よんひき
久しぶりに書いたので自分の書き方を忘れて・・・いる、ような。
誤字脱字、「ここおかしくない?」というところがありましたら教えていただけると嬉しいです。
夢の中で起きたら豪華なベッドにいてメイドに笑顔のまま見つめられ、くしゃみを拝まれた。
この夢ではくしゃみをすることをありがたがられるのか。みんなこよりでも持てばいい。
現実ではありえない、さすが夢。カオスだ。ユウは引きつつも感心した。
そんなユウの内心はまったく表に出ていないため、侍女は自分がかなり引かれていることには気づかなかった。気づいていたら世を儚んでいたかもしれない。妙な人物に妙だと思われる自分に絶望して。
侍女は一瞬前まで拝んでいたことなどなかったかのように(実際はしっかり見られていたが)、爽やかな笑顔で挨拶をした。
「おはようございます。どこかお身体の方で不調はありますでしょうか」
返事はいつまでたっても返ってこなかった。
侍女はとりあえず早いところ宰相にこの客人をパスしたいと思っている。
が、そうもいかない事情があった。
なんでもこの客人は倒れた拍子に頭を打った可能性もあるようで、身体の異常がないかをしっかり確認するように宰相サマ直々に言いつけられているのだ。上級侍女とはいえ宰相程の大物から直接命じられるなんて滅多にない。
(ひゃっほーいこれで玉の輿へ一歩前進!とか浮かれていた自分を殴りたい!これだったら「ふぁーすとこんたくととくべつへん~あいてのきもちになってみよう~」でも読んでおくんだった!!)
「もしかしたら王子たちが異世界からうっかり召喚してしまった半廃人で無反応で無口な被害者をお世話することになるかもしれない。」なんて考えて事前に準備までするようだったら立派な電波だ。
幸い真実を知っているものはユウを含めて誰一人いない。
「ちょっと会話の不自由な客人のお世話を・・・くらいは考えておくべきだった。」と少しオブラードに包まれた事実について侍女は反省していた。
――「あいてのきもち」になるヒントが書かれていたに違いない本が手元にない今、自力でこの場を乗り切らねば自分に明日はない!!
――そう!とにかく「あいてのきもち」になり、この方の考えていることを全力で把握するの!!
悲壮感あふれる決意を胸に、侍女はもう一度ユウ挑みかかることにした。
・・・もし第三者がいたら、明後日の方向に突っ走りそうな侍女に「ちょっと落ち着け。」と言ってくれたかもしれない。
ビークール。深呼吸しろ、と。
誰も言ってくれなかったため、焦ったまま明後日の方向に侍女の思考は走り出してしまった。
ドン引きして侍女からそっと目を逸らしたあとは低血圧気味でぬぼーっと虚空を見ている・・・というか半目のまま寝そうなユウが侍女の熱意に燃える眼差しに気付かなかったことは――双方にとって幸いだったのかもしれない。
-----------------------------------------------------------------------------
先ほどユウを診察をさせた医者は、たんこぶくらいで特に目立つ傷はないと言っていた。
「倒れたのはおそらく貧血だろうから、すぐに目が覚めますよ。」とも言っていた。
診断結果は「異常なし」。
・・・でもこの反応のなさって異常なんじゃない?
侍女が挨拶をした後も挨拶をするわけでも起き上がるわけでもなく、ぼやけた視線を宙に向けるだけ。「お体の不調」もあるのかないのか分からない。
笑顔のまま自分のこめかみを冷や汗がつたっていくのをただ侍女はひたすら耐え続けながらユウを観察した。
口元は笑顔のまま、目をカッと見開きまつ毛の震えさえ見逃さない!とでもいうかのように凝視している侍女ははっきり言ってホラーだが、侍女は大真面目だった。
大真面目に空回っていた。
ユウの世話をし、宰相へ起床を報告する・・・という仕事から飛躍した「あいてのきもちになる」という任務を自ら上書き更新した侍女は、お客様を不作法にじろじろ見てはいけない、という初歩の初歩を頭からすっ飛ばすほど必死にユウを見つめた。
上級侍女になるまでにも、いろいろな客の対応をしている。
上は貴族から末端とはいえ王族も、元老院や各国の使者を目にしたこともあった。軍部に所属する者たちや料理人、洗濯女たちに馬番、城を訪れる商人、旅芸人に踊り子や吟遊詩人上げていけばキリがないほど様々な立場や人種の者がいた。気難しい者もいれば朗らかな者もいたし、不機嫌に怒鳴りつける者もいれば笑って失敗を流してくれる者もいた。うっかり情事や変な集会を見てしまうこともあった。経験と実績を買われて上級まで上り詰めた誇りと情熱が侍女魂を駆り立てていた。
――さぁ私!考えるのよ!!国賓級のVIPで内密に城を訪れて、なんでかぶっ倒れて頭を打って、目が覚めてからくしゃみをした後に無表情で宙を見つめたまま動かないお客様のきもちを・・・!!
わかるわけなかった。
ユウがやっと覚醒して、腹の虫が控えめに主張するまでの小一時間、静寂とそれを上回るカオスが部屋を満たしていたのは言うまでもない。