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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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温水プール

「いやダイバーかよ」


ケイが思わずといった様子で突っ込む。

一番可愛い水着を選ぶと息巻いていたマリだったが、実際に着て来たのはウェットスーツ。しかもその上に半袖のラッシュガードと短いサーフパンツを着るという体型を極限まで隠したスタイルだ。



その一切の露出を許さない水着にコウは歓喜した。



「僕はすごく可愛いと思うよ!」


ゲームの衣装にまで口出しするなんて面倒な男だと思われそうで言えなかったのだが、アバターとは言え派手な水着で出歩かないでほしいというのが本音だったからだ。


あと単純に厚着が好きなので。スカートは最低でも膝丈より長くあってほしいし、ストッキングよりも肌が全く透けないタイツの方が好き。厚手のコートとか最高だよね。

ウェットスーツだけでなくラッシュガードとサーフパンツまで重ねた格好は正直かなり好みだ。



しかしマリは、別にコウの好みに合わせた訳ではなかった。


「いや、可愛い水着が欲しくて悩みに悩んだ結果、それを人前で着れるのかっていう問題に直面して……」


海エリアもあるので今後も水着を着る機会は出てくるだろう。この施設内なら兎も角、フィールドで着るのは御免被る──とマリは思った。

他人に見られるのが恥ずかしいというのもあったが、以前ケイが教えてくれた「配信者界隈では若い女性が出会い厨に付き纏われることはよくあるから気をつけろ」という話を思い出したからだ。


今まではアバターを中性的にしたお陰かあまり絡まれずに済んでいたマリだが、ケイの動画の再生数が伸びているので面倒を避けるために今後は性別不明で押し通す所存である。いやいっそ中身はおじさんだと匂わせたほうが安全か?

とは言え、あまり実物とかけ離れると演じるのが難しくなるので三十歳前後くらいの設定にしておこう、とマリは考えた。それでも若い女性と思われるよりは危険度が段違いの筈だ。


そうして色々と思考を巡らせた結果、可愛さとは対極の水着で落ち着いたという訳である。



「本当に中身が男ならアバターは逆に可愛い服着せると思うがな……まぁいいか」


ケイは懸念を示したが、絡まれにくくなるという点に於いては同意のようだ。



「それより問題はこれだよ」


むぅん、とマリは巨大なウォータースライダーを見上げて唸る。


「なんか思ってたのと違う……」

「温泉じゃなくて温水プールだったね」


コウの言う通り、様々なプールが広い空間に詰め込まれている。

あまりの広さにケイは入口近くの壁に設置された案内板を見て考え込んでいるし、ユキに至ってはいつの間にかトロピカルジュースを持ってはしゃいでいた。一体何処から出したのか。


「あっちに色々売ってたよ!」


ユキが指し示す方向を見ると、確かにカラフルな商品が並べられた露店があった。NPCらしき店主は屋内施設だというのに黒々と日に焼けたマッチョだ。海の家をイメージしているのだろうか。

露店には飲食物の他、水着や浮輪、更にはスワンボートまで置いてある。金属製ではなくゴムやシリコンのように弾力のある素材でてきており、どちらかと言うと公園にあるスワンボートよりもテーマパークにあるバンパーボートに近い。


「サングラスもあったよ」

「屋内プールで?」


しかも温水。曇らないのだろうか。

そんなコウの心配をよそに、ユキは芸能人のような洒落たサングラスを掛けてドヤ顔を決めている。


そこに近づいてきたケイがユキのサングラスを取り上げたかと思えば、代わりに星型でビビットイエローのサングラスをユキの顔に掛けた。


「浮かれポンチになっちゃったな……」

「その方が似合ってるぞ」


ニヤニヤと意地悪く笑ってユキから奪ったサングラスを装着するケイ。人前だとこういった悪ふざけをしないのに、身内、特に歳の近いユキに対しては小学生のような悪戯をしがちだ。

ふと、マリが居ないと思ったら、プールの真ん中で神妙な顔をしながら浮輪でぷかぷかと浮かんでいた。まだ温泉ではなかったことに納得がいっていないらしい。



「俺は設備を見てくる」

「いってらっしゃい」


ケイはゲーマーの性なのか、マッピングがてらプール内を一通り探索して回るようだ。

隣にいた筈のユキの姿が見えなくなったので何処へ行ったのかと探すと、バナナフロートに跨って楽しそうに流れるプールで流されていた。勿論浮かれポンチのサングラスは掛けたままだ。


(皆好きにしているけれど、僕は何をしようか……)


特に何も決めずに歩いていると、テイムモンスター用なのか縁がなだらかな浅いプールを見つけた。一番深い所でも水深30cmほどだったのでほぼ水溜まりである。


「キュ」


ドルオーテを水際に置いてみると躊躇いなく入水し、そのまま水底をテチテチ散歩し始めた。『水中呼吸』のお陰で溺れはしないが、泳げる訳でもないようだ。

楽しんでいるのか深い所に行きたがるのでプールの中央で遊ばせてやる。



(髪邪魔だな……)


しゃがみ込んで観察していたら髪がプールに浸かってしまっていた。ロングヘアーなんて人生初めてだから勝手が分からなかったな。

腰まである髪が体に張り付いて煩わしい。


(何か髪留めになるもの……ドルオーテの尻尾につけてるリボンならある。少し借りるか)


シンプルに一つ結びにしようとしたが、リボンで髪を結ぶのって実際にやってみると難しいな。どう足掻いても落ちてくる。


結局、三つ編みにして最後にリボンを編み込んで蝶結びにすることで固定できた。目視しながらじゃないと上手く編めなかったので顔の横から胸側へ垂らす髪型になってしまったが、これはこれでありだろう。

凝った髪型を自分でできる人は、後頭部の編み込みを一体どうやって行なっているのか不思議だ。


リボンを奪われたドルオーテは特に気にした様子も無く、コウの三つ編みにじゃれついていた。プール遊びはもう十分のようなので、ドルオーテを肩に乗せて立ち上がる。

そろそろ誰かと合流しよう。



ドッドッドッ



……? 何処からか低い音が聞こえる。

何だろう、と思った次の瞬間。



ドババババッ!!!



振り返ると、マリがいつの間に買ったのか一人乗りのスワンボートに乗って水上を爆走していた。

魔道具らしき低いエンジン音を響かせて水飛沫を撒き散らすそれは、スピードを出し過ぎているせいでスワンの首がヘドバンの如くブォンブォン揺れている。


そのままユキに突っ込んで行ったので轢くつもりなのかと思ったが、直前で大ジャンプして彼の頭上を通り越す。ジャンプ台も無いのに一体どんな動力を積んでいるんだ。


「一体何の……何やってんだあいつ」


謎の爆音を不審に思い戻って来たケイがプールを爆走するマリに気づいた。

彼女は現在、見事なドリフトでコーナリングを決めている真っ最中だ。思いもよらぬ才能が開花している。


その後、コウ達もマリからスワンボートを借りて乗ってみたが誰一人として乗りこなすことはできなかった。

ドリフト(タイヤが無いので正確には違うが、動きが完全にドリフトだった)は兎も角、何もないところでのジャンプはどうやっているのだろうか。



「ウィリーしながら一瞬だけ速度落とした後、一気にエンジン全開にするの」

「まずスワンボートでウィリーするのが大分無理あるだろ」


ケイの呆れを通り越していっそ畏怖するような口調に、できるよ、と軽く返したマリは華麗にウィリー走行して見せた。本当にどうやっているんだそれ。

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