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妻と始めるほのぼの闇堕ち錬金術師VRMMO  作者: hama
第二章 第一回闘技大会
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第一回闘技大会 終了

小型のテイムモンスターを隠し持つプレイヤーは予測していたが、透明になれるモンスターを連れているのは予想外だった。マリのモンスター図鑑にも載ってなかったと思うので、レアモンスターだろうか。


(『獣寄せ』を作っておいて良かった……)


『獣寄せ』の効果時間は作成後30分間のみだ。しかし大会の規定に「会場内では参加時点のステータスと装備品が自動的に適用される」とあったので、ダメ元でエントリー直前に錬成した獣寄せを持ち込んでみたのだが、それが功を奏した。

参加時点での効果時間がアイテムに反映されたようで、警戒していた『テイムモンスターを隠し玉にするプレイヤー』への対策として十分な効果を発揮してくれたのだ。



「あークソ、俺の負けか…………なぁ、あの甘い匂いのやつは何だったんだ?」


気がつくと、消えたはずのレインが隣に並び立っていた。


「あれは『獣寄せ』という、周辺のモンスターを引き寄せて凶暴化させる薬です」

「やべぇ薬じゃねぇか」


レインが思いっ切り引いた顔をする。

心配せずとも消費期限が短すぎるのでそこまで有用な薬ではないと説明しようとしたが、いつの間にか現れた司会者がにこやかに話しかけてきたので口を閉じた。


「お疲れ様でした。順位には反映されませんが、見事な戦いでしたね」

「ああ、無理言って悪かったな。おかげでスッキリしたぜ」


(無理を言った自覚はあったのか……)


「ではこれで本大会を終了とさせていただきます。ありがとうございました」


これ以上引き伸ばしたくなかったのか、その言葉に返事をする時間も無いほどの一瞬で転移させられる。



「おかえり〜」

「どうだった?」


待機室へ転移されると、コウが戻った事に気づいたマリ達がわやわやと寄って来た。


「勝ったよ」

「へぇ、実質一位じゃねぇか。良かったな」

「おめでとー!」

「ありがとう」


勝っても報酬は出ないのだがお祝いムードを壊すのも忍びないので気持ちは有り難く受け取っておく。

マリがぎゅっとハグしてくれたので抱きしめると、その後ろに並んだユキが凄くいい笑顔で両手を広げてスタンバイしていた。


「うわ……」

「なんでぇ!?」


兄弟仲が良いので現実では可愛い弟に対してこのくらいのスキンシップはよくやっていたため、ユキはまさかコウに引かれると思わなかったようだ。

しかし今のユキの外見は僕に若干寄せて来ているので複雑な気分である。率直に言って気持ち悪い。


ショックを受けるユキとゲラゲラ笑っているケイを置いて、コアラの如くしがみつくマリをくっつけたまま会場を後にする。

マリは重装備を着けたままだったので重量オーバーによる速度低下を食らってしまい、地味に動き辛かったが会場を出る前に降りてくれた。

てくてくと歩きながらマリがこちらを見上げて尋ねてくる。


「速度低下ってそんなに動き辛いの?」

「上半身は普通に動けるけど足の動きだけ遅くなるから、膝まである泥の中を歩いてる感じかな」

「そっかー……」

「どうかしたの?」

「速度低下を無視して強い装備を使えないかと思って。防御をもっと上げたいんだよね」


マリの質問に答えれば何か考え込んでいる様子だったので理由を問うと、どうやら今回の大会を経て自分のステータスの振り方やスキル構成を見直そうかと悩んでいたようだ。


「攻撃力が低いと戦闘が長引く上に装備重量も下がっちゃう。技術に多少は振ってないとガードの難易度が上がるし、かといって速度が低いと誰かを守ろうとしても回り込まれたりする……魔力以外に捨てれるステータスが無いんだよね」

