四天王④
僕、尚哉の家、一条家は祖父の代から代々運送業を営む家系である。
祖父が創業した当時は数人の小さな会社だったが跡を継いだ父、明の代で急成長した。
今では従業員は100人をゆうに超え、一条グループ化し不動産業や飲食業など幅広く経営している。
全国的な企業ではないが地元では有力なグループ企業であった。
どのくらいかわかりやすく説明すると、街を歩けば大体うちのトラックが一台は走っている感じ。
僕はそんな一条家の次男だ。いわゆる成金のお坊ちゃまだ。
一番上に長女の波留、二番目に長男の蓮、そして僕。
ごりごりの末っ子である。
長女の波留は優しく穏やかな人であった。僕とは歳が10個離れているのでよく可愛がってくれる。
兄の蓮とは二歳違いだが、とても仲が悪い。
特に理由はないが、幼いころからよく兄に罪をかぶせられ、父に怒られた記憶がある。
やった本人は覚えていないのだろうが、やられた側はいつまでも根に持つものだ。
なんせ我が父、明はとても怖い。
悪いことをすれば何発も張り手が飛んでくる。
真夏に二リットルの水だけ持たされて庭の物置に朝までぶち込まれたこともある。
それもこれも全ては兄のせいだ。彼はすぐに嘘をついて僕のせいにしてくる。
父からすればどちらがやったかわからないので連帯責任で二人ともに張り手をし、物置にぶち込むのだ。
たまに波留がこっそりと助けてくれたりもしたが、無罪の僕からすればたまったもんじゃない。
その記憶があるから兄の事は嫌いなのだ。昔はそんな兄に文句を言っていたがいつも返り討ちにされていた。
幼いころの二歳差というのはとても力の差がある。当時はどうしても勝てなかった。
喧嘩しているのが父にバレ、またしばかれるということがしばしばあった。
そんな父は自分が高卒ということもあり、学歴にコンプレックスを持っていた。
どうやら経営者同士の集まりで恥ずかしい思いをしたことがあるらしい。
そのこともあってか子ども三人全員に中学受験させた。
姉の波留は偏差値はさほど高くないが、県の三大お嬢様学校と呼ばれるうちの一つに合格し、大学まで通った。
兄の蓮は頭があまりよくなく、中学受験に失敗して地元の中学、高校へと進んだ。
僕は末っ子ということもあってか要領がよく、偏差値もまあまあな私立帝王大学附属中学に合格した。
中学ではサッカー部に入りそこで修斗に出会った。
一応キャプテンにまで上り詰めたのだが、それで満足してしまい、高校では部活に入らなかった。
高校もスポーツ推薦の話を進められたが他の事に興味があり、断った。
この頃から心のどこかで兄を見下すようになったのだが、それはまた別で話すとしよう。
尚哉の生い立ちについて軽くふれました。
年の近い男兄弟で仲いい人っているんですかね?気になります。
少し話がそれましたが次からまた帰り道の続きを書いていきます。