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16.エルファスト魔法王国との交渉

魔導車の試運転を行ってから二週間、僕とエミ―は話し合いを繰り返し、やっと商品となる魔導車を完成させた。


試運転の時に使った試作品の魔導車は金属製の車だったけど、それだと戦などで悪用される危険があるから、車体のほとんどを木製に変更。


その他にも、サスペンションなどの精密な部品については、後々に改良できるように性能を劣化させたり、部品を取り外したりした。


簡単に言えば、性能を馬車に近づけたわけだ。

その方が魔導車を作る経費を抑えることができるからね。


僕達が木製の魔導車を作っている間に、エミリア姉上とアデル兄上、王宮騎士団から選抜した兵士の数名には、試作品の魔導車を使って車の操作に慣れてもらった。


それから一ヵ月後、ドワーフ達の工房では毎日忙しく魔導車が組み立てられ、五十台の木製魔導車が完成した。

エミリア姉上とアデル兄上は王国内の有力貴族へ魔導車を売り込むため、魔導車二十台と共に王都を出発していった。

もちろん故障した時のことを考えて、修理のできるドワーフにも同行してもらっている。


魔導車作りは、エミーと工房のドワーフ達に任せ、城の自室でノンビリしていると、部屋に近衛兵がやってきて、ローランド兄上が僕を呼んでいるという。


衣服を整えた僕は、近衛兵と一緒に玉座の間へと向かった。

玉座の間とは、謁見の間とは違い、少数で国王と会議をする部屋のことをいう。


玉座の間へ入ると、ローランド兄上とシルベルク宰相がテーブルに座って待っていた。


「僕を呼び出すなんて珍しいね。何かあったの?」


「魔導車の件なのだが、難航していてな」


魔導車について、クリトニア王国の外交官とエルファスト魔法王国の外交官の間で商談が行われている。


たぶん魔法王国の外交官が色よい回答をしていないのかな?


「何と言ってるの?」


「向こうの外交官は商品を買うよりも、魔導車の設計図を買いたいと言ってきてるのだ。設計図は商品の機密だから売れないと突っぱねてはいるのだがな」


シルベルク宰相は苦々しい表情をする。


エルファスト魔法王国としては魔道具を作る技術には自信がある。

設計図があれば、魔導車を自国でも作れると外交官は考えたのだろう。


自国で魔導車を作ることができれば、わざわざクリトニア王国から購入する必要はないからね。

それにしても強国だからといって、横暴なことを考えるよな。



まあ、買い取った魔導車の車内構造を調べられたら、いつかは魔導車の模造品を作られるかもしれない。

でも、それまでの間はエルファスト魔法王国はクリトニア王国から魔導車を買うしかない。


こちらとしては、わざわざ設計図を渡して、模造品が広まる時期を早める必要はないよね。


「王国としては魔導車の値段を下げて、エルファスト魔法王国から王国へ入ってくる魔道具の値段を下げるように交渉しているのだが、その提案も外交官に拒否されてな」


今、クリトニア王国に入ってきている魔道具の値段は上がっている。

ローランド兄上としては、庶民のことを考えて、少しでも値段を抑えたいのだろう。


しかし、魔道具の値段を下げるということは、エルファスト魔法王国の利益が減るということだ。

向こうの外交官が、そんな提案にすぐに承諾することはできないよね。


それに今の魔道具の値段は、大商会や商人達が勝手に値段を設定したり、在庫を売り渋ったりしていることも大きい。

そんな大商会や商人達の動きを止めることなどできないのも実情だ。


向こうの外交官からすると、エルファスト魔法王国が仕向けたことではないと言い張るだろう。


僕は考えた末にローランド兄上のほうへ顔を向けた。


「交渉を打ち切ればいいんじゃないかな?」


「それでいいのか? せっかくイアンが作った魔導車が売れなくなるんだぞ」


「僕が言いたいのは、国と国の交渉で魔導車を売る必要はないってこと」


僕の言葉を聞いて、シルベルク宰相はポンと手を打つ。


「なるほど、我が王国の大商会を通じて、他国へ売ろうをいうわけですな」


「そう。もともとエルファスト魔法王国の魔道具だって、大商会や商人を通じてクリトニア王国へ入ってきてるのだから、僕達も同じ手法を使えばいいんだよ。大商会や商人達は利益の出る商品が欲しいだけで、商品の設計図が欲しいわけじゃないからね」


「しかし、大商会や商人となると、勝手に利益を上乗せして魔導車の値段を吊り上げることも考えられる。奴等は利益のためなら何でもするからな」


「そこは一応、契約書を交わしておいて、幾つかの商会で魔導車を売らせればいいんだよ。そうすれば、高い値段の魔導車は売れなくなるから、価格は均一になるはずだよ。あまりに逸脱した行為に走る商会があれば、王宮を謀ったとして処罰すればいいだけだからね」


「確かに、その方法なら他国と交渉するより簡単だ。王国内の商会であれば、王宮に楯突くこともないからな」


ローランド兄上は嬉しそうに微笑み、シルベルク宰相は「それでは準備をいたします」と言って部屋から出て行った。

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