表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/51

44.魔法陣について②

僕の部屋を訪れていたエミーは、キャタピラを装着した戦車のデザイン画を持って、工房へと帰っていった。


それから三日後、工房ではドワーフ達が魔導戦車の作製を始め、僕はローランド兄上とエミリア姉上に魔導戦車のことを説明した。


話を聞いたローランド兄上は悲しい表情をしていたけど、理解してくれたようだ。


僕と話し合ってすぐ、王宮騎士団から兵を選び出したアデル兄上は、試作品の魔導車を使用して、兵に魔導車の操作方法の特訓をするため王都周辺の森へと出発していった。


兵達が魔導車の操縦に慣れれば、森で魔獣を狩って、新鮮な血を運んできてくれる予定となっている。


アーリアを城に保護してから二週間が経った。

その間に、十組を超える暗殺者が城に潜り込み、アーリアを殺害しようと試みたという。


しかし、護衛をしているバンベルク騎士団長とリシリア近衛兵団長の手によって、暗殺は未然に防がれたらしい。

部屋に上手く忍び込んだ暗殺者もいたらしいが、その者達はオーランの手によって葬られたという。


そのことを僕は全く知らなかったけど、オーランが部屋に遊びにきた時に話してくれた。


僕が知ると心配すると思って、ローランド兄上もエミリア姉上も教えてくれなかったのかも。


暗殺者がこうも城に潜り込んでくるということは、城でアーリアを保護していることが、既にエルファスト魔法王国に知られていると思っておいたほうがいいだろうな。


それから一週間後、アデル兄上が城へと戻ってきた。


魔導車の後ろの荷台には、魔獣の血の入った樽が積まれている。

魔獣を討伐して城まで血を運ぶのに二日かかったという。


それぐらいの日数なら、まだ血は新鮮だよね……たぶん……


アデル兄上に頼んで、樽をアーリアの部屋まで運んでもらった。

僕の部屋を使いたかったんだけど、侍女にダメと言われたから仕方ない。


アーリアの部屋へ向かうと、なぜかオーランとアデル兄上が睨み合っていた。

アーリアはオロオロして僕に助けを求める。


「早く二人を止めてください!」


「いったい、どうしたの?」


「部屋に入ってきたアデル殿下が、オーランさんに腕試ししようと言い出して」


なるほど、アデル兄上は生粋の武人だ。

一目見てオーランが強者と判断したんだろうな。


僕は盛大にため息をついて、アデル兄上へ声をかける。


「僕の友達に喧嘩を売るのはやめてね。どうしてアデル兄上がここにいるの?」


「ああ、ここに樽を運んできたんだ。魔導士が使う魔法陣にも興味があったからな。そしたら、こんな面白い奴がいるじゃねーか。ちょっと相手をしてほしくなるだろう」


「とにかく、ここで乱闘騒ぎはダメだよ。もし、そんなことをすれば、シルベルク宰相に説教してもらうからね」


僕の言葉を聞いて、アデル兄上はイヤそうに顔を歪める。


アデル兄上は好奇心旺盛だもんな。

魔導士に興味を持つのも頷ける。


一応、アデル兄上とオーランには釘を差したから、騒ぎを起こすことはないだろう。


僕はアーリアへと向き直り、ここへ来た目的を彼女に説明した。

話を聞き終わったアーリアはニッコリと微笑む。


「実際に魔法陣を描くところを見たいということですね。魔獣の新鮮な血もありますし、お安い御用ですよ」


アーリアはゆっくりと棚からガラスの瓶を取ると、樽へと歩いていく。

そして樽の栓を抜いて、魔獣の血を瓶へと注ぎ込んだ。


それから、その瓶を机に置いて、瓶の中の血を使って羊皮紙に魔法陣を描き始めた。


アーリアは懐から取り出した自分専用のペンを使っている。


以前に彼女から聞いたことだけど、そのペンはミスリルを加工したモノで、魔法陣を描く時にはペンを通じて、自分の魔力を魔法陣に注ぎ込むらしい。


しかし、定規もなしに、見事に円を描けるなんてスゴイな。

魔法陣はちょっとでも歪んだり、ミスをすれば発動しないというから、アーリアの集中力の凄まじさがわかる。


魔法陣を描き終わったアーリアが口の中で何かを呟いた。

すると魔法陣の上に小さな炎がボンと現れる。


「今回は火炎魔法の基礎を描きました。大規模な魔法に使用する魔法陣は大量な魔力が必要となります。通常は、自身の魔力でそれを補うか、魔道具のように魔石を用いて補うかして魔法陣を使用します」


「わかった。それで何か呟いたようだけど?」


「あれは魔法陣を起動するための詠唱です。魔法陣を描いてすぐに魔法が発動すれば危険ですからね。魔法陣には必ず起動の鍵となる詠唱が必要なんですよ」


なるほど……魔法陣を使うためには起動の詠唱が必要なのか。


あれ? 何か引っかかるぞ。


「魔道具を使う時、いちいち詠唱を呟くのを見たことがないけど? あれはどういう仕組みなの?」


「それは魔法陣を描く時の魔力の量を調整するんです。それで起動の鍵となる魔法陣の部分に魔力が通ると、魔法陣から魔法が発動する仕組みです」


魔法陣を描く時の魔力量を調整するって……それって素人には絶対に無理だよね。


魔法陣を描くのに魔獣の新鮮な血が必要なことも、最近まで知らなかったし、起動の詠唱句についても初めて知った。


アーリアと出会うまでは魔法陣なんて、分析して描けば簡単に使えるモノだと思ってたけど……


これではクリトニア王国内で魔法陣の技術がなかなか進まないのも頷けるね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