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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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アップデート内容の確認

一件落着したところで、クランマスターのマリに頼んでホームの設定を変更してもらう。扉の件だけでなくメンバーやフレンド以外はホームに入って来れないように戻さないと。

マリがマスターなのはホームを購入した本人だからだ。家主が権限を持つのは当然だよね。


それにしても、あれだけの事をやらかしたらプレイヤーの前に出る業務からは外されるんじゃないか?

今後あのスタッフを見ることは無いだろう。そんな予感を感じながら屋敷の中へと戻る。

とんでもないハプニングだったがケイは満足そうだ。


「配信は一旦終わらせた。コメントは同情的なのが多かったな」


前回の生配信では早とちりしたスタッフへの攻撃だけでなく、コウ達にも過失があったのではないかという意見もチラホラあったらしい。いるよね、被害者に責任を求める人。

しかし今回は明らかにスタッフの暴走。流石に二度も同じ事が起きれば青年の話も只の難癖だ、と同情的なコメントで埋め尽くされたようだ。



「そういえばアップデートって確認した? 僕まだちゃんと読めてないんだよね」

「あぁ、魅了ね? 簡単に言うと【惚れ薬】の効果時間が最大5分までになったよ」

「え、それは弱体化し過ぎじゃない?」


【惚れ薬】は効果時間が25分もあったのに、それがいきなり五分の一に減ってしまった。


「そうでもないよ。今までの惚れ薬でも中堅のプレイヤーなら3分持てば良い方だったろうし、タンクとかで精神値が高ければ1分も経たずに効果が切れてたと思う」


詳しく聞いてみると、今までは魅了+1につき5秒だった効果時間が1秒に減り、その代わり精神値による魅了への抵抗力が大幅ダウンしたらしい。つまり精神値がそれなりにある相手への効果は変わっていないという事だ。


非戦闘のNPCのように精神値が低い者が長時間操られないための措置か。これはもしかしなくとも僕達のせいじゃないか?

これ以上【鑑定のモノクル】がプレイヤーに奪われないように調整が入ったのだろう。先に入手しておいて本当に良かった。



「他のアップデートは?」


出血描写の修正、痛覚設定の追加、匂いに関する仕様変更についても聞いてみる。


出血描写は血液が赤から黒に変更され、そして今までは見えなかったレーティングでも血液が見えるように。モンスターによっては弱ると逃走するが、手負いのモンスターを探すのに血の跡を追える点で差が出るという意見があったようだ。


痛覚は今まで無かったのだが、今後は部位毎に一定以上のダメージを受けると痺れて動かし難くなるらしい。本当の『痛み』ではない理由はVR法によってゲーム内で痛みを与えることが禁止されているからである。


変更点が分かりやすかった出血描写と痛覚設定に比べて、匂いに関する仕様変更は少々複雑だ。

今まで人間は無臭だったが今回のアップデートで各々『匂い』が付くという。


それにより嗅覚系のスキルによる追跡が可能となった他、NPCの好感度にも影響が出るようだ。匂いによってはモンスターを誘引する場合もあるとも書かれていたが、モンスターを誘引するアイテムはアップデート前から存在していたのでそこは元からの仕様だろう。


匂いはそれまでの行動によって変化するが、新たに追加された【香水】カテゴリーのアイテムで自由に変えられるらしい。ムスクの香りやタバコの臭いで頭が痛くなる体質なので、もし苦手な匂いになってしまっても変更する手段があるのは助かる。

また、本来はモンスターとのエンカウント率を下げるアイテムである【消臭剤】を使用すると一時的に無臭になるが、効果時間が切れると元に戻ってしまうようだ。


「行動によって変化ってどういう事だろう?」


目をしぱしぱさせたマリが自分の腕をフンフンと嗅ぎ、ハッとする。


「これは……おがくず!」

「おがくず?」


嗅がせてもらったら本当におがくずみたいな匂いがした。マリ曰く「おがくずはヒノキかスギが多いが、これはヒノキではないので恐らくスギの匂い」だそうだ。確かめようがないので真偽は不明である。


その後、お返しとばかりにコウの匂いを嗅いだマリが弾けるように笑い出す。


「まってコウめっちゃ苺ミルクの匂いする! 嗅いでみなよ!」


それを聞いたユキとケイも興味津々で寄ってくる。マリに言われるがまま自分の腕を嗅いでみると、確かに苺ミルクの甘い香りがしていた。えっ、何故……?