「攻撃はアイテムでカバーできない? 速度低下する前提なら装備重量も考えなくて良いし」

「出費がエグい事になるよ……せめて『消耗品効果上昇』があれば良いんだけど、錬金術師専用のスキルだからなぁ」


どうすべきか……と二人で悩みながら歩いている内に飛空艇の発着場へ到着。丁度ユキとケイも追いついてきた。


「置いてかないでよ!」

「場所は分かってるでしょ?」

「でも先に出てるかと思ってヒヤヒヤしたよ」

「ごめんね」


軽く謝って飛空艇に乗り込む。行先はふれあいカフェだ。


「公式アーカイブは明日公開だから、今日の内にしっかり準備しておかないと」

「宣伝の効果があるといいね」

「お前ら宣伝しかしてなかったもんな……」

「ケイの動画でも宣伝よろしくね」


カフェは路地に入って少し奥まった場所にある。あまり通ることのない立地なので派手に宣伝しないとプレイヤーは来ないのだ。

セイレンの地に降り立って路地の奥へと進んでいると、ケイが何かに気付いたように足を止めて警戒の声を上げた。


「……おい、なんか変だ」

「変?」

「聞こえてくる声が多い。ゲーム内はまだ朝だろ?」

「そうだね。この時間帯はNPCも殆ど居ないはずだけど……」

「『魔力視』で確認したが、やっぱりウチの店が混んでるな」


明後日までは闘技大会の内容を配信したりネットに書き込んだりするのが禁止されているので、個人の動画がアップされるのはそれ以降となる。

今日の客足が伸びることはないだろう……と考えて明日に備えるために向かったカフェは、予想に反して大盛況となっていた。


「え、何で……」

「とりあえず裏口から入ろう」


予想外の事態に首を傾げつつ従業員用の扉から中に入ると、すぐさまスタッフが駆け寄って来る。


「オーナー、ほんの数分前から突然客足が増えて……今はご覧の通りです」

「理由は不明なのですか?」

「お客様に伺ったところ、闘技大会で入賞できるようなアイテムが売っていると聞いて来たと」


(なんでもう広まっているんだ……)


その疑問はユキが解決した。


「掲示板が炎上してる。表彰式の動画を上げた人がいて、それを見た人が掲示板に書いて……って具合に広まっちゃったみたい」

「えぇー何それ……」

「まだ動画流すのはダメだろ……」


あんまりな理由にマリとケイが呆れた声を上げる。


「あれだけ表彰者がいれば一人くらいルールを破る人も出るかぁ」

「わざとなのか参加規約を読み飛ばしてたのか、どっちだろうな」

「前者じゃない? 開始前に口頭でも説明されてたじゃん」

「さあな。話を聞かない奴だっているだろ」


理由は分かったが、とにかく来た客を捌かなくてならない。幸い殆どの客はアイテムを目当てに来ているので回転率はかなり良いようだ。


「商品は足りてる?」

「明日に向けて前々から作り溜めてた分があるから暫くは大丈夫だと思う。とりあえず今日の売れ筋アイテムぐらいは追加で作っておくよ」

「ありがとう。規約違反に対する運営の動向とか、掲示板の流れも監視しないとね……忙しいなぁ」

「俺らも何か手伝うか?」


売上と商品数の確認、素材の残量は……とスタッフにテキパキと指示を出し始めるマリにケイとユキが手伝いを申し出たが、マリは首を横に振った。


「ううん、大丈夫だよ。大盛況って言っても多すぎると混雑防止で別時空に分けられるからね。それにケイは動画編集しないといけないでしょ」

「俺は暇だよ。やる事ある?」

「ユキはもうすぐ資格試験あるとか言ってなかった? 大丈夫なの?」

「あれはスコアで出るやつだから合否判定は無いんだよ。俺はある程度点数とれればいーやって感じだから大丈夫」

「んー、じゃあ引き続き掲示板で情報収集しといてくれる?」

「おっけ〜」


想定より早い繁忙期の始まりだったが、事前の受け入れ準備がある程度出来ていたお陰で大きな問題も無くその日の業務は終了した。



好調なスタートを切ったふれあいカフェはその後、ふわふわのモンスターや美麗なスタッフにガチ恋したリピーター達によって、どんどんと売上を伸ばしていくこととなる。

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