第四話 火曜日の告白
火曜日の朝を迎えた。
ぼくは、緊張して珍しく一睡も出来なかった。
いつも通り支度を終えて、家を出た。
両親は、共働きでいつもぼくが家を出る頃には居ない為、誰も居ない家に一言。
「行ってきます」
当たり前だが、返事が返ってこなかった。
といっても、ほとんど行ってきますの挨拶なんてして来なかった。
でも、今日に関してはいつもとは違う。
気を紛らわせる為の一言だった。
家を出てから、学校の自分の教室まで半刻だ。
半刻、いつも通りの動き。
家を出て、家の最寄り駅に着いた時。
ふと、考えた。
『いつも通りの動きだと、鉢合わせするかも?』
一緒に登校出来る可能性が、少しでもあるならそれで良いじゃないかと思った。
一方で、鉢合わせしないように登校する選択もあるのでは無いかと思った。
圧倒的に、考え過ぎだ。
ただ、この選択肢は今後に響くと確信した上で、少し
考え込んだ。
どうして、今後に響くか、それはシンプルだ。
告白するタイミングを、間違えてしまうリスクがあるからだ。
例えば、ここで鉢合わせる選択をしたとして、実際に鉢合わせた時。
登校する一刻の間に、告白したとしよう。
雰囲気が、台無しになってしまうのが目に見える。
そして、告白も失敗に終わるかもしれない。
「そんなのは絶対に嫌だ」
気付いたら、家の最寄り駅のホームで電車を待ってる人が居る中。声を出してしまった。
「しまった……」
嫌すぎて、つい声を出してしまった。
幸い、周りの人達は、イヤホンをしたりしていたから気付かれていなそうだった。
安堵しながらも、昨日の告白計画を思い返した。
一つ大事な事が、抜け落ちていた。
そう、どうやってきみと宵の明星に会うかだ。
会う約束をした訳じゃない。
そこで、いつも通りの動きにする事を決心した。
「よしっ!」
つい、また声が出てしまった。
ただ、タイミング良く、乗る電車が来てその声は掻き消された。
その電車に乗り込んだ。
乗り込んでからは、どうやってきみと話をしようかと考えるばかりだった。まるで、きみと鉢合わせるのが確定してるかのように。
気付いたら、学校の最寄り駅。
昨日、きみと別の方面に歩いた改札口に着いた。
その改札口で、周りを確認した。
自分と同じ制服の学生が、憂鬱そうに学校に向かってるのを確認した上で、きみはいなかった。
『ついてない』
そう思った。
今日は、ついていて欲しい日だった。
ちょっと俯きながら学校に向かっている道中だ。
昨日見た髪飾りをしている一人の女子が、ぼくの少し前を歩いていた。
『きみであれ』
と心で願いながら、思わず走って確認しに行った。
きみだった。
「あ! 昨日ぶり!!」
つい勢いが、抑えきれず圧が強めになってしまった。
「あれ、先輩じゃないですか!」
「たまたま後ろ歩いてて、髪飾りで気付いたから声掛けたー」
「いきなり過ぎてビックリしましたよー」
笑顔がとても良い顔で、声をかけてよかったとぼくは安心した。
「いつもこの時間なの?」
少し考えた様子だった。
「んー日によるんですよねー」
ちょっと誤魔化されたようにと感じた。
「まあ日によって色々変わるよねー」
「そうなんですよー」
あれ、話が続かない。
少し、焦ったが無理に話を続けるのも良くない。
ここは、一旦様子を見ようと思った。
するときみは、口を開いてくれた。
「あ、ごめんなさい。あんまり、普段仲良い人以外の人と喋らないんです。だからラリーするのが下手なんですよね。」
『そら、まだ仲良い人じゃないよな……』
と心で思った。
「あ!そうなんだねー。でも仕方ない! 少しずつ慣れていけばいいと思う!」
良い事言えたと思った。
「ありがとうございます! 先輩って、優しいですね」
「いいえー! 嬉しいー」
「今日は、朝から良い事が、起きてくれてるから凄く気分が良いです!」
「俺も! 良い事起きてめちゃ気分良い。目覚めが良い時よりも気分いい気がするっ!」
きみの「良い事」に該当された嬉しさから過剰に反応してしまった。
