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26.情報を求めて

僕、エミリア姉上、リシリアの三人は「蜘蛛」の組織についての情報を求めて、カッセル商会の建物を訪れた。


三階の執務室に通された僕は、カッセル会長に情報提供を求めた。

それを受けて、カッセル会長は悩ましい表情をする。


「王国内を行き来する商会や商人達からしばしば「蜘蛛」の組織らしき情報は入ってきます。しかしガセの噂も多く、内容については判然としないものが多いですね」


「それではカッセル会長も「蜘蛛」の組織については実体はわからないと?」


「はい。ただ街々の荒くれ者達が集う闇賭博や、盗品や人身売買を扱った闇市などは「蜘蛛」の組織が絡んでいると言われています。街々で縄張りを張っている荒くれ者達であれば、組織について、もっと詳しい情報を持っているかもしれませんね」


クリトニア王国でも奴隷制度は存在する。


借金をした者や犯罪を犯した者が奴隷になることは知っているが、実際に奴隷と会ったことはない。


人身売買ということことは幼い子供達や、うら若き女子が誘拐されて売買されているということだろう。

もし、僕とエミリア姉上もあのまま捕まっていたら、組織に売られていたかもしれない。


なんの罪もない子供や女子が犯罪に巻き込まれるなんて許せないな。


そんなことを考えていると、リシリアが僕の表情を見て目を細める。


「ダメですよ。「蜘蛛」の組織については各兵団が管轄いたします。イアン殿下は変な気を起こさないでください」


「でも王国内で犯罪が横行しているのを知って、何も知らなかった振りをして黙っている訳にはいかないわ」


「王家の関わりになる案件ではありません。組織については我々に任せていただきます」


エミリア姉上とリシリアが顔を付き合わせて睨み合う。


僕はリシリアに向けて手の平を見せる。


「うん。「蜘蛛」の組織についてはリシリア達に任せるよ。王家と言っても、僕達がすぐに動けそうにないからね」


「では、私共が「蜘蛛」の組織に関しての情報を集めましょう。有力な情報があればイアン殿下に情報提供いたします」


「よろしくお願いするよ」


カッセル会長の提案に僕はニッコリと微笑む。


その隣でリシリアがゲッソリした表情をしていたけど、僕はそれを見なかったことにした。


しばらくカッセル会長と談笑した後、僕達三人はカッセル商会の建物を後にした。


まだ街を楽しみたかったけど、リシリアにガミガミ言われたので、僕とエミリア姉上は王城へと戻った。


城に帰ると僕達が抜け出したことに気づいたシルベルク宰相とローランド兄上が待ち構えていた。


それから二人の長い説教が始まった。

鬼のような形相のシルベルク宰相も怖かったけど、ローランド兄上の冷たい笑みのほうがもっと怖かった。


僕達が王城を抜け出した翌日、僕は王城の離れにある来賓室へ向かった。


ノックをして部屋の中へ入ると、僕の姿を見てアドルフ第七皇子は首を傾げる。


「イアン殿下が俺を訪ねてくるなんて、いったい何の用だ?」


「王国内に「蜘蛛」という組織の犯罪が横行しているらしいんですよ。それでバルドハイン帝国ではどうなのか知りたくて。アドルフ第七皇子は「蜘蛛」という組織を知っていますか?」


「ああ、「蜘蛛」ならバルドハイン帝国でも様々な犯罪を行っているぞ。俺は直接的にその問題に関わったことはないが、帝城の兵達から話を聞いたことがある。噂では国々をまたぐ組織らしいが、その実体は掴めていないらしいな」


やはりバルドハイン帝国でも「蜘蛛」は存在してるんだな。

帝国でも組織の全貌については把握できていないようだね。


アドルフ第七皇子の言葉を聞いて、僕は肩を竦める。


「組織について情報を集めようと思うんですけど、どれも不確かな噂ばかりなんですよ」


「なぜ「蜘蛛」に興味を持ったんだ? 王家が関わることではないだろう」


「王都に遊びに出かけた時、僕とエミリア姉上が荒くれ者達に襲われたんですよ。それで警備兵の詰所で「蜘蛛」の組織のことを聞いて、ちょっと興味が湧いたので」


「エミリア殿下が襲われただと! 今すぐ捕まえた者達の所へ俺を連れて行け! 俺が直々に首をはねてやる!」


エミリア姉上が被害に遭ったと知って、アドルフ第七皇子は椅子から立ち上がって激高する。


目が血走っていて、完全に本気でキレてる。

どうやらアドルフ第七皇子姉上に惚れているのは本当のようだね。


これからはあまりアドルフ第七皇子に、姉上が危険に遭ったことは言わないでおこう。


興奮したアドルフ第七皇子は決意した表情で片手を広げる。


「これから帝城に向けて書状を書こう。帝国の兵に命じて、「蜘蛛」の情報をかき集めてやる。必ずが組織を追い詰め、壊滅させてやるぞ。愛しのエミリア殿下に危害を加えたことを、死ぬほど後悔するがいい」


アドルフ第七皇子の体から負の黒いオーラが見えるようだ。

これは相談してはいけない人に相談してしまったかも……

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