第一章 満月の夜、僕は使徒になる。【4】
少女を家に連れて帰って、僕はまず風呂に向かった。
別に少女に対して卑猥なことをしようと考えているとか、そういうことではない。
バイト帰りにシャワーを浴びるのは僕の習慣なのだ。
いくら例外に当たる出来事が起きたからといって、生活のリズムを崩すわけにはいかない。
少女は現在、居間にあるソファに横たわらせている。
体調が悪そうにも見えなかったから、特になにをした、というのはないけれど、一応毛布をかぶせておいた。
なんというか、彼女の格好は、健全な青少年である僕にとっては毒に他ならないのだ。
シャワーを浴び終えて、ドライヤーとタオルを使って髪を乾かす。
僕の髪は男子にしては長く、よく女子みたい、と言われるような長さなので、手入れは欠かせない。
髪が乾いたところで、僕は居間へと向かう。
「……?」
居間に、少女の姿はなかった。
いや訂正。
「だれ?」
少女が寝ていた場所にいたのは、僕が出会った少女よりも、幾分か幼い容姿の少女だ。
金色の髪や顔立ち、ゴスロリ服は変わらない。
でも、明らかに幼い。
……まさか、容姿が変化した……?
血を吸ったり、幼くなったり、忙しい娘だなぁ、なんて思っていると。
「ん……」
少女の唇から吐息が漏れて、その瞳が開かれた。
僕と同じ黒の瞳を持つ少女は、寝ぼけているのか、視界が定まれないように目だけをきょろきょろと動かし、そして身体を起こした。
身体が小さくなったせいか、身につけているゴスロリ服がずれ下がり、僕は思わず目を逸らしてしまう。
ただでさえ露出が多いっていうのに、そんなにサービスされるといろいろヤバい僕である。