「先輩って面白いんですね。フフッ」
「そんな事ないよー」
そんなやり取りをしながら歩いていたら、正門の前に着いていた。
そろそろ切り出そうと思って口を開いた。
「今日って部活ある?」
「ありますー」
「良かったら部活終わり会わない?」
少し間が空いた。
「……良いですよ!」
「良かった! そしたら、部活終わりに、俺の下駄箱でまた会おうー!」
「分かりましたー! そしたら部活終わりに!」
『良かったー』心の中で、ぼくは凄く安堵した。
部活終わりまでぼくは、全く落ち着かない一日を過ごした。
まだか、まだかと時計の針を確認しては、全く進んでいなくて、こんなにも早く時間が過ぎて欲しいと思う事も今後無いと思った。
そして、ぼくの部活が終わり、帰り支度を終えて颯爽と下駄箱へ向かうときみが居た。
若干の夜の暗闇に、校舎の明かりに灯されているきみを遠目で見た時、昨日と同じ感覚に陥った。
少しぼーっとしてると声が聞こえた。
きみの声だ。
「……先輩ー!」
「ごめんー。ぼーっとしてたー」
「さては先輩、この時間帯弱いんですね。フフッ」
「そうかもー?」
「会おうって、言ってましたけど、ここで話していく感じですー?」
少し間を空けて考えた。
このタイミングで、告白して気まずい空気になっちゃうのはおかしいと思って口を開いた。
「んー折角なら一緒に帰りながら話したいなー」
「そしたら一緒に帰りましょう! ちなみに、何か話がある感じですかー?」
あ、まずいと思った。
でも、話題を用意してたからなんとかなった。
「宵の明星について、少し語りたいなって思って!」
「なるほど! タイミング的にもぴったり!」
不自然な感じにならなくてひと安心した。
「あの後、少し調べたんだけど、金星って事以外にも色々出て来てさ。特に、一番星って言葉に惹かれたんだよね。」
嬉しそうな表情で、きみは話し出した。
「凄い! 調べたって言うのが、嬉しいなって思ったんですけど本当に、調べてみないと分からない言葉ですもんねー!」
続けてきみは、口を開いた。
「それに、一番星って言葉に惹かれる。先輩のセンス!抜群です!」
『本当に好きなんだな』と心の中で思った。
「ありがとう! ちなみに、なんで夜空が好きなの?」
「そこまで深い理由が、ある訳でも無いんですけど落ち着くんですよね。見てると」
「あーじゃあ星とか、詳しいって感じでも無い?」
「ただ好きって感じなので、詳しいのかは分からないんですよねー」
知識をひけらかす訳じゃなく、謙遜するような感じが、また良いなと感じながら返事した。
「そんなこと言っても詳しそうー!」
気付いたら、もう学校の最寄り駅が近くにあり、時間の進むスピードが倍に感じた。
「あーもう駅着いちゃいましたね」
全くその通りだなと思い、返事した。
「早いよねー」
そう言いながら、改札口に向かった。
そして、この時だなと思った。
場所は、改札を通る前だった。
そのまま帰る流れにならないようにと思ったからだ。
「ちょっと、いい?」
「はい?」
少し間を空けて、ぼくは口を開いた。
「本当に、急なんだけど俺と付き合って欲しい!!」
だいぶ、間が空いてからきみは言った。
「本当に急ですね……」
続けて、君は言った。
「でも、こちらこそ! お願いします!」
正直、反応的にダメだと思ったからびっくりした。
「ほ、んとうに? 良いの?」
「間が空いちゃったのは、ごめんなさい。でも本当の気持ちです!」
「全然良いよ! やった! ありがとう!」
こんなことが、合っていいのだろうか流石にここまで嬉しかった事は、人生単位で見ても無い経験だった。
そして、きみは少しばかりの涙を顔に浮かべてる様に見えた。
咄嗟に声をかけそうになったが、気にしすぎてもだめだと思いやめた。
そして、二人で改札口を通った。
話さないで、二人は別の方面に向かった。
咄嗟にぼくが、言った。
「じゃあねー!」
きみも、続けて言った。
「はい! また!」
こうしてぼくときみの交際が始まった。




