15日目
15日目
太陽が頂点へと昇り木々を照らす昼頃、森の中を歩く5つの人影があった。
1つの人影は先頭に立ち何やら叫びながら歩いている。
「おーい!熊!いるなら出てこーい!」
その人影は先ほどからしきりにそう叫んでいた。
「・・・おい」
後ろにいる一人が口を開け・・・
「怪物のエサになりたくなかったら・・・さっさとあのバカを黙らせろ!」
他の三人に向かってそう言った。
「はぁ…おいリオン、そろそろやめるんだぜ」
リオン「え~」
先ほどから先頭に立って叫び続けていたのは、黒髪のぼさぼさ頭の青年である黒鐘リオンだ。
そして今彼に話しかけたのは、彼の幼馴染である金髪の少女、時雨真鈴。更にその後ろであきれたような顔をしながら見ている二人は彼らの仲間であるアリシア・スカーレットと八神薫、そして文句を言ったのは神宮寺湊だった。
真鈴「え~じゃないんだぜ、あいつの言う通りお前がずっとそんなバカでかい声出してたら怪物が寄ってきちまうんだぜ」
リオン「は~い」
この五人がどうして森の中にいるのか。理由は単純、すでに日課になりかけている森での探索と食料調達だ。
しかし、前日に巨大な怪物と戦ったはずのリオンとアリシアがなぜこの探索に参加しているのか?理由は、前日の怪物との戦いで多くの負傷者が出てまともに動ける人材がほとんどいなかったからだ。彼らのリーダーであるレオドール・スカーレットに至っては、両腕を粉砕骨折させられてしまっている・・・
湊「たくよ・・・だいたいこんなところに熊なんている訳ねえだろ!無人島だぞ!」
リオン「決めつけんなよ!いるかもしれねえだろ!」
湊「いねえよ!」
薫「まあまあ・・・」
言い合う二人を薫がなだめる。
アリシア「はぁ…頭が痛くなってくるわ」
アリシアは頭を押さえながらそう言う。
リオン「大丈夫か!?まさか熱中症か!?」
アリシア「・・・ぶっとばすわよ?」
リオン「・・・すみません」
アリシアに睨まれリオンはおとなしくなった。
真鈴(なんか似たようなやり取りを前にもやってたような・・・)
真鈴は若干のデジャヴを感じながらも、5人は探索を進めていく。
それからしばらく時間がたったころ・・・
湊「たくっ・・・あ~クソ!こんなのやってられっか!」
湊が愚痴をこぼし始める。
湊「どれが食える野草かなんて分かるかよ!大体・・・どれも同じ緑の草じゃねえか!?」
そう言って湊はそこら中に生えている何かよく分からない草たちにキレ始める。
アリシア「言いたいことは分からなくはないけど仕方ないでしょ?文句言ってないで一つでも多く食べられそうなものを探しなさい」
アリシアは湊にそう言い放つ。
湊「クソ・・・イライラするぜ・・・」
湊はそう言うとどこかに向かって歩き始める。
薫「どこに行くんだい?」
湊「あ?休憩だよ!休憩!このまま続けてたらおかしくなっちまいそうだ。大体・・・草なんか食って腹が膨れるかよ・・・」
湊はそう言いながら巨大な盛り上がった岩?のようなものに背中を預けて座り込んだ。
薫「湊!まったく・・・ごめん、彼については僕から謝らせてくれ」
アリシア「別にあなたが謝る必要はないわ、あいつはああゆうやつだって分かってるし。それに・・・どちらにせよそろそろ休憩しようと思ってたところよ」
薫「その心遣いに感謝するよ、ありがとう」
そうして5人は休憩をとり始める。
リオン「しっかし・・・なかなかみつかんねえよな~熊」
真鈴「お前・・・まだあきらめてないのか?」
リオン「おうよ!一回は食ってみてえからな!熊鍋!」
リオンは目をキラキラさせながら言う。
真鈴「多分お前が思ってるほどおいしくはないと思うんだぜ・・・熊だし」
そんなたわいのない会話をしながら時間は過ぎていく。
15分ほど経ってアリシアが立ち上がる。
アリシア「さて、休憩はこれぐらいにしてそろそろ続きを始めましょ?」
薫「そうだね」
湊「はぁ…また草を見んのかよ・・・ノイローゼになっちまうぜ・・・」
アリシア「ほら、文句言ってないで早く立って・・・うん?」
アリシアは湊の方を見ると、なぜか固まってしまった。
湊「あ?」
薫「どうしたんだい?・・・!?」
薫も同様に固まる。
リオンと真鈴も湊の方をみて驚愕の表情を浮かべる。
湊「なんだよ?なんか俺の顔にでもついてんのか?」
アリシア「うっ後ろ・・・」
湊「後ろ?後ろにはなにも・・!?」
湊が後ろを見るとそこには変わらず盛り上がった岩のようなものがあった、しかしそれはよく見るとわずかに動いていた。
湊「なっなんだよこれ!?動いて・・・」
湊がそう言った瞬間土のようなものは大きく動きこちらに振り返った。
五人「!?」
今まで土の山だと思っていたそれは・・・
グルルルル…
体長4〜5メートル以上はある巨大な・・・“熊”だった・・・
しかしその熊の目は血走り、口からはよだれがあふれ、爪は異常なまでに巨大化し、どう見ても普通の熊ではなかった。
リオン「くっ…熊だあああぁぁぁ!!!」
湊「まじかよ!?」
グオオオオオッッッ!
