第九話 幼馴染
ということで、幼馴染登場。
誰のってかんじですよね・・・セリアのです。
その日も相変わらずセリアは場内を歩いていた。
今日は城に一台の馬車が来ていたから、きっと御客でも来てるんだろう。セリアは最近見つけたお気に入りの庭にあるあずま屋で、クロウの部屋から勝手に持ち出した本を読んでいた。
クロウのおかげで、セリアは城の外にも出れるようになった。といっても町とかにはいけないのだが、外の空気を吸えるだけでも、セリアはうれしかった。読書をしているセリアのもとに、一人の青年が近寄ってきた。
「あ、ここにいた!ひっさしぶりだね、セリア。」
「・・・・・・あ!・・・え!?・・・・まさか・・・・シキ?」
「そうだよ!やっぱあの噂ってほんとだったんだね。」
シキヴェリア=ネイデンリール。彼はセリアの幼馴染だ。シューディレンの隣の国のアルステンデスの王子でもある。
「なんでお前がここに居んの?」
「俺の父さんがさ此処の王様に用事でさ。俺はただついてきただけなんだけど・・・ちょっと確かめたいこともあったし・・・ね。」
そういって、シキは紫色のきれいな瞳を細めてニッと笑った。アルステンデス人は紫色の瞳に銀色の髪の毛が特徴だ。
「確かめたいことってなんだよ?」
「最近さ、うちの国でもちょっとした噂が飛び交っててね、それが・・・その・・・シューディレンの王子が此処に嫁いだっていう噂でさ・・・・。王子ってだけだから、セリアかソランさんかわかんなかったんだけど・・・此処にいるってことは・・・セリアがなんだ。」
「そ。俺ここに嫁ぐことんなってんの。でも、まだ俺はここに嫁ごうって気はしてないからなぁ・・・。」
「・・・・・・・・此処の王子ってどんな人?」
「は?そんなこと知りたいの?」
「うん。なんとなくだけどさ・・・セリアの夫になる人はどんな人なのかなぁって・・・。」
「夫じゃねーし。なりもしねーし!」
「えー・・・いいじゃん、教えてよ。」
「あいつは・・・よくわかんね。」
「なにそれー。」
「だってほんとのことだし。冷たいし、横暴だし、譲ることなんかしないしさ・・・でもこの前・・・俺のことかばってくれたり・・・兄貴たちが死ぬときに立ちあわさせてくれたんだ・・・あれには感謝してるけどな・・・ははは・・・・。」
セリアの笑い顔に、シキは顔をしかめた。
「そんななら・・・うちに来ればいいのに・・・。」
「ん?シキ、なんか言った?」
「なんでもないよ。とりあえず、元気そうでよかった。セリア、お兄ちゃんっ子だったから、ソランさん亡くなって壊れちゃうんじゃないかって思ってたから・・・心配したよ。あれから連絡ないしさ、俺幼馴染だって思われてないの?」
「思ってるさ。この世でたった一人の幼馴染だろ?今となっちゃ、俺の昔を知ってる数少ない人の一人だ。もう・・・・みんないなく何のは・・・・嫌だな・・・・。母さんも、父さんも、ソラン兄貴も・・・みんな俺を・・・俺を置いてくんだ・・・・。」
やば・・・なんか涙でそう。せっかくシキが来たっていうのに・・・うれしいはずなのに・・・なんで・・・・。
そんな状態で、思わず顔をうつ向かせていたセリアのことを、シキは優しく抱きしめた。
「シ・・・・キ・・・・?」
「たまには俺のこと頼ってよ。俺は幼馴染なの。昔っからの付き合いいだよ?たまには幼馴染を頼りなよ。」
「ん・・・・ありがと・・・。シキ・・・・。」
「何?」
「お前は・・・何があっても・・・俺のいる世界から・・・いなくなんないよな?」
「うん。」
「遠い遠い・・・あの世に・・・いかないよな・・・?」
「セリアが逝ってから逝くよ。」
「縁起でもねーよ・・・それ・・・・。じゃ・・・・もし・・・もし俺が・・・此処に嫁いだら・・・シキはどうする・・・・?」
「え・・・・?」
「もしもの話だから・・・そんな驚くなって・・・・。」
「・・・・・・・・・わかんない。」
「そか・・・シキ・・・・会えてうれしかった。また来いよな。」
「たまにはセリアも来てよ。」
「出れるようになったらな。」
「そうか・・・。うん、じゃあまた来る。」
久しぶりに、セリアは安心というものに触れた・・・・。
安心して心穏やかになったセリアの頭の上で、シキが悔しそうに顔をしかめて眉間にしわを寄せながら、城をにらみつけているとは知らずに。
シキ君登場。
お察しの言い方は気づかれましたでしょうね・・・シキ君はセリアのことが好きです。(これここに書いていいんでしょうか・・・)
つまりはクロウのライバルになる人です。