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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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旅館到着と闇ギルド

ばしり、と腕を叩かれてそちらを見ればケイが眉を顰めていた。ごめん、チャット見てなかった……。

慌てて確認。うーん、テイムモンスターか。

コウがテイムしているのはゴーレムの核だけだ。しかも視覚共有のスキルも持っていない。


〈僕は無理だからマリに頼もう〉

〈今はどう伝えようにも不自然だよな〉


一度マリの気を引ければ、彼女は気付いてチャットを確認すると思うのだが──と考えた瞬間、マリからチャットが飛んでくる。


〈大丈夫、チャットも見てたよ。次の角を曲がったらドルオーテを道路脇に待機させるね〉

〈ナイス!〉


流石仕事のできる女。会話しながら宿を見つけるだけでなく、チャットを読むことも並行して行っていたようだ。


「向こうに温泉っぽい看板あるよ」


マリの自然な誘導で曲がり角を曲がる。

その時、ぴょいっとコウのポケットから飛びだしたドルオーテが道端の植木に隠れた。テイムモンスターへの指示もウィスパーモードで行えるようになったので、マリから密かに命令されたのだろう。


ドルオーテをその場に残して先へ進む。

相手は尾行に慣れていないらしく、あっさりと正体が判明した。



〈確認できたよ。さっきの神官さんと鎧の人だね〉


他の面々は尾行とか出来なさそうだったものな。騒がしそうだし。


さて、相手を特定できたのは良いが、狙いが何なのかは未だ不明のままだ。襲撃される可能性もある以上、慎重に行動したい。



「……大きい宿だねぇ」


とりあえず目についた看板を頼りに到着したものの、眼前の風格ある建物に圧倒される。沖縄の首里城を小さくして茶褐色ベースに変えたような外観で、長期滞在するには少々豪華過ぎる旅館だ。

経営が好調なので資金は潤沢とは言え、イベントの期間がよく分からない以上あまり浪費する訳にはいかない。


〈だが後ろの奴らを早く撒いた方が良いんじゃないか? とりあえず短期間だけ予約して、数日おきに宿を変えれば良いだろ〉

〈おお、名案!〉


ケイの発案により、今回は豪華な温泉旅館へ宿泊することとなった。複数の宿を転々としていれば所在を誤魔化し易くもなる。



「よくお越しくださいました」


艶のあるマホガニーの扉を開くと、作務衣のようなお仕着せの女性に出迎えられた。


マリが宿泊手続きを行なっている間にラウンジを軽く見回す。

宿泊客なのか和服を着た二人組の男が寛ぐ椅子を鑑定してみると、材質は麻とラタンだった。


温泉旅館というよりリゾートといった感じだな。和風かと思っていたが想像とは違ってアジアンテイストな内装だ。


他にも竹やラタンを使ったナチュラルカラーのインテリアが置かれており、白い漆喰の壁に映えていた。マホガニーの深い色合いの建材が良いアクセントになっている。



「ん? カニか?」


ケイが唐突に呟く。

コウはサワガニでも入り込んでいるのかと思って聞き返そうとしたが、それより先に宿泊客らしき二人組が反応した。


「ケイ?」

「え、マジじゃん!」


ケイが二人組の元へと歩いていく。どうやら知り合いらしい。


〈私達先行ってるね。202号室〉


手続きを終えたマリが鍵を受け取って部屋へと向かう。コウとユキもそれに続いた。


「ケイ置いてかれてね!?」

「チャットで部屋番号来たから大丈夫だ。それよりお前ら配信中か?」

「いや、配信外だ」


ケイ達の声が遠くなっていく。

微かに聞こえた言葉から察するに配信者仲間だろうか。邪魔したら悪いので静かに離れよう。



割り当てられた部屋に入ると、大きな窓から紅葉の山を一望できた。部屋が二階だったのは運が良かったな。


「戻ったぞ」


美しい風景に良い気分になっているとケイが合流する。随分早いなと思って振り返ると、ケイの後ろには先程の二人組も着いてきていた。アバターなのであまり当てにはならないが、どちらも若そうな感じだ。ケイと同じくらいだろうか。


