謎の孤島2
目が覚めた頃は、太陽が一番高い位置にあり、長い時間寝ていた俺は呼吸しかしていなく、光合成するには、うってつけの陽気だった。
体の痛みはあるが激痛に耐えるほどではなく、頭は炭酸がはじけたように、はっきりとしていた。
「こんにちは。気分はどう?」
声の方向に目を向けると、そこには50は過ぎているくらいの男が座っていた。白髪一色の細身、顔には深いシワが刻まれ、片目をつぶり、もう片目は大きく見開き俺をみている。
「病状中申し訳ないと思っているんだが、早いうちに君に挨拶にきたほうがいいと思ってね。私は工藤と申します。みゆきの父親であり、君のお父さんの友人でもある。遠慮はいらないよ。自分の家と思ってくつろいでくれ。」
直感的に俺は父親の携帯にあった工藤という人物がこの人であり、若き頃の父親の写真に写っていた人物もまたこの人だと思った。
「みゆきさんには助けていただき心から感謝しています。しかも図々しくもご厄介させていただき、病状ながら心苦しいものがあります。」
工藤は笑いだした。
「君のお父さんとはね、学生時代からの友人で朝から晩まで学生運動に明け暮れたよ。その時の数々の暴動で何度も危ない目にあった。この目もその代償さ。火炎瓶が手元で爆発し光を失った。そのたびにいつも傍らにいた君のお父さんに命を救われたよ。君は忘れてるだろうが、君が生まれたばかりの頃、私は君と何度も会ってるんだよ。だから私とヒロシ君とは知らない仲じゃない。のんびりしなさい。」
俺は覚えてない過去に驚いた。
「そうだったんですか。お名前だけ教えていただけますか?」
「工藤ヒロシ。君と同じ名前だよ。」
工藤は笑顔で答え、片足を引きずりながら部屋をでていった。
そういえば聞いたことがある、俺の名前の由来は親父の古い友人の名前だと。
俺は運命というレールの上を歩いてるような感じがした。