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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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秘湯の噂

何だかんだで温水プールを堪能した四人は受付に戻ってバングルを返却する。


大人になってレジャー施設で思いっきり楽しむのは少し気恥ずかしさがあるが、貸切状態だったため人目を気にせず遊ぶことができた。マリなんて最初は乗り気でなかった癖に、ウォータースライダーで三回も滑っていたほどだ。



「そういえば、石鹸は売ってなかったね」


ユキの言葉に皆がハッとした。

忘れていたが、そもそも雑貨の仕入れのために来たんだった。遊ぶのに夢中で本来の目的を見失っていた。


ここで働いている人に聞いてみるのが早いのでは、とマリがその辺を歩いていたスタッフを捕まえて石鹸を売っていないか確認する。


「申し訳ございません。当施設では取り扱っておりません」

「では、この町に石鹸を売っているお店はありますか?」

「源泉に近い町の北側に温泉旅館がございますので、そちらなら石鹸も購入できるかと思いますよ」

「温泉があるんですね!」


あっさりと情報を入手できた。やはりNPCへの聞き込みは重要だな。


「あとは……北の山には万病を癒す秘湯があるという噂もあります」

「秘湯!?」

「あくまで噂ですけどね」


本当に万病を癒す秘湯があるのなら既に他のプレイヤーによって広められていそうなものだが、普通の天然温泉くらいなら探せばありそうだ。

マリが意気揚々と宣言する。


「行先変更、北の山へ! と言いたいところだけど、まだこの町でリスポーン設定してないからね……先に旅館を探そうか」


どちらにしろ、向かうのは町の北側だ。一度旅館に寄ってから山へ入ればいい。

ふふ、と笑う受付嬢にお礼を言って外へ出る。


すると背後から声がかけられた。



「あれ? もしかしてコーエンさん!?」


振り返ると、いつぞやの女子高生二人組。その後ろにはふれあいカフェでマリに突っかかっていた四人の少年少女、そして鎧を着て大楯を背負った赤髪の大柄な男に、神経質そうな銀髪の青年、同じく銀髪の可愛らしい少女。

中々面白いラインナップのパーティだ。


「ひゃー!! こんな所で会うなんてすごい偶然! もしかして今からプールに行くところですか!? 新しいアバターも素敵ですね! あっ、動画見ましたファンですっ!」


テンションが高い。


「いえ、今出てきたところです」

「え? でも私達も今出てきたのに……」


恐らく建物の中はパーティごとに別の空間になっているのだろう。お陰で絡まれることなく身内だけで楽しめた。星五つです。


「成程な……。貸切状態だったのはそういう訳だったのか」

「ヴォルフさん、今ので分かったんですか?」


ヴォルフと呼ばれた鎧の大男が解説してやっているのを眺めていると、ケイからパーティチャットが来た。


〈銀髪の男、イベントムービーに映ってた月神の神官だぞ〉


驚きを顔に出さないように気をつけて神経質そうな男を見遣る。……うーん、分からん。


〈俺が覚えてる訳なくない?〉

〈私も〉

〈僕も〉

〈ポンコツ共がよ〉


厳しいお言葉をいただいてしまったが、これは寧ろケイの記憶力が凄いだけだと思う。

数日前に見たムービーの登場人物の顔なんて思い出せない方が多数派では?


因みにチャットはウィスパーモードという音声入力機能を使用している。アバターの口は動かないままなので、目の前の人達には会話していることが分からない。

言葉を正確に書き起こすために声の登録が必要という少々面倒な事前設定が必要なので使用者は少ないが、ゴーレムにリスキルされている時にチャットを送るのが大変だったので、いざという時のために皆で設定したのだ。


