第2話 現状把握は必要です
それは一瞬だった。
帰りのホームルーム中に突然視界を覆うような光が床から溢れ、次の瞬間には教室とは違った場所にいたのだ。
しかも、俺達の周りには中世ヨーロッパ時代のような鎧を着て剣を構えている集団と、黒いローブを着て杖を握っている集団、白いローブを着て同じように杖を握っている集団がいた。
「お、おい、これは何だよ!」
「なな何が起こったの!? 何なのよあの集団は!」
「こ、怖い。……い……や。……嫌!!」
クラスメートは怯える者、戸惑う者、叫ぶ者、気を失う者、支えあうようにしている者、落ち着き現状を見守っている者と様々だ。
「や、山田。大丈夫か?」
「……大丈夫じゃない。」
そんな中で俺は膝と手を地面に付け落ち込んでいた。
何が悲しくてまた異世界に来ないといけないのだ!
もういいじゃないか。
あの平和な国で居させてくれよ。
ふざけんなよ!
また、また家族と離ればなれかよ。
そんな考えが頭の中で巡る。
だが、こんな状況でも隣にいる友達は、俺を心配して声をかけてくれている。
彼自身も戸惑い不安だからこそ、俺に話しかけているのもあるだろうが、それでも俺が正気に戻るには必要だった。
俺だけじゃない。
今度はこいつらもいる。
大切な友達がいる。
落ち着け。
現状を把握しろ。
あの教室を覆った光は召還魔法だ。
しかも教師を入れて41人もいる1クラス分召還できる程の魔法。
周りにいる黒いローブと白いローブの集団は肩で息をしている者が多い。
また、その集団の後ろには大きな水晶が見える。
恐らくあれに魔力が詰められていたのだろうが、使い果たしていると考えられる。
すぐには使えないだろうな。
友達の肩を借り、立ち上がりながらそう考えているとあの集団が左右に別れ、1人の少女が現れる。
「ようこそ、おいでいただきありがとうございます。勇者様方。」
腰まで伸びている綺麗な金色の髪、白い肌、翡翠色の瞳をしているその美少女は、美しく整ったドレスに身を包み優雅にお辞儀をする。
少し輝いているように見えるピンク色の唇から、少し高めの声が出てくると、クラスメート達はその美少女の魅力に見入り、静かになっていた。
「詳しいご説明は場所を替えてからいたしましょう。その間に兵士の方々は剣を納めてそれぞれの配置へ、魔法使いの方々は双方共に身体を休めてください。」
「勇者様方、まだ驚いているものだと思いますが、ここでは落ち着いて話すことができませんので、どうぞこちらへ。」
美少女とその護衛騎士らしき人に言われ、俺達は戸惑いつつも後を追っていった。