49.戦略会議①
王城にいる法衣貴族、地方貴族達は、シルベルク宰相によって大広間に集められ、そこで国王代理であるローランド兄上からの勅命を伝えられた。
近頃になって城内では、エルファスト魔法王国との衝突が噂されていたので、貴族達に大きな動揺はない。
しかし戦準備が現実を帯び、王国が勝てるかどうか、不安の色を濃くする者は多かった。
広間から解散すると、貴族達は自分達の部署へと戻り、戦に向けての指示を出していく。
それにより王宮は、一気にエルファスト魔法王国との戦に向けて進んでいった。
そして王宮騎士団の兵達により、王国内の全ての地方貴族達へ伝令され、王国内は瞬く間に戦の色へと染まっていった。
そんな中、クリトニア王国の外交官とエルファスト魔法王国の使者との交渉が行われ、王国側はアーリアの保護を継続、彼女の身柄を魔法王国に引き渡すことを強く拒否した。
その回答に魔法王国の使者は、魔法王国と敵対すればクリトニア王国は多大なる損失を被るだろうと、脅迫めいた言葉を述べ、それを受けて王国側の外交官は戦も辞さずと応え、交渉は決裂となった。
それから二十日後、エルファスト魔法王国からの使者が来訪し、クリトニア王国へ宣戦布告する旨を伝えてきた。
ローランド兄上、エミリア姉上、アデル兄上、僕、シルベルク宰相、バンベルク王宮騎士団長、リシリア近衛兵団長、警備兵団長の八名は、城内の会議室に集まり、魔法王国への対応を協議することになった。
それぞれに円形に組まれた席に座り、ローランド兄上を静かに見つめる。
ローランド兄上は一人一人へ顔を向け、大きく頷いてからゆっくりと言葉を吐く。
「この度、エルファスト魔法王国から宣戦布告の通達があった。我が王国としては一歩も引くことなく、戦に望むつもりだ。しかし、その選択は魔法王国と全面戦争へ進むものではない。そのことを踏まえて、戦に向けての策を話し合ってほしい」
ローランド兄上の言葉を聞いて、室内はシーンと鎮まる。
その中、 バンベルク王宮騎士団長が椅子から立ち上がった。
「魔法王国との全面戦争となれば、王国内の諸侯が持つ私兵を総動員する必要はあるが、魔法王国も初戦から全面戦争に打って出ることはないだろう。となれば、王国西側の諸侯には、いつでも出兵ができるように準備をさせ、初戦はまず王宮騎士団が王国軍として、一当たりするのが妥当な線でしょうな」
王宮騎士団の兵数は約一万。
常日頃は半分の五千人が戦に動員され、残りの半分の五千人は王都と城を警備する。
しかし、その気になれば一万人の兵を総動員することができるんだ。
エルファスト魔法王国がどれくらいの規模の戦争を想定しているかは不明だけど、敵兵の数が一万人以内であれば王宮騎士団で対抗できると読んだんだろうな。
悪くない案だと思う。
バンベルク王宮騎士団長が席に座ると、隣のリシリアがスッと立ち上がった。
「兵数はそれで事足りるとして、問題があるとすれば、魔法王国の宮廷魔導士団と王宮魔法士団でしょう。この両団の遠距離魔法攻撃で、本陣を急襲されれば危ういかと。我々、近衛兵団も参戦し、本陣の盾となりたく思います」
エルファスト魔法王国には二つの魔法士兵団がある。
宮廷魔導士団は、魔法王国が最強を誇る兵団で、魔導士で構成されていて、魔法陣を用いた強力な魔法攻撃を得意としている。
そして時には集団詠唱と魔法陣を用いた大規模魔法を使用することでも知られている。
噂では都市一つが壊滅するほどの威力があるとか。
それほどの大規模の魔法を行使するには、時間も人数もかかるから、戦などでは滅多に使われたことはないらしいけどね。
宮廷魔導士団の兵数は、全員が魔導士ということもあり百人にも満たない。
王宮魔法士団は魔導士未満の魔法士が集められた兵団だ。
それほど強力な魔法を放つことはできないし、あまりに離れた距離からの魔法攻撃はできないが、兵数は五百人を超える。
例えて言うなら、宮廷魔導士団の魔法攻撃は大砲クラスで、王宮魔法士団の魔法攻撃は拳銃クラス。
どちらにしても、魔法兵団を持たないクリトニア王国にとって、厄介な存在だ。リシリアが警戒するのも頷ける。
リシリアが席に座ったのを確かめて、僕はゆっくりと椅子から立ち上がり、机に両手を置いた。
「僕達王家はエルファスト魔法王国との衝突を予期して戦の準備してきました。この度、新しい兵器として魔導車を改造し、魔導戦車を作製しています。現在、魔導車の総数は六十台。バルドハイン帝国への牽制として、王国の東側に二十台を配備、魔法王国との初戦には四十台を当てる予定です」
僕の言葉を聞いて、室内がどよめく。
魔導戦車のことは、王家の兄姉とシルベルク宰相しか知らなかったから、他の者達が驚くのも無理はないよね。