「ハハハ! なんでだよ!」


遠慮無く爆笑するケイにイラッと来たので彼の匂いも嗅いでみるとコーヒーの香ばしい香りがした。苺ミルクが悪い訳ではないが、何だか負けたような気持ちになって余計に苛つく。


「ユキは紅茶とオレンジの香りがするね。もしかして飲んだ物が反映されてるんじゃない?」


マリが思いついたように仮説を立てる。

そう言えばふれあいカフェで偽物対策の話し合いをしている時、ケイはコーヒー、ユキはオレンジジュース、そしてコウは苺ミルクを飲んでいた。

しかしそれを聞いたケイが胡乱な目をマリに向ける。


「ならお前一体何飲んだんだよ」


確かに。

一瞬スギの香りのお茶でも飲んだのかと思ったが、マリはふるふると首を横に振った。


「このアバターになってからログイン中に飲食をした事は一度も無いよ」


飲食物は口にすると一定時間バフを与えられる。しかしポーションを掛けた方が早いので戦闘中に使う人は殆ど居らず、強いて言えば戦闘の直前に食べておくぐらいだ。

NPCは食事を摂らないと餓死するため街中には数多くの飲食店が存在するが、プレイヤーはゲーム内で食事をした事が無い人も多い。


スギの匂いはテイムのために森林フィールドに長く居たから、そのせいだろうか。


「でも俺、紅茶は飲んだ覚えないよ」

「オレンジジュースと一緒にシフォンケーキも食ってなかったか? たしかアレ紅茶味だったと思うが」


これらの情報から推測するに、匂いが変わる条件は口にした物や居た場所が関係していそうだ。……まぁそれが分かったから何だという話ではあるが。


現実でも肉を多く食べると体臭が強くなると聞くし、薔薇のガムやジャスミンティーは摂り続けると良い匂いになるらしい。摂取したものによって体臭が変わるのは現実感を出すためかもしれないな。

マリは苦手な匂いに当たる人を減らすために口にしたものを反映させたのではないか、と推測していた。


「掲示板見てみたんだけどさ、やっぱり飲み食いした物で合ってそうだよ」


ユキが開いていたウィンドウを見せてくれる。本来他人には半透明の板にしか見えないウィンドウだが、パーティーを組んでいればメンバー同士で見せ合うこともできるのだ。


掲示板では検証好きのプレイヤー達がアップデート内容を調べているようで情報提供を呼びかけている。そこに集まった匂いと今までの行動の関係性を見ると、飲食物の匂いになった人が一番多く、森林フィールドによく行く人がユーカリやヒノキなどのウッド系の香りになったのが二番目に多かった。

珍しいものだと火山地帯のフィールドに居たら硫黄の香りになったという人もいるらしい。


「入浴施設を使うと石鹸の香りになるのか」


入浴施設では『マーキング』という特定のモンスターを誘引する状態を解除できる。これは状態異常ではないのでプレイヤーが呼んでいる俗称だ。


ステータスに表示されないため自分がマーキング状態であるか分からない上に、光魔法やポーションでも解除できないという厄介な隠しステータスである。

大抵の場合は同じモンスターを狩り続ける内に罹って同種のボスが誘引されてくる。最初の町で『森牛』の群れを殲滅して『暴れ森牛』が出てきたのも同じ理由だ。



「えっ、つまり俺ら今臭いってこと? 普通に嫌なんだけど」


今まで黙って話を聞いていたユキがふと気付いたように言った。……言い方は悪いけれど、確かにそうとも取れるな。

今までは必要性を特に感じなかったためゲーム内で入浴したことは無かったが、どこかで一度入浴してみるのも良いかも知れない。

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