ハロウィン イベントムービー
王都ハーツ。
広場には鱗の一枚一枚まで丁寧に彫られた精巧な白大理石の竜が置かれ、その周囲はベンチで休憩する人々や噴水の飛沫で遊ぶ子供達で賑わっていた。
その喧騒から少し離れて、貴族街に程近い場所に大小様々な神殿が幾つも建っている。それらに共通しているのは白を基調とした色合いで、各々信仰する神をイメージしたステンドグラスが嵌め込まれているという事だ。
その中でも大きな勢力を持つ太陽神の神殿では、内装の端々に金の装飾が施された豪奢な部屋で、サンタクロースを思わせる豊かな白髭の男性が急くように手を揉んでいた。
「して、星読みの巫女よ。祭事の日取りは如何様か?」
その問いを受けたのは、純白に金の縁取りが入ったローブを着た若い女性だ。
大きなフードを被りフェイスベールをつけて如何にも占い師といった装いの彼女は、大きな水晶玉を真剣な面持ちで見つめていたが、やがてゆっくりと顔を上げて静かに答えた。
「星の巡りは、西の流星が煌めく時を示しています」
「おお! それでは早速、神官達に通達せねばならんな」
白髭の男性が喜びも顕にいそいそと部屋を出る。残された女性は再び水晶玉を見ると、美しく整えられた眉を僅かに顰めた。
「あとは何処から始まるのかさえ判れば……」
悔しさを滲ませるような声に答える者は居らず、彼女はまた一人で巫女としての勤めを続けるのだった。
同時刻、月神の神殿では神経質そうな青年が、これまた学者然とした気難しそうな男性と顔を突き合わせて何やら話し合っていた。
月神の神殿は太陽神の神殿とは違い、豪華ではあるがどこか学術的な施設のようにも見えるシックな内装だ。重厚な机に置かれた大きなホロスコープの盤上には駒が幾つも配置されている。
「では今回の魔物の出現は、竜の鉤爪から始まるという事でしょうか」
「ああ。出現位置の法則性は見つからなかったが、地脈の反応からしても間違いないだろう」
「では現地へ人員を送って監視にあたらせます」
部屋を出る青年を見送った男はホロスコープに目を落とし、誰に聞かせるともなく呟く。
「……せめて日付だけでも特定できれば良いのだが」
そして近い内に訪れるであろう未来。
何時かの夜の、何処かの森で。地面から芽を出した植物が驚くべき速さで成長し、膨らんだ蕾が開いたかと思えば、花弁の代わりに可愛らしいキャンディを咲かせた。
くすくすくす──と忍び笑いが聞こえて、植物の根のようなものがキャンディをぷちりと摘み取り、空洞のような口の中へと放り込む。
カボチャの頭部にくり抜かれた顔。先程キャンディが消えていった口はどう見ても咀嚼できる構造ではないが、不思議とキャンディが吐き出される素振りは無い。
ふわりと浮かびあがったカボチャは、根をタコかクラゲのように動かして空中を自由自在に泳ぎ、そのまま何処かへと去っていった。




