第二十話 継承
自分の部屋に戻ってきたクロウは、シェーファの目の前にいた。セリアはいまだに目を覚まさない。さらに、アロウの姿はそこにはなかった。
「アロウのやつは・・・・。」
「あ奴は姿を消した。・・・行っとくが俺が消したんじゃないぞ、あいつがどこかに言ったという意味だ。」
「・・・別にあいつがどこ行こうと知ったこっちゃない。・・・なんで俺を?」
「お前だけを目覚めさせたか・・・か?お前を次の月の加護を受けし者に選んだからだ。」
「俺が?」
「お前はここで、加護を受けしものの葛藤を見た。宿命を背負うということが、どれほどの重荷なのかを知った。それを踏まえ、お前なら正しき加護を受けし者になるだろうと判断した。」
「初めからどんなものか知った上で、それを継げってことか。・・・・・・いいぜ、やってやるよ。」
「物分かりがいやに早いな。まぁ、助かるが。」
「で、どうやんだ?」
「実はもう、お前に継がせてある。」
「は?」
「意識を失わせたときに、すでに新たな月の加護をお前に継がせ、アロウの中にあった加護の力はそのまま天に反した。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
キレていい?いいよな?いいよね?え・・・・俺の意見関係なかったわけ?初めっから拒否不能?クーリング制度なし!?
「セリアがお前のこと嫌がってたのがわかる気がする。」
「それはどういう意味だ?」
「なぁ、あんた何者?人?神様?」
「そのどちらにも属さない。」
「不思議な存在だなあんた。」
「ふっ・・・。さて、俺はもう行かないとな。」
「セリアと話さなくていいのか?」
「話すこともない。」
「つめてー兄貴だな。」
「俺は兄貴じゃないがな。」
「あいつが兄貴だと信じてんだから、最後まで兄貴でいてやってくれよ。あいつにとっては、あんただけなんだからさ、家族ってやつ。」
「ふん、お前が早く結婚してやればいいだろうに。」
「簡単に言ってくれるよ。まだ、おとせてないし。」
「あいつを幸せにしてやれよ、義弟。」
「そういうときだけ、兄貴面かよ・・・・・・・・・。んなことわかってるっての・・・・って、もういないか。」
気がつくとシェーファの姿も消えていて、クロウは床に寝たままのセリアを抱えあげた。
「俺は気があっても、こいつが素直になんなきゃ分かんねーよ、義兄さん?ってか。」
まだまだ、結婚は遠そうだ。
実は次回、最終回な気がするんです!!(え、いきなり!?)
長い間お世話になりまして・・・・誠に感謝です。