巨大な熊の怪物は湊に向かって巨大な腕を振り下ろす。
湊「っ!」
間一髪湊はそこから飛びのき、間一髪攻撃を回避する。
薫「湊!?大丈夫!?」
薫がすぐさま湊のもとに駆け寄る。
湊「くっそ・・・マジで死ぬかと思った・・・っておい!後ろ!」
薫「!?」
薫が後ろを振り向くと、すぐ後ろに熊の怪物が迫ってきていた。
薫「っ!」
リオン「おい!こっちを見やがれ!」
リオンが熊の怪物に向かって持ってきた拳銃を発砲する。
しかし・・・
リオン「おいおいまじかよ・・・」
弾丸は命中したものの熊の怪物には一切効いていないようであった。
真鈴「これならどうだ!」
真鈴は熊の怪物に向かってサブマシンガンを連射する。しかしやはりと言ったものか、熊の怪物にはほとんど効いていないようだった。
だが、怪物は鬱陶しいと思ったのか目の前の薫たちを無視し、リオン達に向かって突進していく!
リオン「うおっ!」
二人は飛びのいてそれを回避する。
怪物は二人の後ろにあった大木に激突し・・・大木はいとも簡単に根元から折れてしまった。
真鈴「あっあんなの当たったらひとたまりもないんだぜ・・・」
アリシア「当たらなければいい話よ!もらった!」
アリシアは木に激突し、隙だらけとなった怪物の背中に槍で切りかかるが・・・
ガキン!
まるで金属にでもあたったかのような音を放ち、槍がはじき返される。
アリシア(かっ硬い!なんなのこいつの毛皮!?まるで鋼鉄じゃない!?)
真鈴「アリシア!」
アリシア「!しまっ・・・!」
アリシアの攻撃がはじき返された直後、怪物は振り返り、アリシアに向かって巨大な腕を振るう!
アリシアは咄嗟に槍でガードするが・・・
ミシミシミシ!
アリシア「ぐうッ!」
槍が嫌な音を立て、アリシアはそのまま思いっきり吹き飛ばされ、木に激突する!
アリシア「がはっ!」
アリシアは地面に倒れ動かなくなる。
リオン「アリシア!くそったれが!!!エンチャント!」
真鈴「リオン!」
リオンが怪物に突っ込んでいく!
怪物はリオンに向かって腕を振り下ろすが・・・
リオン「!」
ヒュン!
リオンは目にもとまらぬスピードでそれを回避し、そして・・・
リオン「これでも・・・くらいやがれ!!!」
リオンは怪物の顔面に強力な蹴りを叩き込んだ!
リオン「へっ!・・・!?」
しかしリオンのその一撃も・・・
グルルルル・・・
怪物には全く効いていなかった、むしろその一撃は怪物の逆鱗に触れたようで、怪物は怒り狂ったかのような咆哮を上げる。
グオオオオオッッッ!!!
リオン「マジか!」
リオンは急いで怪物の傍を離れるが・・・
グオオオオオッッッ!!!
怪物は怒りに身を任せ、木々をなぎ倒しながら猛スピードでリオンへと突進し、腕を振り上げる!
リオン「ッ!」
回避できないと悟ったリオンはナイフで攻撃を防ぐが・・・
ガキン!
リオン「ぐぐぐ・・・」
リオン(おっ重てえッ!腕が・・・へし折れちまいそうだ・・・!)
リオン「くっくそ・・・!」
熊の怪物はリオンを叩き潰そうと更に力を籠める!
リオン「ぐぬぬぬぬ!」
リオンも負けじと、エンチャントの出力を高める!
真鈴「こっちを見やがれ!」
真鈴が熊の怪物に向かってサブマシンガンを連射する!
湊「おい!俺達も援護するぞ!」
薫「うん!」
湊と薫も持ってきた拳銃を熊の怪物に向かって何発も発砲する。
すると怪物の力が一瞬弱まる。
リオン(しめた!今ならここから・・・)
リオン「!?」
リオンがそう考えた瞬間…熊の怪物はもう片方の腕をリオンに向かって振るう!
バキッ!
リオン「がっ!」
リオンは突然のことで避けることが出来ず攻撃は直撃し、吹き飛ばされる!
リオン「ぐあっ…ッ!」
リオンは地面にうずくまってしまう。
真鈴「リオンッッッ!!!」
湊「おい!あの怪物!こっちに来るぞ!」
湊がそう叫ぶと同時に怪物は真鈴たちの方へと突進していく!
薫「っ!」
薫が銃を構えるが・・・
薫「!?」
ドゴッ!
怪物はそのままの勢いで巨大な腕を振るい、薫を吹き飛ばす。
薫の体が宙に大きく浮き、地面に落ちる。
薫「かは・・・!」
湊「薫ッッッ!!?ハッ!」
ズバッ!
薫に気をとられた湊は、熊の怪物の攻撃に気づかず、左肩をその爪で大きく切り裂かれる。
湊「ぐあああぁぁぁッッ!!」
湊は痛みに声をあげながら地面に倒れる。
真鈴「あっ・・・ああ・・・!?」
熊の怪物が真鈴の方を振り向く。
真鈴「っ!うっ・・・うわああああ!!!」
真鈴は恐怖からがむしゃらにサブマシンガンを熊の怪物に向かって発砲するが・・・
ブン!
バキッ!
真鈴「あっ・・・」
怪物は腕を振るい真鈴の持っていたサブマシンガンを弾き飛ばす。
弾き飛ばされたサブマシンガンは破壊され、バラバラになった。
真鈴「あっああ・・・」
銃を失った真鈴にはもはや対抗する手段が何一つ残されてはいなかった。
怪物の血走った恐ろしい瞳が真鈴の目と合う。
真鈴「ひっ!あっいや・・・」
真鈴が後ずさると怪物は真鈴に一歩近づく。
真鈴「やっやめて・・・来ないで・・・きゃっ!」
真鈴は躓き地面に尻もちをつく。
もう誰も助けに来るものはいない・・・怪物はさらに真鈴へと近づく・・・ついに獲物に食らいつけることを喜ぶかのようによだれを垂らしながら・・・
真鈴「いっいや・・・」
ショロロロロロ・・・
真鈴は恐怖のあまりに失禁してしまう。
真鈴「たっ・・・助けて・・・誰か・・・」
怪物が大きく口を開ける・・・
真鈴の目に走馬灯かの如くかつての風景が流れていく・・・そう・・・かつて・・・リオンと初めて出会った・・・あの幼い時の記憶が・・・
真鈴「リオン・・・っ!」
怪物が真鈴に噛みつこうとし真鈴は目をつぶる!