「お邪魔します! あっ、初めまして〜。配信者のカニクリームコロッケです!」

「コガ・シノビです」

「初めまして。コーエンです」


彼らのアバターを見た事が無かったため気付かなかったが、よくケイと一緒に配信している人達の名前だ。


カニクリームコロッケと名乗った方はオレンジの髪に、髪色より一段暗いオレンジ色の袴を着ていて名前の通りこんがり揚がったコロッケ感がある。


コガ・シノビの方は紺色の髪に真っ黒い忍び装束というザ・忍者な外見。

忍者でイメージするような頭巾は被っていないが額に金属板をつけた鉢巻のようなものを巻いていて、口元は布で覆われていた。コウは知る由もないが、これは額当てという忍者の装備である。


因みにこんな碌に顔も見えない不審な衣装でもNPCは気に留めない仕様だ。以前ブーメランパンツ一丁のプレイヤーを見かけたが誰も反応していなかった。何ならプレイヤーも関わらないようにスルーしていた。



「ユクテスワです。ユキって呼んでください」

「……マリオンです」


マリの人見知りが発動している。

普段ならもう少しマシだったろうが、部屋で気を抜いていた所に不審者全開な衣装の他人が入って来たのがよほど堪えたようだ。


「マリオンさんってカフェの? ケイと知り合いだったんすね!」

「マリオンさんはケイの配信にも出ていたし結構有名だろう。知らなかったのか?」

「いやオレは他の配信見ないようにしてんのよ。できるだけネタバレ無しでゲームしたくて」


マリが逃げたそうにしている。

こうなることは予測できただろうに、ケイは何故ここに連れて来たのか。友人を家族に紹介したがるタイプではないし、何か理由があるのだとは思うが……。


「それより情報交換だ。こいつらは俺らとは別ルートでハロウィンイベントの手掛かりを掴んだらしい。それで、お互いに持ってる情報を擦り合わせて協力しようって話になった」


成程、事後承諾ではあるがメリットは大きそうだ。

こちらが持っているのはユキが神殿で得た情報と、それを元に立てた此処フィートからイベントが始まるという推測である。彼らが此処に居るということは、後者に関してはバレていると考えていいのだろうか。


〈こいつらはフィートからイベントが始まるって気付いてない。そこは一旦伏せるぞ〉


なら彼らは何のためにフィートに来たのだろうか? 気にはなるが下手に質問して怪しまれたら元も子もない。

コウが様子を伺っていると、ユキが二人に尋ねた。


「お二人はどうしてフィートに?」


(ユキ……!?)


ユキがあまりにも躊躇いなく尋ねたので一瞬焦ってしまったが、このくらい自然体な方が怪しまれないのだろうか。その証拠に、彼らは隠す様子もなく教えてくれる。


「闇ギルドで暗殺依頼された標的を追って来たんすよ」

「その標的がイベントに関係ありそうなんです」

「闇ギルドなんてあるんですね」


ユキが驚いた声を上げる。

……ユキは気付いていないようだけれど、闇ギルドの暗殺者ならカフェにも何度か来ている。NPCかと思って生捕りにしたら突然消えるから驚いたものだ。

隙を見て服毒自殺でもしたのだろうがNPCは基本的に死に戻りしないため、死亡すると死体がその場に残る筈である。


その後NPCの情報屋を雇って調べたところ、どうやらカフェを潰そうとして闇ギルドに依頼した者がいたようだ。

闇ギルドにはプレイヤーも在籍しているが、失敗して捕まってしまうと前科がつくので依頼を受けるプレイヤーは事前に死に戻りする準備を整えるのがセオリーらしい。


金を積めば口を割るかと思って闇ギルドに問い合わせたが依頼者の情報は渡せないと言われてしまった。信用問題というやつだろうか。

仕方ないので放置している次第である。



「あ、でもそこまで怖い感じじゃなくて、暗殺以外の依頼もあります!」

「受注する依頼は選べるので裏稼業の冒険者ギルドって感じです」


確かにコウが敵情視察をしに行った時は、『騙し取られた家宝を盗み返してほしい』や『役人の不正の証拠を見つけてくれ』という依頼もあった。

闇落ちルートに行きたい人だけでなく、義賊プレイをしたい人のための組織でもあるのだろう。

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