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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第三章 ハロウィン
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不正疑惑(コウ・ケイ)

「コーエンさん」


折角放送を始めたのでこのまま四人で何かしようかと話し合っていると、いきなり現れた青年に話しかけられる。

どこか見覚えのある顔立ちに首を傾げつつそちらを向くと、青年はフッと笑って勝ち誇るように続けた。


「不正ツールの使用により貴方のアカウントを削除します!」


言うが早いか、コウの視界が一気に狭まりブラックアウトする。そして霧が晴れるように辺りが明るくなっていき、だだっ広い白い空間の中に放り出された。

キョロキョロと辺りを見回せば、すぐ側の何も無かった筈の場所にポツンと小さな神殿が現れる。


警戒すべきかとも思ったが他に行く当ても無いので神殿に入ってみると、中には調度品の類は何も無く、ただ白い柱ばかりが並んでいるだけだった。



《Parallelの世界へようこそ。まずはあなたのお名前を教えてください》


コウが途方に暮れていると、アナウンスと共にウィンドウがポップした。入力欄と「プレイヤーネームをカタカナで入力してください」の文字。──え、まさか。


慌ててメニューを開き、ステータスを確認する。いや待って、嘘でしょ?


そこに表示されていたのは、レベル1、スキルも装備も無し、そして完全に初期化されてベーススキンとなったコウのアバターだった。




ーーー




コウの姿が掻き消えて、彼の装備品がバラバラと散らばった。

それを眺めながら溜め息をひとつ。


(生放送にこんな事が起きるなんて叩かれること間違いなしだな)


ケイは今後起きるであろう炎上騒ぎに遠い目をした。今から既に鬱々とした気持ちだ。


この青年が何者なのかは察している。

他のメンバーからは位置的に死角だっただろうがケイには虚空から突然現れた瞬間が見えていたし、コウを一瞬にして消し去ったのを鑑みてもゲームスタッフ、所謂「運営」であることは間違いない。


ゲームに詳しくないコウに不正ツールを入手することが出来るとは到底思えないので、そこに関してはどう考えても誤解だと思う。しかし、後からいくら弁明したとしても、運営がこんなに自信満々で処罰しに来たのだから本当は不正だったのではないかと考える人もそれなりに居る筈だ。


「他のパーティメンバーの皆様にもアカウント売買の疑いがありますので、詳しくお話を伺わせていただきますよ」

「アカウント売買……?」


ユキが困惑したように呟くと、青年はフンとせせら笑った。


「白々しいですね。貴方達のソフトに登録されているアカウント名は別々ですが、IDが全て同じである事は調査済みです。これはつまり、同一の人物が複数のソフトを購入しているという証拠です」


得意になって鼻高々と語る青年に、コウの装備を回収していたマリが耐えかねたように冷たく言い返す。


「私がメンバー全員のソフトを購入してプレゼントしましたが、それに何か問題でも?」

「は……? 何故そんなことを?」


その問いに、あっけらかんと答えるマリ。


「家族と一緒にゲームがしたかったからですけど」

「なっ、そんなの! 自分で買えばいいでしょう!?」

「この子達まだ学生なんですよ? 社会人でお金を自由に使える私が、歳の離れた可愛い弟達にゲームを買い与えて一体何が悪いって言うんですか」


先程までは水を得た魚のように生き生きとしていた青年だが、マリの一歩も引かぬ態度に及び腰になり始めた。鼻白んだ様子でへどもどと言い返すも、その全てに隙なく回答するマリ。どう見ても彼女が優勢である。


(ん……? もしかすると炎上するのは運営の方かもしれないな)


風向きが変わって来たのを察して今後の展開を考える。

青年から不正云々は誤解だった旨を引き出せるのが一番良いが、こちらが不用意な発言をする前に一度放送を切った方が良いか。ここで止めても運営の勘違いだったと視聴者に思わせるだけの下地はできただろう。


「すみません、現在SNSで生放送中だったのですが止めた方がいいでしょうか? 何かの行き違いだとは思いますが、我々も大事にしたい訳ではありませんので……」


あくまで「こちらに非は無い」とアピールしつつも、和解するつもりはあるのだと下手に出る。企業に喧嘩売っても良いことなんて無いからな。


「……っ、不正を誤魔化そうとしても無駄です! 全て放送して、謝罪してください!!」


しん、と静まり返る。

何に対する謝罪だよ……。


咄嗟に返す言葉が見つからず、全員が黙り込んだがために何だか不思議な沈黙ができてしまった。

白けた空気の中、青年が注目を集めようとするかのように声を上げる。


「アカウントは兎も角、コーエンさんの不正ツール使用は弁明できないでしょう!?」


いや俺らに言われても知らねぇよ、そんなのコウに言えよ。


「あの、そもそも不正ツールって何ですか?」

「ふざけないでください! チートですよ! チート! やったでしょう!?」


オンラインゲームはあまりやらないマリが純粋な疑問をぶつければ青年がギッと睨んで吠えるように叫ぶ。もうコイツ、ヤケになってないか?


「チート、が何なのか……。オンラインゲームにはあまり詳しくなくて」

「ふっざけ……ッ!」


ゲーム好きでもオンラインゲームやってないと分からないよな……。最近はサブカルチャーでも普及してきた単語だが、日常的に使うものではないし。


しかしそのせいで天然の煽りみたいになってしまっている。青年は怒りが限界に達しているのか、まともに言葉も出ない有様だ。


「マリオンには後で私から説明しておきますので、具体的にどんな疑惑をかけられているのかお聞かせ願えますか?」


話が進まないので横入りさせてもらう。チートに関しては割愛だ。

青年は怒りを抑えるためか、ふぅ、と一息ついてから話し始めた。


「先日の闘技大会でコーエンさんが装備していた【鑑定のモノクル】ですが、あれは【アーティファクト】というレシピが存在しない作成不能のアイテムなんです」


仕切り直したことで自分のペースを取り戻したのか、落ち着いた様子で滔々と話す青年。先程までとは打って変わって知的な口調で話を進める。


「一部の特殊なNPCしか所有していない筈のアイテムが、何故コーエンさんの元にあったのか……お教え頂けますね?」

「NPCを殺して奪ったからですね。私も協力したので間違いありません」


再び勝ち誇った様子でそう問うた彼だが、マリの淡々とした物言いにピシリと固まる。ケイとユキも度肝を抜かれて思わず二度見した。

行動がバイオレンスなのはゲームだから仕方ないが、運営にNPC殺害を告白するにしては平然とし過ぎてるだろ。こいつ絶対心臓に毛が生えてるわ。それも剛毛。


「そんな筈ありません! アーティファクトを持つNPCの殺害は第一級犯罪です。国内全土での指名手配となりますから即座に捕まります!」

「そうならないために惚れ薬を使って自害させました。その惚れ薬も別のNPCを仲介に操って使わせましたし、足がつかないよう仲介役も始末しています」


サイコパスかよ……。

こいつの心臓は鋼でできてることが確定したし、多分毛じゃなくて針金が生えてる。なんなら剣山生えてる。


誇るでもなく、恥じるでもなく。ただ事実を報告するマリは、なまじ外見が幼いせいで余計にヤバイ奴感が漂っていた。もう産まれ持ってのナチュラルサイコパスにしか見えない。

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