勧誘2
アキラという男は表情を変えず俺の後頭部に銃を押し当てた。
俺は以前撃たれた恐怖を思いだし足が震えた。
「お兄ちゃんやめて。この人は私達の仲間よ。ヒロシも立ってないで座って。」
俺は震える膝を曲げ、椅子にどっしりとふかく腰かけた。アキラも銃を下げ無口で後ろのテーブルの席に腰かけた。
俺は震えが足から体全体に及び話すことがままならない精神状態になっていた。
「ヒロシ外見て。ドームが火事みたいね。今から三秒後に風船が破裂するわ。」
みゆきはゆっくりと三つ数えた。
ドームのしぼんだ屋根は瞬く間に赤く染まった。震動がこの建物まで伝わり、熱い風圧がガラスにぶち当たった。
みゆきは笑っていた。
俺はみゆきの表情に寒気を感じた。この場から逃げろと俺の能は体に命令するも体全体を襲う震えで身動きができなかった。
「私達の組織の中には後楽園遊園地のジェットコースターの整備してる人がいてね。私がお願いしたら、喜んでジェットコースターの中に爆弾を設置してくれたわ。火をまとい、滑り落ちる光景がみたくて。きっと焼けただれた人間がすごいスピードで滑り落ちるんでしょうね。いっぱい人が死ぬわ。もしだけどね。もしヒロシがサクラに入ってくれるなら。爆弾のボタンを押さないかもしれないわよ。どうする?」
みゆきは瞬き1つしなかった。みゆきに宿る悪魔がみゆきを覆いつくし、俺を飲み込もうとしている。俺は目の前にいる人間ではないものに心底震え上がった。
そして俺は首を何度も縦にふった。助かりたい一心に。
「やっと決心がついたのね。ヒロシ。うれしいわ。」
そして俺は怪物の胃袋に飲み込まれていった。