〈あ、でも鎧の人は見たことあるよ。俺とマリが大会前に川を渡ろうとしてた時に〉

〈全然覚えてない〉

〈その時は一人だったけど、パーティ組んだのかな〉

〈それより神官の方が重要だろうが。イベントで先越されてそうだぞ〉


ずれてしまった話をケイが修正する。



〈鎌かけてみようか?〉


そう送ってみると、マリとケイが視線を交わして頷いた。ユキは首を傾げていた。



「皆さんは収穫祭のために来たのですか?」

「なっ……」


イベントに深く関わっていなければ知り得ないような情報を匂わせる。


狼狽えたのは一人だけだった。

名前は忘れたが、やんちゃそうなリーダー格の少年。神経質そうな男は僅かに瞳を揺らしたが黙して語らず。

他のメンバーは「収穫祭?」と不思議そうだ。


やっと意図を理解したユキが追撃を加える。


「そう言えばそちらの方、たしか月神の……」


ナイス援護射撃。そう、やれば出来る子なんだよユキは。

男がようやく言葉を発した。


「私は妹の治療に来たんだ。この地にあるという、万病に効く秘湯に心当たりは無いだろうか?」


おっと、思わぬ角度の返しだ。

少年の反応からしてイベント絡みだと思うのだが……。さて、どう答えようか。


「ああ、山の中にあるという。ただの噂かと思っていました」

「そうか……残念だ」


男はそう言って目を伏せる。

これは演技なのか、それとも。


「何か分かったらお伝えしますね。しばらくはこの町にいる予定ですので」

「ああ。ありがとう」


彼について知っている情報が少な過ぎるので今すぐ答えは出せないな。

一旦持ち帰って検討します。


彼らと別れて町の北側へと進む。

何はともあれリスポーン地点の設定だ。うっかり死ねば前の町からまた馬車に揺られる羽目になる。喧嘩を売っている場合ではない。


幸い、あちらも仲間内で相談したいのか引き留められることは無かった。女子高生Aだけは名残惜しそうにしていたが、それも女子高生Bに宥めれて大人しくなる。代わりに別れを惜しむように力一杯手を振っていた。



「──で、この後どうするんだ」

「とりあえず拠点になる宿を探そうよ」


長期滞在の予定だしあまり高くない方が良いかな、だけど温泉付きなら高い宿しかないかも……とわいわい話しながら歩いていると、再びケイからチャットが来た。


〈尾行されてる〉


音か魔力で気付いたのだろう。ケイはこの中で最も索敵に優れたスキル構成だ。


〈了解。急に黙るのは不自然だから雑談を続けよう〉


相手の狙いが不明なので尾行がバレていると悟られたくない。そう考えて提案すると、ユキがのんびりと話し始める。


「抹茶って結構好きなんだけど、このワールドでまだ見た事無いんだよね。旅館なら出るかなぁ」

「抹茶は私も見た事無いな……。緑茶ならサイで売ってたよ。サイは元々北東からの移民が作った町らしいから、そっちの地域に行けるようになれば抹茶も見つかるかもね」


〈俺が中身の無い会話を繋げておくから、尾行の件は任せたよ〉

〈私は話しながら宿探しておくね〉

〈助かる〉

〈ありがとう〉


「俺、抹茶が見つかったら抹茶ドーナツ食べたいな。白玉入りの抹茶餡蜜パフェも良いな〜」

「部活帰りの高校生じゃん」

「マジあの先生厳しくな〜い? 買い食い禁止とか有り得ないんだけど〜」

「なんで女子になっちゃったの」


ちゃんと誰かに聞かれても困らなそうな話題を選ぶ辺りが賢い。


〈足音からして二人だ〉

〈やっぱりさっきの人達の中の誰かかな?〉

〈どうだろうな。タイミング的にはそれが一番怪しいが〉


「てかマリぴ、そのネイル何処でやったの? マジカワなんだけど〜!」

「えー分かるぅ? コレ駅前に新しくできたサロンでやってもらったの〜。最強可愛くなーい?」

「いいなー、あーしも行ってみよっかな〜。でも今月お小遣いがな〜」

「クーポン貰ったけどユッキー使う? ウチは会員割引があるから〜」

「えーいいのぉ!? マジ感謝なんだけど〜!」


なんでそう絶妙にありそうな会話ができるんだ。君達ネイルサロンなんて一度も行ったこと無いでしょ。

隣の小芝居とチャットとの温度差がエグいことになっている。チャットに集中して黙り込んでいるのが、突然始まったギャル達の会話に入れない男達といった具合に上手くカモフラージュされているのは助かるが。


〈声が聞こえた。二人とも男だな〉


「そーいえば現国のサト先、結婚するらしいよぉ?」

「マジ? サト先もう還暦でしょ? 彼女いたんだ」

「先週、衝撃的な出会いがあったんだって」


隣の話が気になって集中できない。サト先に何があったんだ。


〈コウ、テイムモンスターで後ろの様子を探れないか?〉


「相手は二十歳らしいよ」

「歳の差婚か〜」


サト先は結婚詐欺に気を付けて欲しい。

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