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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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ホワイト家(マリ)

あーあ。


マリは心の中で嘆息する。

馬鹿と馬鹿がぶつかった結果、爆速で事態が終結してしまった。

折角ケイの動画に貢献してあげようと思ったのに、これでは盛り上がりに欠けるではないか。



先日のアーカイブは僅か三日しか公開していなかったというのに再生数の伸びが凄まじかったらしい。炎上商法に通ずるものがある。


動画を非公開にしたのは自主的にだ。運営に配慮したのと、人は隠されると余計に暴きたくなるものだから。

既に掲示板などで話は広がっているしケイのチャンネル登録者も一気に増えた。ここらが潮時だ、収拾がつかなくなる前に切り上げよう──そう思っていたマリを嘲笑うかのように、次の火種はやって来た。



(あれが例の『コーエン』ね……)


あんなの明らかに悪意がある。

コウに成りすます気か、ならばこちらも相応の対応をさせてもらおう。そう考えたマリは、たった数日で飛び込んで来た傍迷惑な新しい火種を売名に利用してやることにしたのだ。


初めて直接目にした『コーエン』は造形こそ似ていたが瞳の輝きが全く違った。有り体に言うなら安っぽい。

声はそっくりだったけれど、VR機器に変声ツールを入れればゲーム内の声も自由に変えられるので本人の声とは限らない。


マリ達の瞳は質感にかなり拘って制作している。トルマリン系の宝石の写真を加工したものをタトゥーとして虹彩に入れているのだ。

マリは宝石を集めるのが趣味で、これらもそのコレクションの一部である。

因みにマリは金属アレルギーなので装飾品にはあまり興味が無く、集めているのは裸石ルースが殆どだ。裸石は中古でも価値が下がりにくいため資産運用としての実益も兼ねている。


そんなマリなので、やって来た『コーエン』の瞳が宝石でないことは一瞬で看破できた。


(資産として保有してる宝石がそんな安っぽい訳ないでしょ)


特にカッティングが滅茶苦茶なのは致命的だった。

キュービックジルコニアやガラスならまだ良かったのだが、あれは精々プラスチックビーズ辺りだろう。若しくはアルミホイルを着色でもしたか。


いずれにしろ、マリを騙すことなど到底不可能な程度にはお粗末な出来だった。


(そもそもコウのアカウントは昨日作り直したから、騙される訳無いんだけどね)


マリは作ったばかりの新しいアバターを思い出す。

そしてその時に伝えた、ちょっとした事件も。



『ドッペルゲンガーみたいで不気味だね』


VRショップで諸々の手続きを終えた帰り、マリからログインしていない間に起きたことを聞いていたコウがそう言ったのは、自分のアバターそっくりの人物が『コーエン』というプレイヤーネームを使っているという噂を教えられたからだ。


その人物は何度もセイレンのふれあいカフェに来て、自分は経営者の身内だから話をさせるようにNPC従業員に詰め寄っていたらしい。ぼったくり上等なグレーゾーンの営業で「責任者を出せ」という言葉には慣れている従業員は、クレーマーだと判断して話を聞かずに追い返していたが。


しかしそれを目撃したプレイヤーが「支配人なのに追い出されててウケるww」と広めたことでケイの耳に入り、成りすまされていることが発覚したのだ。



そこでコウ達は一計を案じた。

もし『コーエン』が接触してきたら、気付いていない体で生放送に映してやって偽物だと糾弾してやろう、と。



作戦は単純だ。

偽物が来ている時に『偶然』本物がやって来る。それだけ。


そのためには急いでコウの新しいアバターを用意しなくてはならない。そして偽物と区別するために外見を変える必要もある。

偽物に使われたプレイヤーネームもそうだ。


重複したプレイヤーネームは取得できない。

だが先日のアップデートでファミリーネームを設定できるようになり、ファーストネームが被っていてもファミリーネームが別であれば取得できるように変更された。プレイヤーが増えたことで名前被りが問題になっていたからだろう。


コウが新たに取得した名前は『コーエン・ホワイト』。

それと同時にマリ達もファミリーネームを『ホワイト』とし、クラン名も『ホワイト家』に変更した。

ちなみに今までは適当につけた『CMYK』だった。名前の頭文字をとっただけである。



そして大事なのはホームの設定。

町に入ってもパーティやクランに所属していないと混雑防止でランダムに振り分けられてしまい、他人が所有するホームに辿り着けるかは運次第だ。

しかしホームを誰でも入れるように設定していると全てのプレイヤーが来れるようになる。これは主に商人が店舗を持つ際に行う設定で、セイレンのふれあいカフェでも同じ措置を取っている。


ここで問題なのはエストのホームには入らせたくないことだ。何をされるか分かったものではない。

仕方ないので門扉は絶対に開けず、出入りはホームの追加機能『ロック』で行うことにした。これはホーム設定で『鍵』を与えた者だけ『ロック解除』で扉をすり抜けられるようになる機能である。

意外と高くて買うか悩んだが、扉ごとに個別で設定できるのでふれあいカフェのスタッフルームにも使えると考えて購入に踏み切った。


最後の仕上げに、ふれあいカフェのスタッフに『コーエン』が再び現れたらエストにあるホームへの地図を渡すよう命じてターンエンドだ。


準備が整い、さぁ来い!と待ち構えていたのだが、間の悪いことに『コーエン』がやって来たのはコウが残業している丁度その時。

メッセージは送ったが到着にはもう少しかかりそうだったので、偽物を門前で引き留めてコウが来るのを待つか……と考えていたところ、悪・即・斬!とばかりにやって来た運営スタッフによって断罪されてしまったという訳だ。それ人違いなんですけどね。

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