真鈴(・・・?)
しかし彼女が想定していた痛みは襲ってはこなかった、彼女はゆっくりと目を開ける。すると・・・
「っ・・・真鈴には・・・手を出させねえ!」
真鈴「っ!リオン!!!」
そこにはリオンが立っていた。リオンは何とか怪物の口を閉じさせまいと両腕でクマの怪物の口をこじ開ける。
真鈴「リオン!私のことはいいから逃げて!」
リオン「っ!できるかよ!そんなこと!もう・・・!誰も死なせたりしないって・・・決めたんだ!それに・・・ヒーローは・・・逃げたりしねえ!」
真鈴「でも!」
リオン「大丈夫だ!俺が・・・絶対お前を・・・守ってやるから!」
真鈴「リオン・・・!危ない!」
リオン「!」
怪物は噛みつくの諦め、片方の腕を振り上げリオンへと攻撃しようとする。
両腕を使用しているリオンには防ぐ手段がない。
リオン「くそっ!」
真鈴「リオン!!!」
熊の怪物が腕を振り下ろそうとしたその時!
「はあああああ!!!」
突如として熊の怪物の背中に何者かが切りかかる。
リオン「!?」
真鈴「あれは・・・」
リオン・真鈴「アリシア!」
アリシア「これでも・・・くらいなさいッッッ!!!」
ズバッ!
アリシアの渾身の力を込めた槍での攻撃は、今度ははじき返されず、怪物の背中を切り裂いた。
怪物は痛みのあまり、力が緩み大きくのけぞる!
リオン(今だ!)
それと同時にリオンは手を放し、真鈴を抱えて遠くへ離れる。
アリシア「腐れ怪物が!さっきはよくもやってくれたわね…お返しよ!」
アリシアは頭から血を流し中指を立てながら、不敵な笑みを浮かべてそう言い放った。
よく見るとアリシアはいつの間にサプリメントを飲んだのか吸血鬼の姿になっていた。
怪物は傷をつけられ怒りに満ちた瞳をアリシアへと向ける。
アリシア「かかってきなさい・・・熊鍋にしてやるわ・・・!」
両者は一瞬睨み合い、どちらも相手に向かって突進し、正面から槍と巨大な爪がぶつかり合う!
リオン「真鈴、ここで待ってってくれ」
リオンは真鈴を安全な場所に下す。
真鈴「リオン・・・」
リオン「俺はアリシアと一緒にあの怪物を倒してくる」
真鈴「分かった・・・気を付けて・・・」
リオン「おう!」
リオンは熊の怪物の元へ向かっていく!
その間もアリシアは熊の怪物と一進一退の攻防を繰り広げていた。
アリシアの攻撃は命中するものの、怪物の鋼鉄のような毛皮に阻まれ、大きなダメージを与えることはできなかった。
だが熊の怪物もアリシアの素早い動きに翻弄され、攻撃を当てることは出来てはいなかった。
リオン「アリシア!」
アリシア「!ちょうどいいところに来たわね」
リオン「大丈夫か!?」
アリシア「ええ、私はいたって平気よ」
リオン「ほっ本当か?」
リオンはなんだか今のアリシアはなんとなくいつもと雰囲気が違うように感じもしたが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
アリシア「それよりも・・・問題はあいつをどうやって倒すかよ。私の攻撃じゃ致命傷を与えることはできないわ・・・残念なことにね」
リオン「じゃあどうすんだ?」
アリシア「あなた・・・あの時使った、光る剣みたいなのは出せないの?」
リオン「あれか?う~んできるか分からねえけどやってみるか!うおおおお!」
リオンはエンチャントを最大出力し、ナイフに力を籠めるが・・・
リオン「あっあれ・・・?なんで伸びねえんだ?」
ナイフの刀身があの時のように伸びることは無かった。
リオン「もしかして掛け声が足りねえのか?うおおお!卍!〇!あれ?」
掛け声があっても伸びることは無かった。
リオン「なんでぇ!?」
アリシア「はぁ…もういいわ!とにかく何とかするわよ!」
リオン「おっおう!」
二人は怪物に飛び掛かっていく!
「!」
怪物は二人に向かって巨大な右腕を振り下ろすが二人は難なく回避し・・・
リオン・アリシア「!」
ズババババ!!!
二人の目にもとまらぬ攻撃は怪物の全身を切り裂く!
グオオオオオ!
しかし二人の攻撃は怪物の薄皮を切り裂いただけでやはり大きなダメージにはなっていない。怪物はアリシアに向かって再び右を振るうが・・・
ヒュン
アリシアはいとも簡単に攻撃を躱し、巨大な爪が空を切る。
アリシア「どうしたの?デカブツ?そんなんじゃ一生かかっても私に攻撃は当てられないわよ?」
アリシアは怪物を挑発する。
怪物は挑発されているのを理解したのかしないのか、怒りに満ちた方向を上げながら、アリシアに突進する。
アリシア「ふっ・・・かかったわね、まぬけ」
アリシアはそう言って上に飛びのき、攻撃を回避する。
避けられた怪物は止まることが出来ず、そのままアリシアの後ろにあった岩壁に衝突する!
ゴロゴロゴロ!
