第七話 繰り返しの日々 Ⅰ
幸せな一日を過ごしたぼくは、その日を基準に同じような日々を過ごしていた。
毎朝起きてまず考える事。
それはきみの待ち伏せを成功させる事だ。
ただこれがなかなか上手くいかない。
そもそも朝起きるのがそんなに得意じゃないから、きみよりも早く学校の最寄り駅に着けない。
早く起きる努力だけはどうしても出来なかった。
そこでどうしたら上手くいくのか作戦を練った。
部活終わりの帰り支度をしている時、一つ良い作戦を思い付いたから実行する事を決意した。
わたしは正直退屈な日々を暮らしていた。
と言っても初めは凄く楽しかった。
二人きりのエレベーターでのあの空間。
それすらドキドキしていたし、登下校の楽しみになっていた。
付き合って次の日なんて凄くドキドキしたし、その影響でちょっと口を滑らせた事もあった。
ただそれ以外でドキドキする事は無かった。
付き合ってからどのくらい経っただろうか。
一ヶ月……?二ヶ月……?
それだけ時間が経ったように感じたけど実際は二週間経たない位だった。
そんな事を部活終わりに先輩の事をいつもの下駄箱で待ちながら考えていたら、こちらに向かって走って来る足音が聞こえた。
先輩だった。
先輩はかなり息を切らした様子で口を開いた。
「ハァハァ。いつも早いね」
「バド部は長引く事あんまり無いんですよね」
「それにしても早いから、少しでも早く俺に会おうとしてくれているんだろうなって、思ってサッ」
正直冗談なのかは分からないけど、かなりイタい発言を先輩はボケ風に言う人だ。
そして先輩はおそらくイタい発言だと思っていない。
それがまたイタいなと思いながらわたしはいっつも受け流している。
そんな事を考えながらわたしは反応した。
「それもありますーフフ」
最近よくこういうノリできみと喋るようになって、正直凄く居心地が良いし、反応もそんなに悪くないなと思いながらいつも喋っている。
今回のも反応は良さそうに感じた。
ちょっとした余韻に浸りながらぼくは口を開いた。
「帰ろっか」
「ですねー」
【当たり前になった宵の明星】
そんな時。二人は学校を後にした。
先輩はいつも帰り道でわたしに気を遣っているのか、わたしの自分語りを引き出そうとしている。
今日も先輩が先に口を開いた。
毎日同じ質問だ。
「今日はなんか良い事あった?」
良い事がある日もあるが今日は特に無かったからわたしは素直に答えた。
「無かったです」
「今日は無かったんや」
「でも先輩と帰れる事が一番良い事です!」
これはわたしの本心の声だ。
「そうっしょー」
「フフ」
少し間が空いてから先輩は口を開いた。
「今日俺はめっちゃ良い事? と言うか凄い事あったんだよね! 体育の授業で跳び箱だったんだけど、十段跳べたんだっ!」
正直どうでも良いなと思いながら答えた。
「凄いですね!」
「いやあみんな十段は跳べてなかったから唯一なんだよねっ」
「そうなんですねー」
かなり自慢げに語られたから素朴な返答になった。
その後も先輩は跳び箱の話を続けて、気付いたら学校の最寄り駅にあるエレベーターに着いた。
今日は他にも人が居るエレベーターに乗る事になった。
見た目、高校生の男性一人と一緒の空間。
【男性が居るエレベーター】
男性が居る時は、なるべくその人からわたしを遠ざける様な立ち位置に先輩はする。
この守ってもらう感じ。わたしは本当にかっこいいといつも思っていた。
エレベーターの扉が開くと、最後に二人で降りる。
ただ同時だとあの時のように、ぶつかってしまうから必ず先輩は、エレベーターに誰も居ない事を確認してからわたしを先に降りるように促す。
この時、必ず先輩は開くボタンを押している。
「先に降りて良いよ」
「ありがとうございます」
その後改札を通るまで二人は無言だった。
改札を通った後、このままだと直ぐに帰る流れになりそうだと思い、咄嗟にぼくは口を開いた。
例の作戦だ。
「明日の朝待ち合わせ時間設けない?」
「今までそんな事して無かったですもんね。是非設けましょう」
「キリよく八時とかどう?」
「少し遅いですけど良いですよ」
作戦で言う前段階は突破できた。
「そしたら八時待ち合わせで一緒に登校しよう」
「分かりました。また明日!」
「うん!明日!」
そう言ってお互いに手を振って二人はホームに向かった。




