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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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スタッフの暴走(別視点)

どうしてこうなってしまったのか。

青年は暗くギラついた眼差しで監視を続ける。ログとして吐き出される『奴』の行動を一つも見逃さぬように。



裕福な家庭に産まれて有名大学を卒業後、就職したのは大手ゲーム会社。今まで大きな苦労をしたことなどなかった。

トントン拍子に進む人生。自分は優秀なのだと思っていたというのに、最初に任されたのはエラーチェックという地味な割に面倒臭い作業。こんなの自分に見合った仕事ではない。


──ログを漁る。


教育係の女は僕を正しく評価しない。

何度も何度も僕の能力に見合った仕事をさせろと言い続けて、与えられたのはイベントの監視役。

急に人手が必要になったなんて、そんなもの簡単に予想できただろうに。僕が最初から関わっていればトラブルなんて起きなかっただろう。

それでも、やっとプロジェクトに関われるのだから完璧にこなしてみせようと思っていたら、やらかしたのは担当していたプレイヤー。決勝戦を棄権するなどという馬鹿のせいで段取りが崩れた。

しかも棄権したにも関わらず諦め悪く優勝者と勝手に戦う始末。本当に救いようが無い。


『奴』について調べ始めたのはその頃だ。

マナーの悪いプレイヤーなら運営として注意してやらねばなるまい。


そして気付いた不自然なアカウントID。

パーティメンバーのIDも芋蔓式に引っかかってきた時には思わず笑みが溢れた。しかもその内の一人はそこそこ有名な動画配信者だ、生放送中に論破してやれば不正も隠しようがない。

誰も気付かなかった配信者の本性を僕が暴いてやるのだ。


僕の有能さが広まれば、もっと良い条件で引き抜きがあるかもしれないな。そうなったら教育係の女もさぞ悔しがることだろう。

やはり僕は優秀だ。


だというのに、どうして。


『いい加減にして頂戴。これ以上問題を起こさないで』


教育係の声を思い出してしまい、苛立ちに任せて机を殴る。

いつまで経っても僕を評価せず碌な仕事を寄越さない。こいつは愚物だ。


──ログを漁る。


『奴』が不正をしていないなんて、そんな筈はない。絶対に有り得ない。

だってそうじゃないと僕が間違っていたことになってしまうじゃないか。



──!



見つけた。


『奴』がアカウントを買ったという、動かぬ証拠をな!




***




コーエンはエストの町を歩いていた。

慣れぬ道に少々迷いつつも地図とにらめっこして何とか辿り着いた閑静な住宅街、そこで見つけたのは高い鉄柵に囲まれた広い敷地とアンティーク調の屋敷。


(これ……どうやって入ればいいんだ?)


重厚な鉄の門扉を調べるが呼び鈴のような物は見当たらない。

困り果てて暫く門前で立ち尽くしていたコーエンだったが、幸運なことに屋敷からケイが出てくるのが見えた。


「おーい!」


慌てて声を上げるが聞こえていないのか全く気付く素振りがない。諦めずに何度も大きく手を振っていると、ようやっとこちらに顔を向けてくれた。


「良かった、気付いてくれて。アカウント作り直して来たからクランに再加入させてよ!」


門まで来たケイだが、驚くことに閉じたままの門をゴーストのようにすり抜けて出てきた。

変わらずそこにある門を凝視するコーエンに呆れた溜息を吐くケイ。


「ホームと外は遮音されてるだろ。忘れてんのか?」

「ああ……そうだったね」


来るなら先に連絡しろよ、とケイがぼやきながらもウィンドウを操作する。


「クランに招待してよ」

「今マリ呼んだから待ってろ」


クランマスターはケイじゃないのか。

年長者だからマリが仕切ってるのかな、と考えていると、同じように門をすり抜けて少年とも少女ともつかない小柄な人物が出て来る。門が閉じたままなのはホームの仕様か?


「マリ、久しぶり」

「……久しぶり?」


コーエンはにっこりと笑ってその人物に声をかけるも、返ってきたのは訝しむ声。

もしや失言だったかと心臓が跳ねたが即座に取り繕う。


「うん。ゲーム内では、ね」


ふぅん、と感情の読めない目でコーエンを眺めるマリ。何を言おうとしたのか口を開きかけたその時、虚空から不適な笑みを浮かべた青年が突如として現れた。


「コーエンさん、今度こそ言い逃れできませんよ。そのアカウントは先日のリセットよりも前からログが残っています。これこそアカウント売買の動かぬ証拠です!」

「えっ、待っ……」


言葉を発する時間すら与えぬままコーエンの姿が一瞬にして消え、中身を失った装備がパサリと地面に落ちる。


それに冷めた目を向けたケイと、退屈そうに門扉に寄りかかるマリ。



──その頃コウは、仕事の引き継ぎのために会社に残って書類作成をしていた。

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