怪物が勢いよく衝突したことによって岩壁が崩れ出し、いくつもの巨大な岩が怪物に降り注ぎ、怪物は岩の下に埋もれ見えなくなった。
アリシア「計画通りね」
どうやらアリシアが怪物を挑発したのはこれが目的だったらしい。
リオン「おお~!すげえ!流石アリシア!」
リオンがアリシアの行動に感心する
アリシア「ふふん、褒めても何も出ないわよ」
アリシアは口ではそういいながらも、満足げなしぐさをする。
リオン「あの怪物・・・死んだのか?」
アリシア「さすがにあの怪物でもあれだけの岩の下敷きになればさすがに・・・」
コロ・・・
岩の山が微かに動き、小さな岩が地面に転がる。
アリシア「え?」
リオン「まさか・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
岩が盛り上がり始める・・・そして・・・
グオオオオオッッッ!!!
怪物が岩の山を押し上げ、勢いよく這い出てきた!
アリシア「!?」
リオン「マジかよ!?」
グオオオオオッッッ!!!
アリシア・リオン「!」
怪物は出てくると同時に二人に右腕を振るう。
二人はそれを後ろに飛びのき何とか回避する。
アリシア「ちっ!しぶといわね!」
リオン「どうする!?アリシア!」
アリシア「ふん!だったら直接叩けばいいだけの話!行くわよ!」
リオン「おう!」
二人は再び怪物に飛び掛かっていく。
二人の攻撃は先ほどと同様に命中するがやはり、怪物の皮膚は硬く大きなダメージを与えることが出来ない。そして・・・
ジリジリジリ・・・
アリシア「ッ・・・」
アリシアは体が焼けるような感覚に襲われ始める。
アリシア(ちっ!もう時間切れなの!?まったく!)
リオン「アリシア!」
アリシア「!」
アリシアが一瞬その感覚に気をとられた瞬間、怪物はアリシアに向かって攻撃しようと右腕を振り上げる!
アリシア「このっ!」
アリシアは攻撃を受け止めようと、槍を振るう!
怪物の腕とアリシアの槍がぶつかったその瞬間!
バキッ!
という音とともに・・・
アリシア「ッ!?」
アリシアの槍が・・・芯の部分からへし折れてしまった。
怪物はそのままアリシアに向かって腕を振るう。
リオン「アリシアッ!」
ヒュン!
怪物の攻撃はアリシアの・・・
アリシア「くっ!」
頬を掠めた。
ツー・・・
アリシアの頬から血が滴る。
アリシアは後ろに飛びのいて怪物から距離をとる。
アリシア「やってくれるわね…怪物風情が・・・」
リオン「アリシア!大丈夫か!?」
アリシア「ふん・・・これくらいなんとも・・・っ!」
アリシアが突然地面に膝をつく。
リオン「アリシア!?」
アリシア「ぐっ・・・!」
アリシア(体が・・・熱い・・・もう限界なの!?)
アリシアは体中が燃え上がるような感覚に襲われる。
アリシアの羽が見る見るうちに小さくなり、人の姿に戻っていく。
アリシア「ああ・・・もう・・・!本当に・・・不便な体ね!」
リオン「大丈夫か!?」
アリシア「ええ・・・でも・・・」
アリシアが怪物の方を見る。
アリシア「どうしたものかしらね…」
怪物は二人にゆっくりと近づいてくる・・・
リオン「アリシア」
アリシア「なに?」
リオン「みんなを連れて逃げろ」
アリシア「は?」
リオン「今の状況じゃ俺たちはあいつには勝てねえ。このまま戦えば全員やられちまう。今まともに動けるのは俺とお前と後、真鈴ぐらいだ。俺たち二人のどっちかがやられたら逃げることだってできねえ」
アリシア「・・・」
リオン「大丈夫だ、みんなが逃げる時間を稼いだら俺も逃げる。死んだりなんかしねえよ。だから・・・」
アリシア「ふっ、急に何を言い出すかと思ったら・・・」
リオン「え?」
アリシアがリオンの言葉を遮る
アリシア「悪いけど・・・お断りよ!」
リオン「ええええ!!!???」
アリシア「私、やられっぱなしは性に合わないのよね、逃げるのも嫌いだし」
リオン「いや!いまそんなこと言ってる場合かよ!?いいからやられちまう前に皆をつれて・・・」
アリシア「それに・・・あなた死ぬ気でしょ?」
リオン「ッ!」
アリシア「だませると思った?貴方の気休めのような嘘なんてとっくにお見通しよ」
リオン「そんなことは・・・」
アリシア「あなたのエンチャントだって、もうそう長くは持たないでしょ?」
リオン「・・・」
リオンは図星をつかれたようで黙ってしまう。実際リオンも怪物にダメージを与えるために常に最大出力でエンチャントを行っており、体力の限界が近づいてきていた。
リオン「だけど・・・」
アリシア「あなたがみんなを死なせるわけにはいかないように、私もあなたたちを死なせるわけにはいかないのよ・・・“あの子”のためにも」
リオン「でも・・・!」
アリシア「!来るわよ!」
アリシアがそう叫びリオンが前を見ると、熊の怪物は直ぐ近くまで迫ってきており、腕を振り上げ二人に攻撃を仕掛けようとする!
リオン「くそったれ!!!」
リオンがアリシアの前に飛び出し、攻撃を防ごうとしたその瞬間!
バァン!
大きな銃声が響き木々の間を縫って弾丸が飛んでくる。
バシュン!
弾丸は怪物の頭部へと命中する。
リオン・アリシア「!?」
グオオオオオ!!!
怪物が苦し気な咆哮を上げる
バァン!
再び銃声が響く。
怪物は巨大な腕を盾にし弾丸を防ぐ、しかし・・・
ヒュン
なにかが同時に怪物の足元に投げられた・・・と思えばそれは次の瞬間。
バン!バンバンバンバン!
