第一章 満月の夜、僕は使徒になる。【6】
思いつつ、アリーシアを見ていると。
「……なに?」
「い、いや、なんでもないよ?」
ダメだ。やっぱりあの服は僕には刺激が強過ぎる。
僕はアリーシアに一言告げてから、自分の部屋へと向かった。
なにか、着替えになるような服を探すためだ。
本当は妹のものを借りたほうがいいんだろうけど、妹は全寮制の女子高に通っているから家にはいないし、両親も海外で仕事をしているので、家にいるのは僕ひとり。
そんなときに妹の服がなくなっている、なんてことになれば、僕の立場が危うくなる。
ただでさえ、妹には変態扱いされているというのに。
クローゼットの奥から段ボールを取り出して、中身を取り出す。
僕の幼いころの服がそこにはある。
アリーシアの現在の体型からして、僕が小学生、それも高学年のときの服でいいかな。
それらしき物、無地の白シャツと膝までの丈のズボンを持って、居間に戻る。
「これ、よかったら着替えて。そこを出たところに洗面所があるから」
渡すと、アリーシアは大人しく、僕の指示に従って洗面所へと向かった。
……というか、彼女、自分が縮んだこと、気づいているのかな。
……。
バタンっと、居間の扉が勢いよく開かれて、アリーシアが居間に飛び込んでくる。
「……なにこれ」
「いやぁ、説明する分には構わないんだけど、とりあえず、自分の今の姿をよく見た方がいいよ」
苦笑いをしながら、アリーシアに言う。
僕がそう言った理由。
アリーシアは、彼女が身に付けていたゴスロリ服を脱いでいた。
しかし、僕が渡した服は着ていなかった。
さぁ、それから導き出される答えはなにか。
簡単だ。
「なかなかセクシーな下着だね」
身体が小さくなることによって、ぶかぶかとなった上下黒の下着はずれて、彼女の肌を露出してしまっている。
幼くなることで各部が膨らみを失っているけど、やはり、彼女の姿はあまりにも綺麗で。
僕はダメだとは思いながらも、その姿に釘付けになってしまう。
「っ!」
僕の指摘に悲鳴にならない悲鳴を上げて、そのまま駆け足で洗面所へと戻って行った。
……いやぁ、いいものを見れた。
膨らみを失った胸に、くびれを持った腰回り。
白くて細い四肢。
……うん、良かった。
ひとり、ガッツポーズをする僕の姿が居間にはあった。
今なら変態と呼ばれてもたぶん否定できない。