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35.メルセルク伯爵の自害

このままメルセルク伯爵の別邸に誘拐された子供や少女達を残していくこともできず、僕はオーランに頼んで、城にいるリシリアに連絡を取ってもらうことにした。


しばらく地下で待っていると、一階でドタバタと大きな音が聞こえ、リシリアとオーランの二人が階段を下りてきた。


「呼ばれて来てみれば、いったい何事ですか?」


「オーランから何も聞いてないの?」


「あの無口な少女ですか。イアン、子供、少女、闇市としかしゃべらないんですよ。それでわかれというほうが無理ですよね」


オーランに頼んでリシリアを呼んできてもらったなだけど、無口な彼女を伝令にすれには無理があったかな。


でも、それだけ少ない言葉数で、リシリアと近衛兵達が来てくれたんだから、結果良しだよね。


困惑しているリシリアに、メルセルク伯爵が人身売買の元締めだったことを説明し、まだ邸の地下に囚われていた子供や少女達がいることを伝えた。


既に邸は近衛兵達によって制圧され、邸にいた者は全て捕縛された。


そして、近衛兵達の手によって、二階にあった人身売買に関する証拠は全て運び出され、地下にいた子供や少女は無事に保護された。


もちろん、ベッドの上で気絶していたメルセルク伯爵は、裸のまま縄で縛られ、城の地下牢へと連行されていった。


全てを終えたリシリアは僕とエミリア姉上の隣まで来ると、周囲をキョロキョロと見る。


「私を呼びにきた少女が見当たらないのですが? 彼女にも色々と聞きたいのですけど?」


「オーランは僕の協力者だから、気にする必要はないよ」


「いえ、だからこそイアン殿下との関係が気になります」


え、気にするところは、そこなの!


オーランがいつの間にか姿を消してくれていてよかったよ。

このまま邸にいるとリシリアに目をつけられるとわかったのかな?


僕とエミリア姉上の二人を見て、リシリアは腰に片手を当てて、大きく息を吐く。


「この件については、近衛兵を動かしていますし、メルセルク伯爵も捕縛しているので、シルベルク宰相へ報告しなければなりません。イアン殿下もエミリア姉上も城へ戻ったら、事情を聴取させてもらいますから、覚悟してくださいね」


「お手柔らかにお願いします」


僕とエミリア姉上は顔を見合わせて、力なく笑った。


城にいるリシリアと近衛兵を呼んだ時から、こうなることはわかっていた。


ホントはシルベルク宰相やローランド兄上には知られたくなかったけど、地下にいる子供達や少女達を保護するためには、他に方法がなかったんだよね。


僕とエミリア姉上の二人は、リシリア率いる近衛兵達と一緒に邸を後にして、王城へと戻った。


翌朝、リシリアから報告を受けたシルベルク宰相は激高し、僕達二人は長い説教を受けることになった。


その日の夕方、ローランド兄上に呼び出されて玉座の間へ赴くと、ローランド兄上、シルベルク宰相、エミリア姉上の三人が待っていた。


「 シルベルク宰相から詳細は聞いたけど、危ないことをしてはダメじゃないか」


「ローランド兄上、心配をかけてごめんなさい」


ペコリと頭を下げると、ローランド兄上は優しく僕の頭を撫でてくれた。

和んだ雰囲気を、シルベルク宰相は一つ咳をして引き締める。


「メルセルク伯爵が地下牢の中で自害しました。どうやら奥歯に仕込んだ致死性の毒を飲んだようです」


シルベルク宰相はそう言って苦々しい表情を浮かべる。

僕は何を言っていいのかわからず、頭が真っ白になった。


まさか奥歯に毒薬を仕込んでいるなんて、考えてもみなかった。

これは痛恨のミスだ。


エミリア姉上が真剣な表情で、シルベルク宰相へ質問する。


「どこまで尋問でわかったの?」


「直接リシリアが伯爵を尋問したようです。伯爵へ「蜘蛛」の組織の一員かと問い質したところ、自分は「蜘蛛」の構成員の末端だと自白したそうです。しかし人身売買の会場に来ていた者達はただの顧客で、「蜘蛛」の関係者ではないとの言っていたそうです」


「では邸の中にいた者の中に「蜘蛛」の組織に関与している者はいないの?」


「現在、リシリアを中心に、近衛兵によって逮捕者から事情聴取しています。後ほど結果が出るでしょう。ただ「蜘蛛」と関連している者がいるかどうかは、望み薄でしょうな」


シルベルク宰相は悔しそうに両腕をおろして、両拳をギュッと握りしめる。


メルセルク伯爵の自白が真実であれば、邸の中にいた者達の中に、「蜘蛛」そ組織に関係する者はいないことになる。


せっかくカーネルさんやオーランに協力してもらったのに、「蜘蛛」に繋がる情報を得られないなんて、悔しすぎる。


「そう気を落とすな。イアンとエミリアのおがけで、王都で行われていた闇市、人身売買に関わる者達を一網打尽にできるんだから。しかし、もうこんな危険な真似はやめてほしい。お前達二人は王族なのだから、その自覚を持って行動してほしい」


ローランド兄上は僕とエミリア姉上を見ながら、優しく語りかける。


「蜘蛛」については僕達のような王家が関わることではない。

本当なら、王国内にいる各兵団に任せておけばいいのだろうけど……


しかし、組織の危険性を知ってしまったから、黙って見過ごすことはできないよ。

いつか必ず「蜘蛛」の組織への糸口を掴んでやるからな。

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