と大きな爆発音を上げながら絶え間なく爆発し煙を上げる。
怪物はあまりの出来事にひるみ動けなくなる。
リオン「なっなんだ?」
アリシア「いったい何が起きて・・・」
二人が困惑していると・・・
「こっち」
背後から声が聞こえてくる。
リオン「え?」
「早く!」
声の主は二人をどこかに導こうとしてるようだ。
リオン「なんだか分からねえが、今がチャンスだな!行くぞ!」
アリシア「ちょっと待ちなさい!私は逃げるなんて・・・」
リオン「いいから行くぞ!」
アリシア「ちょ・・・」
リオンはアリシアの腕を強引に引っ張り連れていく。
リオン「真鈴!逃げるぞ!」
真鈴「え!?あ!うっうん!」
真鈴も立ち上がりリオン達について行く。
リオン「アリシア!湊を頼む!」
アリシア「しょうがないわね!」
リオンは気絶している薫を担ぎ、アリシアは湊を肩で支え走り出す。
湊「くっそ・・・痛え・・・」
アリシア「我慢しなさい、男でしょ」
湊「大けがした奴にいう言葉じゃねえだろ・・・」
真鈴「怪物は?」
後ろを見ると怪物は逃げる五人を追いかけようとするが、再び爆発物が投げ込まれ動けなくなる。
「こっち、ついてきて」
再び声が聞こえてくるが、声の主の姿は見えない。
真鈴「しっ・・・したがって大丈夫なの?」
リオン「分かんねえけど、助けてくれてるみたいだし従うしかねえだろ」
真鈴「そっそうだね!」
五人はそのままどこからか自分たちを導く声に従い森の中を走り続ける。
しばらく走って後ろを見ると怪物は追いかけてきてはいなかった・・・
真鈴「はぁ…はぁ…逃げ切った・・・?」
アリシア「はぁ…さあ?分からないわ、油断しないで」
全員が周りを警戒していると・・・
「ここなら・・・安全。もう、追いかけてこない」
先ほどまで自分たちを導いていた声が再び聞こえてくる。
アリシア「そう・・・それで?あなたは何者なのかしら?姿を見せて頂戴?」
「今、行く」
その声がそう言うと、突如上空の木々の枝が揺れ始め、一つの影が下りてくる。
アリシア「あなたが・・・」
それは、長いまるで雪のような真っ白な美しい髪と、澄んだ青い瞳を持ち、ワイシャツにショートパンツという変わった格好をし、猟銃を担いだ背の高い美少女だった。
リオン「おっお前は!?・・・だれ?」
真鈴「さあ?」
二人がアリシアの方を見る。
アリシア「いや知らないわよ、あんたは」
湊「俺に・・・聞くな・・・!知るわけ・・・ねえだろ・・・!」
アリシア「だ・・・そうよ」
少女「・・・」
少し気まずい雰囲気が流れる。
薫「うっ・・・うん?ここは・・・」
その時リオンが担いでいた薫が目を覚ました。
リオン「おっ!目を覚ましたか、薫」
薫「うん…それで・・・今はいったいどういう状況なんだい?」
リオン「怪物にやられそうになってたところを、あいつが助けてくれたんだ、えっと・・・」
薫「ん?君はもしかして・・・雪さん?」
雪と呼ばれた少女は静かにうなずく。
真鈴「知ってるのか?」
薫「うん、同じクラスなんだ」
どうやら薫とこの少女はクラスメイトらしい。
リオン「助けてくれてありがとな!雪!」
雪「どう・・・いたしまして」
雪は澄んだ声でそう答えた。
真鈴「本当に助かったよ。もしあのまま戦ってたらどうなってたか…」
リオン「本当にいいタイミングで来てくれたよな!」
アリシア「ふん・・・別に助けられなくても私がどうにかしてたわ」
リオン「強がってる場合かよ・・・」
雪「うん…ずっと見てたから」
リオン「え?」
真鈴「ずっと見てたって・・・いつから・・・」
雪「あなたたちが、森に入ってきてからずっと」
真鈴「それってほぼ最初からじゃ・・・」
雪「うん」
アリシア「なるほど・・・だからずっと視線を感じたのね」
リオン「そうなのか?」
アリシア「ええ。てっきり犬の怪物あたりかと思ったけど違かったようね」
薫「どうしてそんなことを?」
雪「あなたたちが・・・私の縄張りに入ってきたから」
薫「縄張り?ここは君たちの寮の人たちが占有してるってこと?」
雪「ううん、ここは・・・私の縄張り」
薫「君一人ってこと?」
雪はうなずく。
薫「そっそうなんだ・・・」
雪「・・・」
真鈴「なっなんか・・・変わった奴だね…」
リオン「おう」
薫「えっえっと・・・もしかして縄張りに入っちゃもしかしてまずかったかな?」
雪「荒らすのが目的じゃないなら・・・別にかまわない」
薫「そっそんなんだ・・・良かった」
雪「それよりも・・・あなたたち、早くここから出てった方がいい」
薫「え?」
雪「“あれ”は、まだあなたたちを探してる」
リオン「あれって・・・あのでっけえ熊の事か?」
雪は頷く。
アリシア「いったいあれは何なのよ?ただの熊ってわけじゃないんでしょ?」
雪「・・・あれは・・・“山王”」
真鈴「山王?」
雪「うん、それが彼の名前」
アリシア「大層な名前ね」
薫「山王・・・聞いたことがある」
真鈴「なんなの?」
薫「僕たちの住む市に、幻想山っていう山があるのは知ってるよね?」
リオン「おう!小さいときよくそこで遊んだぜ!懐かしいな~」
アリシア「それで?」
薫「そこに体調が3メートルを優に超えるツキノワグマが出没するって、昔ニュースで話題になったんだ。確かその熊をふもとに住む人たちは“山王”って呼んでたんだ」
雪「そう、山王は・・・あの山(幻想山)の王。動物たちの頂点であり秩序そのもの。獰猛な狼達も・・・山王には手を出さない」
真鈴(あの山って狼がいるの!?)
