第7話 何事も準備が必要
異世界へと召喚されて二日目。
俺達は早速とばかりに、この国の兵士や騎士達の訓練所へと集まっていた。
集まった人数は31人。
この事から10人は非戦闘職につけたということが分かった。
俺も含め、クラスメイト達は既にそれぞれの職業に合う装備を身に付けている。
今集まっている皆を見ていると何人か、不安に思う者、怯える者、何かを決意した者というような表情をしているのが分かった。
昨夜、皆も色々と考えていたのだろうな。
それからしばらくして、俺達が全員集まったのを確認した騎士が話始めた。
「おはよう、勇者様方。俺は騎士団長のガゼル・ステークス。君達の教官を勤めさせてもらう。言葉遣いが悪いのは多めに見てくれ。それと副団長は俺の代わりに軍を率いてもらっている為いないが、姫様直属の近衛騎士から協力者に来てもらっている。」
「近衛隊副隊長を勤めさせて頂いております、キセリ・ステークスと申します。ガゼル団長の娘となります。この度はガゼル団長の教官補助として働かせてもらいます。」
赤色の髪に柔らかい表情、それに似合わない鎧の上からでも分かるほどがっしりとした筋肉質な身体をしたガゼルさんと、同じ赤色の髪にキリッとした表情、鎧によってわからないがなかなか引き締まっている身体をしているであろうキセリさん。
髪の色しか共通点が見当たらないが、奥さんがよっぽど綺麗な人だったのだろうか。
「よし、まずはーーー」
そうして訓練は始まった。
まず、全体で基礎訓練及び体力訓練を行う。
これに関しては、どうやら皆身体能力が上昇または職業による補正がかかっているようでついていくことができていた。
その次はそれぞれの得意な戦闘方法ごとに分かれての訓練になった。
括りとしては、魔法使い組、僧侶組、弓組、軽装備組、重装備組として分かれている。
俺は戦士ということもあり、重装備組だった。
この時の俺の格好は、騎士団のように全身を鎧で包み、両手剣を装備している。後は個人的な理由で小型な盾も左腕に付けている。
この国では弓組が使用するタイプの物だ。
訓練自体は軽装備組と一緒に行っているため、そこまでの差異はない。
その理由の一つとして、この国の戦闘スタイルが関係している。
この国では隊列を組む場合、五人一組である。
それが大きく分けて、さっき言った五職種である。
重装備と軽装備は特に連携がものをいうため、訓練時から行動を共にすることが多いのだとか。
状況にもよるが、任務中はニチームで動くこともあるらしく、片方は補助的な立ち位置になるらしい。
だが最後の訓練時間として、五人一組の訓練も組み立てられている。
わざわざ重装備と軽装備が一緒なのは、たぶん俺たちの訓練にそこまで人数を割けないということじゃないのかと俺はにらんでいる。
僧侶組なんて人数少ないから、魔法使い組と一緒だし。たぶんそうだろう。
そうして日々、城の内部での訓練が続く。
ーーーーーーーーーーーーー
訓練を続け2週間。
遂に城の外に出ることになった。
その際の五人一組の隊列、つまりチームは連携訓練の時から組んでいたメンバーになった。
重装備組、山田 浩太。
軽装備組、勇者・白木 祐
弓組、葛城 由美
僧侶組、本田 沙良
魔法使い組、大塚 朱里
サポートチームには、近衛隊副隊長のキセリ・ステークスさんを中心としたメンバーになっている。
2チームの内、必ず騎士が1人入ることが決まっているらしい。
俺達のチームでは、俺と白木以外は女の子だ。
この女の子たちは白木と仲が良い女の子たちで、葛城は少しやんちゃ。本田は大人しく優しい。大塚は冷静沈着の副委員長。
黒田曰く白木のハーレム要員だという。
一応チームを組む以上仲良くした方が良いと思い色々と話してみた。
―――居残り特訓をしていた葛城に話しかけた場合―――
葛城『……はぁはぁ。……次。』
俺『おい、あまり無茶すんなよ。』
葛城『……あいつの足手まといにはなりたくないのよ。』
俺『そうか。でも無理のしすぎは逆効果だからな。』
葛城『わかってるわよ。…そうだ。黒田、あんた暇なら相手になってよ。練習になるし。山田は審判ね。』
俺『え?』
黒田『…は?』
この時、黒田は非戦闘職でも自分の身は自分で守るために訓練に来ていた。
俺は装備を外していたから、黒田に言ったのだろう。
―――異世界の医療魔術本を読んでいる本田に話しかけた場合―――
俺『すまん、本田。黒田を治してあげて。』
黒田『た、たすけ……。』
本田『え。く、黒田君!?』
治療中
黒田『ありがとう、本田。しっかし葛城の奴、散々しやがって。』
本田『はは。』
俺『それで、本田も居残り勉強か?』
本田『あ、うん。皆が傷ついたら早く治せるように、大きな怪我をしても治せるようにね。』
俺『そうか。立派だな本田は。』
本田『……ううん。ほんとはね怖かったの。戦いに出ちゃうから。でも祐君が守るってまた言ってくれて少し安心したから。』
俺『頬が真っ赤だぞ、本田。』
黒田『治療中に惚気ないでくれよ。』
―――魔法居残り特訓中の大塚に話しかけた場合―――
俺『大塚も特訓か。皆凄いな。』
黒田『そりゃ、必死にもなるだろ。誰も死にたくはないし。な?』
大塚『ええ。そうね。それに山田君もしているでしょ。』
俺『…見たのか?』
大塚『たまたまね。朝、通りがかった時に見たの。』
黒田『へー。山田も十分凄いじゃないか。』
俺『いじるな。だから言わなかったのに。』
大塚『それに黒田君もね。』
黒田『え? 俺も?』
大塚『ええ。葛城さんに追いかけられているのを見ていたから。…そうね。せっかくだし、私の相手にもなってもらえないかしら。』
黒田『断固としてお断りさせていただきます。』
俺『即答だな。』
という感じで、彼女達と話していた。
黒田が少し不憫だったと思う。
「ん~。なぁ山田。」
「何だ。」
「少し聞きたいんだが、この2週間の戦闘組の訓練って何をしたんだ?」
「体力作り、基礎訓練、連携訓練、実戦訓練。特殊なのをいえば騎士団が捕まえてきた魔物との戦闘訓練及び、解剖だな。」
「……結構ハードだな。」
「まぁな。でも魔物といっても狼みたいのや兎みたいなのだった上にそこまで強くなかったし、戦闘訓練自体は良かったと思うよ。初めて生き物を殺した時や解剖の時は吐いたやつ結構いたけど。」
「そりゃ、慣れなかったら吐くわな。」
「うん。でも皆凄いぞ。慣れるの早かったからな。」
「……そうか。」
それから、黒田は何かを考えるように黙ってしまった。
それにしても白木、葛城、本田、大塚。それに他の奴らも何か違和感を感じる。
その何かがわからんが。
普段は何もおかしくは思わないし。
何だろうか。