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13.瘴気の沼

クライス達に宿に止めてある馬車を取ってきてもらい、ベルドさん、リンメイさん、リアム、ルーネに街の大門で見送られながら、ドワーフ達と共に僕達は王都に向かって出発した。


王都まで向かう街道にある街々で食料と酒を買い込み、街の外で野営をしながら旅を続ける。


大量の酒が飲めることでドワーフ達からは喜ばれ、街に入らないことについての愚痴はなかった。


しかし、毎日のように宴会が続き、クライス達は毎日のように宴会に巻き込まれ、酷い二日酔いが治らないようだ。

王都に着く頃には立派なアル中になってるかもしれないな。


ベアケルの街を出発して一週間後、街道ですれ違う商人達から奇異の目で見られながら、僕達は王都へ到着した。


ドワーフ達は王城へは入れないので、王宮騎士団の訓練所を野営地として住んでもらうことになった。


住む場所が決まるまで不便をかけるけど、大量に酒を用意すれば問題ないだろう。

具体的な道具作りの話しをするため、エミーには王城へついてきてもらった。


僕とエミ―が自室で道具作りについて話し合っていると、扉が開いてエミリア姉上が現れた。


「エルファスト魔法王国をギャフンと言わせられる道具はできそう?」


「……簡単な構造のモノならエルファスト魔法王国の職人に真似されるだろうし。魔石から魔力を抽出する基幹部についてはエルファスト魔法王国の魔法陣には敵わない。なかなか対抗する道具の開発が難しそうだよ」


この世界には魔石があり、その魔石の魔力を原動力として魔道具は動く。

その魔石から魔力を抽出する方法を、エルファスト魔法王国は魔法陣で編み出しているのだ。


その魔法陣は複雑で分析が難しく、我が王国の魔法士では再現できないでいる。

だからエルファスト魔法王国から流れてくる魔道具に頼っているわけ。


この部分さえクリアーできれば、クリトニア王国独自の魔道具を作ることもできるんだけどな。


僕の話を聞いて、ミリーがボソリと呟く。


「魔力伝導についてはミスリルを使えばいいんだけどね」


ミスリルはこの世界の金属で、魔力を通す特性を持つ。

だから魔法剣などの材料に使われていたりする。


僕とエミ―が悩んでいると、エミリア姉上が不思議そうに首を傾げる。


「魔石から魔力を取り出すのって、そんなに難しいのね。魔石を手に持って魔力を流したら、簡単に魔石から魔力を取り出せると思っていたわ」


魔石を手に持って、体内の魔力を魔石に流し込めば、魔石の中の魔力が使えるようになることは、この世界で常識とされている。


ということは、少量の魔力を魔石に流せば、魔石の中にある魔力を引き出すことができるかも……。


僕はニコリと笑って、エミリア姉上の両手を握る。


「ありがとう姉上、少しヒントが見えてきたよ」


「それは良かったわ。 私も一緒に考えるから頑張ってね」


エミリア姉上も加わり、三人で道具について検討する。

しばらく話し合っていると、エミ―が疲れきった表情で愚痴をいう。


「魔石から魔力を抽出するために、ずっと道具に触れて体の魔力を使うなんて無理よ」


「そうよね。そんなことをすれば体が魔力切れを起こして気絶するわね」


「うーん、少しでも魔力を放出している物質なんてあるのかしら?」


エミ―に釣られてエミリア姉上も愚痴り始めた。


魔力を放出する物質……どこかで聞いたような……

僕の頭の中に、ふと考えがよぎる。


「あるよ! 瘴気の沼が!」


この世界には『プリミチブの樹海』のように狂暴な魔獣が闊歩している森が多数点在している。


その森には空気中の魔素が溶け、池の中で沈殿し、魔素が腐って瘴気になっている沼があるという。


魔獣達はその沼から発せられる瘴気を体内に取り込むことによって、狂暴に進化したと古代文明の文献には記されている。


魔獣達は吸い込んだ瘴気を体内で純度の高い魔石の結晶に変えることから、瘴気が世界に満ちないようにする働きがあるのではとも言われている。


だから『プリミチブの樹海』のような深い森には瘴気の沼がある可能性が高い。


そこまで僕の考えを二人に話すと、エミ―がハッとした表情をする。


「ドワーフの集落の近くに、水が腐って飲めない沼があったわ。私達は飲めないんだけど、魔獣達は平気そうに沼の水を飲んでいたわね」


「『プリミチブの樹海』にそんな場所があったのか。それなら俺が調査に行ってきてやるよ。俺に黙って、イアンとエミリア姉上だけで面白いことをしてるのはズルいぞ」


突然、扉のほうから声が聞こえ、振り返るとアデル兄上が笑顔で立っていた。


するとエミリア姉上は立ち上がって目を鋭くする。


「ダメよ。アデルはローランド兄上を手伝わないと」


「イアンとエミリア姉上だけ『プリミチブの樹海』に行って、俺を行かせないのはズルいだろ。政務は姉上が手伝えばいいんだ」


「勝手なこを言わないでよ」


二人は顏を付き合わせて口喧嘩を始めた。


うーん、こうなったら二人共、すぐには止まらないよね。

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