アリシア「随分と獰猛な熊が住んでたのね」
雪「違う」
アリシア「え?」
雪「山王は・・・あそこまで獰猛な生物じゃなかった」
雪があの熊のことについて語り始める。
雪「山王は元々とても賢い熊だった。どんな生物よりも強かった・・・だけど・・・無駄な争いは避けるために・・・自分からあんなふうに誰かを襲ったりはしなかった」
真鈴「じゃあどうしてあんな・・・あれじゃまるで怪物じゃ・・・」
雪「・・・ある日、山王は森から姿を消した・・・突然森からいなくなった・・・ううん・・・山王は・・・連れ去られた」
薫「連れ去られた?」
雪「私は見た・・・あの日。何人かの人間が、山王を捕まえて連れて行くところを」
アリシア「あんな熊を?」
雪「うん。でも、あの時は・・・夜だったから人間達の姿はあまりよくは見えなかった。でも、一人の人間は・・・“金髪の男だった”」
薫「金髪の男・・・」
アリシア「そいつはこのふざけたゲームの主催者の一人かもしれないわね」
真鈴「かもな・・・」
雪「それから・・・山王は姿を現さなくなり、山の秩序は乱れた・・・山王は帰ってこなかった・・・そして私がここであった時には・・・すでにああなっていた」
雪は悲し気な表情を浮かべながらそう言った。
アリシア「改造されたのかしらね?あんな怪物どもも作れるみたいだし・・・」
雪「・・・」
湊「おい・・・」
ずっと黙っていた湊が口を開く。
湊「長話は・・・そろそろ・・・終わりにしてくれねえか?こっちは痛みで今にも気を失いそうなんだが・・・」
アリシア「ああ、そういえば怪我してるの忘れてたわ」
湊「お前・・・あの時の事・・・根に持ってるだろ・・・」
アリシア「根に持ってたら、とっくにあなたをあの怪物のエサとして差し出してるわ」
湊「はっ・・・笑えねえ・・・冗談だ・・・ぐっ・・・」
薫「湊!ごめん!話してる暇はもうないみたいだ!一旦寮に戻ろう!」
全員がうなずく。
薫「そうだ!君も一緒に来ないかい?一人じゃ危険だろうし僕たちと・・・」
雪「いい」
雪は薫の誘いを断る。
薫「え?」
雪「必要ない」
薫「でっでも・・・あんな怪物が出るのに君一人じゃ・・・」
雪「必要ないって・・・言ってる。私は、あなたたちの助けはいらない」
薫「そんなこと言わずに・・・」
薫が雪に近づこうとした瞬間・・・
カチャ
薫「!?」
雪は薫に向かって銃口を向ける。
リオン「!?おい!何やってんだ!」
リオンが臨戦態勢をとる。
薫「おっ落ち着いて!もしかして僕たちが君を寮に連れ込んで酷いことをするかもしれないって思っているのかい?大丈夫、僕たちはそんなことしないよ。だから僕たちと・・・」
薫が一歩前に出た瞬間・・・
バァン!
薫「!?…」
発砲音が響き・・・銃弾が薫の隣の木に命中する。
雪「次は当てる・・・」
アリシア「こいつ・・・!」
一触即発の空気が流れる。
薫「まっ待って!手を出しちゃだめだ!僕は大丈夫だから」
雪「・・・人は獣だ・・・」
薫「え?」
雪「私はあなたたちを信用しないし、あなたたちの手を借りる気もない・・・死にたくなかったら・・・早くここからいなくなって。それじゃあ・・・さようなら」
雪はそう言うと森の中に消えて行ってしまった・・・
薫「・・・」
リオン「なっなんなんだあいつ・・・?」
アリシア「本人がああいってることだし気にする必要はないわ、それよりも早く戻らないとこいつが死にかねないわ」
薫「そうだね、とりあえず寮に戻ろう」
こうして五人は急いで寮へと戻っていった。
幸い寮への帰り道に怪物と出くわすことは無かった。これもここは彼女の縄張りだからなのだろうか、それともあの山王と呼ばれる怪物が暴れ、他の怪物が寄り付けなくなっているのだろうか・・・どちらにせよ彼らにとっては都合が良かった。
それからしばらく経ち、日はとっくに沈んだころ・・・
医務室に薫は湊の様子を見に来ていた。
薫「湊、調子はどうだい?」
湊「調子?はっ・・・あえて言うなら最悪だな。あんな草ごときに片腕じゃ、ちょっと高すぎるぜ・・・」
薫「・・・」
湊の怪我は酷く、穂乃果たちの話によれば、傷口から骨が見えてしまうほど深く切り裂かれていたらしい。
湊「気にすんなよ。むしろこれで危険な探索にもいかなくていいし、怪物とも戦わなくて済むんだ。むしろラッキーだぜ。しいて言えば・・・この怪我のせいで感染症にかからないように祈ればいいだけだからな。後は・・・会長みたいに・・・献身的なお世話をしてくれる彼女でもいてくれれば最高なんだけどな~」
その言葉は薫と同じようにレオの様子を見に来ていた霊華の耳に入り、霊華は顔を真っ赤にし睨みつけるが相手が怪我人の手前、手は出さなかった。
薫「湊・・・」
湊「それにほら、あっちを見て見ろ」
湊が指した方を見ると。
ロザリア「はい、あ~んしてください」
美春「あ~ん・・・うへへへ///」
ロザリアに食事を食べさせてもらい、至福の表情を浮かべている美春の姿が目に入る。
湊「あいつみたいに怪我して世話してもらって、幸せそうな顔してるやつもいるんだ・・・ていうかあいつ腕は怪我してねえだろ!自分で食えよ!」
薫「あはは・・・」
湊「まあ・・・だから気にすんな、それと・・・俺みたいにへまするなよ、薫」
