総理は豊島にいった。
「いえいえ、総理の頼みなら、いいえとは言えませんから。」
笑いながら豊島は言い、コーヒーをテーブルの上におき、部屋を出ていった。
彼女はブラックのコーヒーを一口飲み、のどを潤し話を再度切り出した。
「本題にはいりましょう。」