第五話 きみの涙
ぼくはずっと考え事をしていた。
帰りの電車、そして帰宅して寝床に付くまでその考え事は続いた。
それはきみの涙の事だ。
もちろんきみと付き合えた事はとても嬉しかったが、涙を浮かべる理由が分からなかった。
ぼくは色んな人と付き合ってきたけど告白を受けて、涙を浮かべてきた人は居なかった。
そんな経験が無かった。
結論、一日中考えても分からなかった。
ただひとつだけ確かな事がある。
きみが彼女になった事だ。
それをかみ締めながら眠りについた。
わたしは電車に揺られながらとても動揺していた。
まるで電車の動きに合わせて、心も揺れるかの様なそんな動揺具合だった。
一日を振り返ろうとわたしは思った。
まずは今朝だ。
いつもと変わらない景色で登校していた。
そしたらいきなり先輩が現れた。
開口一番、なんて言っただろう。
「昨日ぶり」と先輩は言った。
その後だ。
「髪飾りで気付いた」確かにそう先輩は言った。
『そんな事があるのか』
昨日のやり取りで、髪飾りを注視する素振りなんて一切感じなかった。
なのに先輩は覚えていた。
当然その髪飾りがわたしにとって、どれだけ大切な物なのか先輩は知らない。
それでも先輩に気付いて貰えるきっかけになったのが、この髪飾りで凄く嬉しかった。
わたしのあの笑顔はその嬉しさのあまりに、零れたものだった。
そしてこの髪飾りを今まで以上に大切にしようと心に誓った。
気付いたら実家の最寄り駅に着いていた。
外に出て好きな夜空を眺めながら髪飾りに触れた。
帰宅してからは部活終わりの事を寝床で振り返る事にした。
と言っても告白された事で他の事の記憶がなかった。
正直告白されるとは思ってなかった。
まだ二回喋った程度だったから普通に考えたら有り得ないし、承諾したわたしもわたしだ。
でも元々気になってた。と言うか好きだったから断る理由がわたしには無かった。
そこでなんでか自分でも分からない涙が少し出てきた。
嬉し涙だ。
その嬉し涙が先輩にバレそうになって慌ててホームに向かった。
流石に慌て過ぎて違和感しか無かったと思う。
思い返したら恥ずかしくなって布団にくるまっていた。
気付いたら眠りについていた。
二人の一日が終わった。
そして二人にとって幸せな日々の始まりだ。




