第1話 プロローグ
とある高等学校の昼休み。
2年3組の教室に俺は友達と一緒に弁当を食べていた。
「こ、これは美味い。美味いぞーー!」
「どこの料理漫画だ。ただの卵焼きだろうが。」
「バカ野郎! こんのバカ野郎! 焼き加減、味付け完璧だろうが。食ってみろ!」
「何でバカ野郎って2回言った。阿呆が。」
目の前で座っている友達は呆れるような表情をした。
この卵焼きは絶品なんだぞう。
弁当を食べ終えると、友達がトイレに行っている間に日記帳を取りだす。
『異世界旅日記』と書かれたそれは、1年前、俺が異世界に行っていた頃の日々が綴られている。
それは、ある日の下校途中に突然起こった。
まるで、ネット小説の冒険物語と同じように異世界へと召喚されたのだ。
天才と呼ばれる様な人物たちとは全く違う非凡な俺。そんな俺でも異世界では異常な力を持ち、初めはそこそこだったが次第に成りあがっていく。
この異世界では本当に魔王が『世界の敵』であり、魔族と一部の悪人達(人間・獣人・エルフなどから)と共に世界を自分たちだけの物にしようとしていた。
世界に冷遇されていたのならわからないでもないが、そんなことはなかった。
ただの悪だった。
元の世界へと戻る方法はないと、国王に言われたが俺は世界を旅しながら探した。
その過程で召喚された理由の魔王たちを倒したが、それは些細なことだ。
俺は帰りたかったのだ。
確かに魔法や剣の世界に憧れが無かったと言えば嘘になるが、そんなものゲームや小説・漫画の中だけでよかった。
生死の狭間を何度も味わった。
人を殺す苦しみを知った。
仲間を失う怖さと悲しみを感じた。
裏切られ絶望した。
異世界では3年近くいたが、そんな事ばかりだ。
良い部分がなかったとまでは言わない。
一部の住民やとあるお城の御姫様からは敬愛されていたようだ。
だが、それでも俺は元の世界で暮らす事を望んだ。
魔王を倒した後、国の陰謀やら何やらと巻き込まれそうになったが、逃げた。超逃げた。城の中で。
最後まで見つからなかった。灯台下暗しとはよく言ったものである。
結果、召喚された時に使われた魔方陣を弄繰り回し、元の世界へと戻ることができた。
戻った時には瀕死だったが。
どうも、本当ならできないことを勇者の力でごり押したため、そうなったらしい。今では勇者としての力も無くなっている。
時間軸では俺が召喚された下校途中に戻ることができた。
その際、傷だらけ瀕死な姿で見つけられ大きな事件としてニュースになった。
そして現在、俺は元の世界で日々楽しく生きている。
以前はそこまで興味がなかった勉強にも部活にも興味が湧き、楽しめている。
趣味で料理も始めているが、まだまだ友達には勝てない。
さっき食べた卵焼きは友達のだ。
俺はこの世界で生まれてよかった。
家族も友達にも恵まれて嬉しいし、食事も美味いものばかりでいい。
だから、もう2度と異世界には行きたくなどない。
「何をやってんだ、お前。」
「幸せをかみしめてるのさ。」
神父の如く両手を合わせていると帰ってきた友達とまた話をする。
あぁ楽しい。
本当、帰ってきて良かった!
そしてその日の放課後。
クラス単位で異世界へと転移されていた。
ちきしょーーーーーーーーー!!
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これは、異世界召還に巻き込まれる、山田 浩太の物語。
彼の『異世界旅日記』はまだまだ終わりそうになかった。