第十六話 太陽と月
太陽はセリア
では月は・・・・・・・・・・・・
「ちょっと待てよ・・・・それってたしか。」
セリアの放った言葉に、クロウはあることを思い出した。
この世界には太陽の加護を受けしものと、月の加護を受けしものがいる。
それぞれその星の持つ力をその身に宿す。だが決してその両者がどちらかのために己が力を使ってはいけない。太陽と月。それは対をなすもの。干渉し合うことは避けなければならない。日食・月食。どちらかがどちらかに飲み込まれるときはかならず暗黒の闇に陥る。それが世界全体に広まり、人々は生きる気力を失ってしまう。ゆえに、自然発生する日食・月食はほんの数刻の出来事なのだ。もしそれが加護を受けしものが原因で起きてしまったら・・・・。世界は破滅の道へと進んでしまう。
「セリアは、太陽の加護を受けしものだ・・・そして・・・そしてアロウ、お前は、月の加護を受けてんだろ!?」
そう、この国の王族には必ず月の加護を受けしものが生まれる。それがアロウだった。
シューディレンに必ず太陽の加護を受けしものが生まれるように・・・・。
「よく覚えてたな?」
「物覚えだけはいいもんでね。って、そんなことより。お前のためにセリアが力を使ったら・・・この世界は・・・・。」
「すべて闇に包まれる。常夜の空に浮かぶのは月だけで十分だ。余分な光などいらない。」
「太陽がいなきゃ月は輝けねーぞ?」
「それはこれまでの理。だが、それもこれから覆る。」
「セリア!お前はそれでいいのか!?」
「よ・・・・くはないと思ってる・・・でも・・・・俺は・・・アロウには・・・逆らえない・・・。」
「なんで?」
「そ・・・・れは・・・・・。」
「セリアは俺に助けられたんだ。なぁ?セリア?」
「っ・・・・。」
「助けた?なにから?」
「暴走する己の力から。」
「やめろ・・・・それ以上は言うな!!」
セリアが大声で叫んで、アロウの声を妨げた。
いやだ。知られたくない。知られたら・・・俺はここにもいられなくなってしまう。クロウに・・・・クロウに嫌われる・・・・。
「セリア・・・?」
「そういうことなんだよ・・・クロウ・・・。なにがあっても・・・もう俺は・・・約束を守るしかない・・・・。やっぱ俺・・・生まれてきちゃだめだったんだ・・・。たとえ生まれてきても・・・俺が加護なんか受けたのが間違ってるんだ・・・ソラン兄貴か・・・あの馬鹿兄貴だったら・・・あんなこと・・・こんなことしなくても・・・・。」
だからおれはこの加護を受けた体が・・・自分が嫌いだった・・・・
なんどもなんども生まれてきたことを後悔して
俺の力目当てで媚売ってくる大人たちがいやだった・・・・・
すべてこの力のせいだと・・・天に昇る太陽をにらんでた・・・・
「初めてだった・・・・・。」
「は?」
「俺の力目当てじゃなくて俺の近くにいたの・・・家族以外で・・・・クロウが初めてだった・・・。アロウは最初から・・・これが目的だってなんとなくわかってたから・・・・。うれしかったんだ・・・・だからつい・・・・突っかかったり・・・反抗してみたりしてた・・・これが普通なんだって思いながら・・・・。」
「せり・・・・・・。」
口をつぐんだクロウの眼に、オレンジにきらめく金髪が目に入った。セリアが力を使う予兆。セリアは、すでに心を固めていた。
「まて、セリア!!早まんな!!」
「来ちゃ・・・だめだ・・・・そしたら・・・お前・・・死んじまうよ?・・・もう俺・・・この力で・・・誰かを失いたくない・・・・。」
「え・・・・?」
「-----------------。」
最後にセリアがつぶやいた一言は、クロウには届かなかった。二つの対となっている力がせめぎ合い、だが徐々に暖かい気が拡散していくのがわかった。
「セリアーーーーーーーーーーーー!!!」
クロウの叫び。そしてセリアの力が表に出てこようとした時、セリアの手を誰かがつかんだ。そのつかんだ人物を見て誰もが驚いた。
「あ・・・・にき・・・・・?」
「そこまでだ。」
それはセリアの長兄だった。
長い。長いですね。
物語はだんだん終りに差し掛かってきてます。