第十九話 過去の悲劇
今度はセリアとクロウの話です。
クロウ視点ぎみ。
白い空間に、俺は気がついたらいた。そして目の前にはうつろな目をしたセリアがいる。
ここどこだ?
「おい、セリア・・・。」
「死ねなかった・・・・・・・。また俺・・・死ねなかった。」
そう呟くセリアの顔はひどく険しい。何言ってるのかわからない。死ねなかったって・・・死ぬ気だったのかよ?
「死んでいいはずの俺が・・・・なんでまだ生きてんだよ・・・・。」
「お前が死んでいいはずの人間なわけないだろう?」
「クロウは、何も知らないから・・・・。俺が昔何したのか知らないからそんなこと言えるんだ。」
「昔?」
「俺・・・・実の母親殺したんだ。」
「え・・・・・・・・・・?」
「加護を受けしものは、幼いころにその能力に目覚める。俺は五歳の時だった。能力が覚醒した俺は、その強大な力を制御できずに、暴走した。けっか、住んでた城は半壊、そばにいた兵士、大臣、そのた城につかえていたものは死に絶え・・・俺の母親も死んだ。俺が殺したんだ・・・・。母親の半身は焼けて跡形もなく、ところどころが焼けただれて、皮膚が垂れ下がって・・・骨まで見えてた・・・。やっと落ち着いて・・・でも、俺・・・母親を火葬しなきゃいけなくなった。もう充分だろ?どれだけ俺は・・・俺は母親を焼かなきゃいけないんだ!!って・・・思いながら・・・。太陽の加護を受けたものが持つ焔は聖なる焔って言われてて・・・鎮魂にふさわしいって・・・。でも・・・たとえ鎮魂のためでも・・・実の母親焼くのは・・・耐えらんない・・・。だから俺・・・生きたくないと思った。生きてたらまた誰かを燃やさなきゃいけなくなる・・・・。人を燃やすとか・・・そんなの・・・罪もいいとこだ・・・。」
処刑された父親たちを燃やした時、お前はどんな気持だったんだよ・・・。
もしかして・・・その時のお前は・・・・
俺が気がついてなかっただけで、壊れかかってたのか?
「何度も死のうとした。自殺と名のつくものなら何でもやった。でも、なぜか生きながらえる。この体にある命のともしびは・・・まだ消えない・・・。だから・・・アロウに協力すれば・・・俺死ねるかなって思ってた。ほんとは、あんなことしちゃいけないってわかってた。でも、それよりも死にたいって思う気持ちが強かったんだな・・・。でも・・・まだ俺生きてるのは・・・なんで・・・。」
「生きてていいからだろ?」
「は?」
「お前が死んでいい人間じゃなくて、生きてていい人間だって言うだけだろ?簡単な話じゃねーか。誰かがそいつのこと死んでいい、生きていいなんて決めらんねーけど、生きてるってそういうことだろ?死する時は定められてる。人それぞれの死期は違う。今生きてるっていうのは、生きていいから。まだ生きていられるってことだ。まだ生きたいのに死んで行く人もいるのに、生きれるのに死にたいとかいうんじゃね-よ。」
「クロウ・・・・・・・。あのさ・・・今の話聞いても・・・まだ俺に・・・嫁げとかいう?」
「だから?俺そんなん気にしねーし。嫁ぎたきゃ勝手に来れば?」
「もしかしたら・・・俺・・・また力暴走するかもしれないけど・・・。」
「俺がお前に殺されるかよ。逆に殺すぞ?」
「・・・・・・ふっはははは・・・・・なにそれ・・・俺だってお前なんかに、殺されねーし。」
「ふん。かわいくねーの。」
「男が可愛いとかマジありえねー。」
「俺、お前のことかわいいって思ってたけどな。」
「は?・・・・え・・・・それってどういう・・・?」
「お前ちびで、見栄っ張りで、強がりで、負けず嫌いでひょこひょこ動いてんのが可愛い。そういうとこ好きだぜ。」
「は?は?はぁ~~!?」
お前はそういう間抜け面のほうが似合うんだよ、馬鹿王子。
「なんか一言もふたことも多いぞそれ!!!」
「そうか?」
白い空間が、徐々に姿を変えていく。
気がつくと、俺はセリアの兄貴の前に戻ってきていた。
アロウが助けたといってたのは、暴走したセリアを止めたというものです。
アロウが止めていなかったら、国中が火の海になっていたかもしれないという・・・