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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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コランダム

マリが魔宝石について話している間に原石の鑑定が終わった。十三個の原石の内、十一個がボーキサイト、残りの二つがコランダムだった。

机の上にメモ帳と万年筆があったので鑑定結果を書いてマリに渡す。高めの宿なだけあって充実したアメニティだ。



ーーー


【原石】

コランダムの原石。

純度:高

魔力:5/5

重量:1


ーーー


【原石】

コランダムの原石。

純度:中

魔力:0/0

重量:1


ーーー



あとはマリに交代して価格設定をしてもらう。


「コランダム? って何すか?」

「ルビーやサファイアのことですよ」

「えー! じゃあこれ高いんじゃないですか!?」

「そういや、ルビーとサファイアは同じって聞いたことあるな」


盛り上がる二人を尻目に『露天セット』を広げたマリはおもむろにタガネとハンマーを取り出すと、原石を躊躇なく真っ二つに割った。


「はぁーー!?」

「いや、ちょっ、えぇ!?!?」


カニクリームコロッケが叫び、コガ・シノビも困惑の声を上げる。

断面を検分したマリが二つに割れた原石を敷物の上に置くと、原石は勝手に動いてピタリとくっついた。割れていた形跡はもう何処にも無い。


「ええーーーっ!?」


再び驚愕の声を上げるカニクリームコロッケに悪戯っぽく笑ったマリが種明かしをする。


「ふふ、露天はホームと同じでアイテムが壊れない仕様なんですよ」


原石は割らないと中身が判らない。

商人や鍛治士の派生ジョブである『宝石商』なら『宝石知識』スキルを使って割らずとも判別できるのだが、そんな特殊なスキルを持っていないマリは現実での知識リアルスキルで大まかに査定しているのだ。

ゲーム内の原石は表面だけが石に覆われている仕様であり、割れば必ず中の鉱物が判明するからこそ可能なことではあるが。


「では今割った純度が高いものの査定ですが……」

「純度も高いし、魔力もあるから高いですよね!?」


期待した顔で前のめりになるカニクリームコロッケに、沈痛な表情を作って目を逸らしたマリが告げる。


「残念ながら、50Gです」

「50!? なんで!?」


ガガーン、と効果音が鳴りそうな顔になったカニクリームコロッケにマリは思わず咽せそうになった。本当に揶揄からかい甲斐のある人だ。


「純度は高いのに……小さ過ぎるとかか?」

「いえ、コランダムは不純物で色が変わるので純度はあまり当てにならないんです。これは灰褐色なので宝石としての価値はありません」


冷静なコガ・シノビの疑問に答える。コランダムは無色透明な鉱物だが、クロムを多く含んで赤く変色したものがルビー、それ以外の成分で変色したものがサファイアと呼ばれている。

現実では加熱処理で宝石としての価値を高める場合も多いが、このゲームではその手法は成功していない。

他にも、星のような光の筋が浮かぶスターサファイアは内包物インクルージョンを含んでいることで輝く。美しければ鉱物としての純度は無意味なのである。


そして魔石として考えると、魔力含有量が少な過ぎるので価値は低い。使い捨ての攻撃アイテムですら魔力が三十は必要だ。

このコランダムを魔石として使うなら、焚火に着火するとかコップに水を溜めるくらいしかできないだろう。ある程度の数を集めれば多少は使えるのだが。


「くそぉ……! こっちも開けてください!」

「分かりました。行きますよ、えいっ!」

「ん〜、お願いっ!!」


何だか打ち解けてきたマリとカニクリームコロッケが楽しそうにもう一つの原石を割る。パカッと開いた中身を覗き込むと、オレンジがかった淡いピンクの断面が見えた。


「これルビーっすか!? ちょっと色薄いけど……」

「これは……もうちょっと割りますね」


更に割った欠片を白いメモ帳の上に載せて真剣に観察したマリが、カニクリームコロッケに向かって微笑む。


「おめでとうございます。パパラチアです!」

「おぉ、ありがとうございます! ……パパラチア? て、何すか??」


価値がイマイチ分かっていないカニクリームコロッケが目を瞬かせた。


「世界三大希少石のひとつで、まぁザックリ言うと超高級サファイアです。色が薄いのが残念ですが、透明度が高く不純物も少ないので二万Gで買い取りますよ」

「二万も!?」

「……いや、ちょっと待て。このサイズで二万は安くないか?」


喜び勇んで売ろうとするカニクリームコロッケをコガ・シノビが制止する。

もしや買い叩こうとしているのでは、と懐疑的な視線を向けられたマリは苦笑した。弟の知人に対して意味もなく喧嘩を売るような真似はしない。


「本当にこのサイズならそうですね」


コガ・シノビの言う通り、この5cm近い原石をそのまま宝石に加工できれば数十万Gにもなるだろう。だがここはゲーム。物理法則を無視したことが平然とまかり通るのである。そう、例えば。


「宝石は加工が完了すると、何故か百分の一に縮むんですよ」

「ウソでしょそんな事ある!?」

「まぁゲームなので」


宝石を素材に使うような一部の生産系プレイヤーの中では有名な話だ。

公式からの説明がないため理由はハッキリとしていないが、恐らく原石が小さいと加工が難しいからだろうと推測されている。実際、素人が僅か数ミリの宝石を研磨するというのはプレイヤーに対してあまりにも厳しい。


「……確かに、検索すると生産系の掲示板に載ってるな」

「へぇー、本当なんだ。じゃあこの原石はどのくらいになるの?」

「うーん……」


マリは唸った。恐らく0.2〜0.5カラット程度になると思うのだが、宝石に詳しくない人にサイズ感が伝わるだろうか。グラム数でも分かりにくいだろうし……と考えたところで、コガ・シノビがピアスを着けていることに気がついた。シンプルなデザインで、4ミリ程の黒い石がついている。


「そうですね、コガさんの着けていらっしゃるピアスくらいの大きさになるかと」

っっさ!!」


百カラットはありそうな原石を見ていればそう感じるのも仕方がない。ここから外側の石を削ると半分程の大きさになり、形を整えて綺麗にカットすれば更に小さくなる。

それが最終的に百分の一に縮むので、場合によっては原石の千分の一になることもある。そういうものだと受け入れる他ないのだ。

〜αテストにて〜

採掘士「原石が小さくて採取ポイントを見落とす」

宝石商「原石が小さくて加工が難し過ぎる」

開発チーム「原石大きくしたやで」


〜修正後〜

細工師「小さい宝石が売ってない。デザインの幅が狭まる」

商人「小さい宝石が値上がりして、大きい宝石が安くなる逆転現象が起きてる」

開発チーム「ほな原石小さくするか」


〜現在〜

宝石商「!? 加工が完了した瞬間縮んだ……バグか?」

運営「仕様です」

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