薫「うん」
薫は頷いて見せる。
湊「・・・そういえば、あの生意気なちびの様子はどうなんだ?」
薫「えーっと・・・アリシアさんの事?」
湊「ああ、ここに帰ってきた瞬間ぶっ倒れただろ?」
薫「彼女は・・・一応穂乃果さん達の話によれば一応は大丈夫らしい・・・ただ・・・」
湊「ただ?」
薫「今日あったことをほとんど覚えてないらしい」
薫はアリシアの容体について彼に話す。
アリシアは湊が言ったようにこの寮に帰ってきた瞬間に、意識を失い倒れてしまった。その後すぐに目を覚ましたものの、あの熊の怪物に吹き飛ばされた後のことはほとんど覚えていなかった。
九尾の話によれば、頭を強く打ったことによる一時的な記憶障害らしいが、検査する設備がない以上、最悪の可能性を考慮してしばらくは絶対安静と要観察という話だ。
湊「ふ~ん・・・まあ、意識あんなら大丈夫だろ?あいつ吸血鬼だし」
薫「そうなのかな?」
湊「あの生意気なチビはそう簡単にくたばらねえよ、銃で撃たれようが、吹っ飛ばされようが、ましてや両腕を粉砕されようが、割かし元気そうにしてる会長の妹だぜ?」
薫「まあ・・・確かにそうかもしれないね」
湊「だろ?」
薫「・・・」
湊「・・・はぁ…これでもまだ心配事があんのか?」
湊は薫の表情を見て察し、そう声をかける。
薫とは長い付き合いだ、彼の表情を見るだけで何を考えてるのか湊にはすぐに分かった。
湊「あの女のことか?」
薫「!?」
薫は自分の考えてることを当てられたからか、驚きの表情を浮かべる。
湊「長い付き合いだからな、お前の考えてることなんてすぐにわかる」
薫「・・・」
湊「はぁ…クラスメイトだかなんだか知らねえが、あんな女の事なんて放っとけ」
薫「でも・・・」
湊「あの女が助けはいらないって言ったんだ、そもそも・・・近づこうとしただけで撃ってきたような女だぜ?関わるだけ危険だ」
薫「それでも・・・放ってはおけないんだ」
湊「はぁ…お前は他人のことを気にしすぎだ、いつかそれが・・・命取りになるぜ?」
薫「分かってる・・・それでも僕は・・・」
そこまで言うと薫は真剣な表情を浮かべたまま黙り込んでしまった。
湊もこれ以上何か言っても無駄だと思い、何も言わなかった・・・
・・・
そのころ一方、真鈴はリオンと一緒に自室で破壊され一部分だけとなってしまった、達也のサブマシンガンを見ていた。
真鈴「あいつの形見・・・壊されちまった」
真鈴は逃げる際に拾ってきた銃器の一部分を見てそうつぶやく。
リオン「まあ・・・その・・・しょうがねえよ、あんな怪物と戦ったんだし、ほら!よくこういうだろ・・・えっと・・・ものは壊れる?」
真鈴「えっと・・・形あるものはいつか壊れる・・・って言いたいのか?」
リオン「そう!それ!」
真鈴は内心、よく分かったな・・・と思った。
リオン「いつかは壊れちまうんだし仕方ねえって」
真鈴「でも・・・」
リオン「じゃっじゃあこう考えようぜ!達也が代わりになって守ってくれたってな」
真鈴「そうなのかな?」
リオン「ああきっとそうだぜ!真鈴は達也と仲が良かっただろ?」
真鈴「仲がいいっていうか…まあ・・・ライバルだったからな」
リオン「だろ?だからきっとそうだって!」
真鈴「まあ・・・そうだね、きっとそう思う」
真鈴はこれ以上思い詰めても仕方ないと考え、そう思うことにした。
真鈴「あっ!そう言えば・・・」
リオン「どうしたんだ?」
真鈴「まだ・・・お礼・・・言ってなかったな」
リオン「お礼?」
リオンはいまいちピンと来ていない。
真鈴「その・・・あの時・・・助けてくれてありがとう」
リオン「あの時?・・・ああ!熊に食われそうになった時か!別に礼なんていらねえよ!ヒーローはみんなを守るのが仕事だからな!それに・・・約束だしな」
リオン最後にそうボソッとつぶやいた
真鈴「約束?」
リオン「ああ!いや!やっぱ何でもねえ!忘れてくれ!」
リオンはそう言っては話をはぶらかす。
リオン「それ以外になんかあったりするか?」
リオンは話をそらそうとする。
真鈴はあの言葉が気になったが追及はしないことにした。
真鈴「あっそれともう一つ・・・」
リオン「なんだ?」
真鈴「えっと・・・その・・・」
真鈴は顔を赤らめ言いずらそうもじもじしているが、意を決して口を開く。
真鈴「その!お・・・おしっこ…漏らしちゃったこと、だ…誰にも言わないで…ほしい…///」
そして恥ずかしさやらなんやらで涙目になりながらそう言った。
リオン「!?だ!大丈夫だって!誰にも言ったりなんかしねえよ!気にすんなって!俺もガキの頃は小便ちびっちまうこともよくあったし!」
真鈴「うう・・・」
リオン「だから大丈夫だって!な?」
リオンもなんと返したらいいか分からずしどろもどろになりながらそう真鈴にこたえる。
真鈴「うん…///」
真鈴は自分から言ったにもかかわらず恥ずかしすぎて下を向き、リオンの顔をまともに見ることさえできない。
リオン「えっと・・・その・・・きょっ今日はいろいろあったし!疲れただろ?落ち着くためにも今日はもう寝ようぜ!じゃっ!」
リオンは気まずくてかそれとも気を利かせてか部屋から去ろうとするが・・・
真鈴「まって!」
リオン「!?」
パシ!
真鈴に腕を掴まれ引き止められる。
真鈴「行かないで・・・」
真鈴はそう言いながらリオンの腕に抱き着く。
真鈴「その・・・今日は・・・一緒に・・・寝てほしい///」
リオン「え・・・でも・・・いいのか?」
真鈴は無言で頷く。
リオン「わっ分かった・・・」
こうして二人は一夜をともにすることにした・・・
・・・
夜が更けたころ・・・
真鈴(あわわわわ…まっまさか本当に・・・)
リオン「・・・」
真鈴の部屋にて・・・
真鈴(一緒に寝ることになるなんてー!!!)
真鈴はベッドの上で心の中でそう叫んだ。
真鈴(いやっ!確かに一緒に寝たいって言ったのは私の方だけど!でもあれはいろいろあってなんかその場の雰囲気で勝手に口から出ちゃったって言うか…無意識だったていうか・・・)
真鈴は一体誰に言い訳しているかは分からないが、心の中でそう言い続けていた。
真鈴(っていうか・・・分かってはいたけど・・・やっぱり・・・すごい近い!)
真鈴は直ぐ近く・・・というより真横、リオンの息遣いが聞こえるほど二人の距離は近かった。
それもそのはず、各自に割り当てられた部屋のベッドは一人で使う分にはかなり大きかったが、あくまでも一人用のベッドだ。
それに二人、しかも体格の良いリオンと一緒に寝るとなれば、こうなるのは必然だった。
ドクン!ドクン!
真横(うう・・・今にも心臓が飛び出してきそう・・・ドキドキしすぎて全然眠れない・・・)
ベッドに入ってからそれなりに立つが、真鈴は高鳴る心臓のせいで全く寝付けないでいた。
真鈴(リオンは・・・寝てるのかな?)
リオンは横向きで真鈴とは反対の方を向いているため顔は見えず、寝ているのかは分からなかった・・・
真鈴(・・・今思ったけど・・・これって今・・・私達・・・二人っきりってことだよね?・・・狭い部屋で・・・それも夜にベッドの上で・・・)
真鈴はそう意識した瞬間、一気に顔が紅潮する。
真鈴(ややややっぱり!これってもしかして・・・そっそういうことになっちゃたり!///)
真鈴も年頃の女の子だ、男女の関係のことはよく知っている・・・夜の営みについても・・・
真鈴(でもリオンに限ってそんな・・・でっでもこいつだって立派な男の子・・・えっエッチなことだってもしかしたら・・・)
真鈴はいけない妄想を爆発させる。
ガバッ!
リオンが真鈴の体に腕を回す。
リオン「真鈴・・・誘ってるってことでいいんだよな?」
リオンの腕が真鈴の胸に触れる。
真鈴「あっ・・・///」
リオン「俺はもう・・・ガマンできねえよ・・・真鈴」
真鈴「だっだめだよこんなの・・・だって私達・・・きゃッ!」
リオンが真鈴を無理やり仰向けにし、顔の左右に手を置き、覆いかぶさるような姿勢をとる。
リオン「そんなの関係ない・・・俺は・・・真鈴の全部が欲しい」
真鈴「リオン・・・」
・・・
真鈴(みたいな展開になっちゃたりしてーーー!!!///)
真鈴は勝手に妄想を膨らませ続けていた。
真鈴(そっそういうことになるなら・・・もっと可愛い下着穿いておけばよかった!)
真鈴がそんなことを考えていたその時!
スッ・・・
ビクッ!!!
真鈴「ひゃッ!」
まるで真鈴の妄想が現実になったかのように、真鈴の体にリオンの腕が回ってくる。
あまりに突然のことに真鈴はおかしな声を上げてしまう。
真鈴(ままままさか本当に?でっでもそんな・・・私達まだ恋人同士ですらないのに・・・でっでもリオンにされるだったら私・・・)
真鈴の心臓今までにないほど脈打つ。
振り向く?どうすればいい?リオンは全く動かない、真鈴は頭をフル回転させ次の行動を考える・・・
そして・・・
真鈴「リオン・・・」
真鈴は意を決して振り向いた!
そこには!・ ・ ・
リオン「グゴー!スピー!」
真鈴「・・・」
いびきをかきながら気持ちよさそうに寝ているリオンの姿があった・・・
リオン「ムニャムニャ・・・もう食えねえ・・・」
真鈴「・・・はぁ…まっそうだよね」
真鈴は安堵と少しのがっかりが入り混じったようにそうつぶやいた。
真鈴(私の考えすぎだったか・・・リオンに限ってそんなことあるわけなかったんだぜ)
真鈴はリオンの顔を見る。
真鈴(人の気も知らないで、ずいぶん気持ちよさそうに寝てるんだな・・・まっそういうところがリオンらしいって言うか・・・私はそう言うところが・・・)
真鈴はリオンの頬に顔を近づける。そして・・・
真鈴「好きだぜ・・・リオン」
チュッ・・・
そう言って静かに口づけした・・・
真鈴「お休み、リオン」
真鈴は静かにそう言うと、そのまま眠りについた・・・
リオン「もうくえねえって・・・真鈴・・・」
そうリオンが寝ぼけながらつぶやいたことを、真鈴は知る由もなかった・・・
日に日に投稿ペースは遅くなり、文字数も減ってますが一応生きてはいます。
飽きたとかではなく単純に忙しすぎて死にそうです。一回でいいので365連休とかもらえないですかね?
このままのペースだと完結するのに5年ぐらいかかりそうですがちょくちょく書いていきます。
はぁ~・・・10億円当たんねえかな